緑および赤ピーマン中の脂質成分の同定を行なうために, 細切したピーマンは, アセトン中で粉砕した。これをエーテルで抽出し, 全脂質成分を得た。全脂質成分はケン化後, エーテル層と水層とにわけ, 不ケン化物が含まれるエーテル層は, GC分析を行なった。一方, 水層は, 常法に従って脂肪酸エチルエステルを調製し, 脂肪酸組成を調べた。さらに赤ピーマンの全脂質成分は, 薄層クロマトグラフィーによって, キサントフィル類を取り除き, セライト545-酸化マグネシウムで分画した。溶出した各フラクションはケン化後, n-ヘキサンで抽出してGC分析を行なった。各フラクションの主成分は, 再クロマトグラフィーによって単離精製し, MS, IRおよび1H-NMRを測定した。結果は次のとおりである。
1) 赤および緑ピーマンの不ケン化物から, α-トコフェロール, カンペステロールおよびβ-シトステロールが, GCによって検出された。α-トコフェロールについては, 緑ピーマンに比べ, 赤ピーマンに多くみられた。
2) 総脂肪酸のうち不飽和脂肪酸は, 緑ピーマンが80.8%, 赤ピーマンが66.2%であった。不飽和脂肪酸の主成分は, C
18: 2およびC
18: 3で, その他にC
18: 1がわずかに含まれていた。飽和脂肪酸としては, C
12: 0, C
14: 0, C
16: 0, C
17: 0およびC
18: 0がみられた。
3) 赤ピーマン不ケン化物成分として, イソホロン, 6-ヒドロキシ-4, 6-ジメチル-3-ヘプテン-2-オン, フィトールおよびゲラニルゲラニオールが単離同定された。これらの成分は, 緑ピーマンの不ケン化物中にも検出されたが, ゲラニルゲラニオールの量はわずかであった。
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