UHT殺菌乳 (120℃, 2秒加熱) とUHT滅菌乳 (140℃, 2秒, 間接加熱法, 無菌包装) の製造時および保存中における乳成分の変化を比較した。殺菌乳は4℃で2週間, 滅菌乳は4℃および20~25℃で10週間保存し, 1週間ごとに測定した。
1) 殺菌乳中の未変性ホエー窒素化合物は38.7%, 滅菌乳では35.9%で, 滅菌乳のホエーたん白変性率は若干高かったが, 保存中には両者ともほぼ同程度になり, 保存温度による影響もみられなかった。またNPNは加熱によってわずかに減少したが, 加熱温度および保存条件による差はなかった。
2) 製造直後の未変性β-ラクトグロプリンおよびα-ラクトアルブミンの残存率は, 殺菌乳ではそれぞれ42%, 65%, 滅菌乳では35%, 55%であったが, 保存1~2週間後の滅菌乳中の未変性β-ラクトグロブリン含量は殺菌乳とほぼ同程度になった。免疫たん白質は両加熱法によって完全に変性した。
3) 褐変物質の一つの指標であるハイドロキシメチルフルフラールは, 殺菌乳2.2μM/l, 滅菌乳では5.3μM/lと高かったが, 乳たん白質中の有効性リジンは, 殺菌および滅菌による減少率に差はなく, ともに約5%低下した。また長期保存による低下もみられなかった。
4) 透過性カルシウムの滅少は, 殺菌および減菌によって, それぞれ10, 13%であったが, 時間経過にともなって生乳の透過性カルシウムに近い値となった。しかし長期保存によって減少傾向を示した。
5) 殺菌乳および滅菌乳中のビタミンB
1, B
2はそれぞれ4~8%および0~3%破壊されたが, 加熱温度による破壊率の差はほとんどみられなかった。
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