製パンのさいヘプタンを少量添加すると, パンのきめが改良され, この改良作用は薄力粉の場合により効果的であった。なお, パンのすだちの状態をしらべるのにゼロックスを用いて接写すると, きめの判定が容易になった。
小麦粉に水と少量のヘプタンを加えてドウを作り, これからグルテンをとると, グルテンは粘性の少ない弾力性にとんだものとなった。グルテンとして回収されるNの総量はほとんどかわらないが, 脂質は増加し, F/Pの値が大きくなった。グルテンを70%アルコールで処理して, グリアジンを洗出し, グルテニンをとると, 回収されるNの総量が, ヘプタン添加により増加した。また, ショートニングを含むドウにヘプタンを加え, これからグルテンをとると, グルテンは著しく脂質含量の多いグルテニン型のものとなった。
また, ヘプタンを添加したドウからとったグルテンを希酢酸に分散溶解して水酸化カルシュウムで中和し, 分別沈殿によりグルテンをとると, 粘弾性のつよいグルテン区分が増加し, 粘性の大きいグリアジン型のグルテン区分が減少する。ヘプタンの添加量の多い場合は, 粘性の大きい区分が著しく減少し, 弾力性にとんだ区分が増加した。
したがって, ヘプタンのパン生地改良作用の一因は, グルテン中のグルテニンの増加により起こるのでないかと推論した。
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