第1報では, 阪神・淡路大震災の被災地域における, 生活困難の実態と, 避難, 支援の状況やその特徴を明らかにする目的で, 被災地域の公団住宅居住者を対象に調査を行った.その結果は以下の諸点に要約できる.
(1) 被災当日, 被害の大きい地域ではまず「救助」や「避難」行動をとった.そこまでの被害に至らなかった地区でも情報を求める一方で, 直後から水, 食料の確保に奔走しており, ライフラインの被害の大きさと日常的にそれらが常備されていなかった状況がうかがえる.
(2) 住宅の被害, ライフラインの不通, 余震の恐怖から主として親族宅に避難した世帯は多い.ただし通学の問題から学齢期の子どもを持つ世帯, および適当な行き先がなかったとみられる高齢世帯では避難しなかった割合が相対的に高い.また避避した場合にも避難施設である割合が高く, 地域にとどまる者が多い.
(3) 「飲料水」「食料」「生活用水」の不足, 「片づけ」「交通機関の不通」の問題, 「余震の恐怖」など非常に多くの困難があった.特に子供のいる世帯では生命維持, 生活維持に関わる困難の割合が極めて高かった.震度7地域の新長田, 布引では「周辺の建物の倒壊不安」や「避難後の自宅の防犯問題」など, さらに困難が加わる.
(4) 高層棟, 超高層棟の上層階では「エレベーター停止による不便」, 地上から離れることによる「不安やストレス」の困難が大きい.非常時のアクセスの確保や超高層階, 高層階居住者の孤立を防ぐ避難, 誘導, その他の情報の伝達システムの確保等, 計画上の配慮が必要である.
(5) 被災による生活困難の状況に対し, 9割を超える世帯が他からの支援を受けている.同時に自らも他者へ支援をした世帯が5割を超え, 相互支援が存在した.
(6) 支援を受けた相手は, 親, きょうだいを中心とした親族の存在が極めて大きく, 親族が近くに住む居住志向の存在が確認された.次いで友人・知人, 近隣と続くが, 行政, ボランティアによる支援の割合は低い.また支援した相手は近隣, 親族, 友人の割合が高い.
(7) 支援を受けた内容は, 「飲料水」「食料」「生活用水」のほか, 「入浴」「日用品」「住まい」「金銭」「水の運搬」「洗濯」「精神的支援」などである.被害の大きかった地区ほど「救助」をはじめどの内容においても支援を受けた割合は高い.
(8) 多くの事項で生活困難の割合が高かった高層階, 超高層階居住者では, 「住まい」の支援を受けた割合が高く, これらの世帯では自宅での生活維持が不能で, 生活全般を他者に依存せざるを得ない状況が存在したことがわかる.
(9) 一刻を争う「救助」や, 被災生活の維持に重要な「生活情報の提供」「生活用水の調達, 運搬」の面で近隣からの支援は大きく, 本震災で近隣コミュニティの重要性が再確認された.
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