本研究では, 我が国の食事には欠かせない料理である汁について, 0.4~0.9%の低塩分濃度のみそ汁, すまし汁に飯を組み合わせた場合の塩味の嗜好性 (好ましさ, 許容性) を, 汁に含まれる吸い口や具の影響も含めて検討した.
みそ汁に白飯, すまし汁に桜飯を組み合わせた評価においては, 「みそ汁の次に白飯」「すまし汁の次に桜飯」を食べた場合に塩分濃度の低い汁の嗜好性は低くなり, 白飯との口中調味のしづらさあるいは桜飯の塩分濃度への順応現象によるものと推察された. また, レモン果皮, 葉ねぎ, ごぼうを含む汁の評価においては, 「みそ汁の次に白飯」を食べた場合にレモン果皮を含むみそ汁の, 「すまし汁の次に桜飯」を食べた場合にレモン果皮, 葉ねぎを含むすまし汁の, 塩分濃度の低い汁の嗜好性が高かった.
すなわち, 飯と組み合わせることで低塩分濃度の汁の嗜好性が低くなること, レモン果皮や葉ねぎがその嗜好性を補うことが明らかとなった.
我々は黒米及び黒米加工品の3種のラジカル捕捉活性 (DPPH〈2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl〉ラジカル捕捉活性, ヒドロキシルラジカル捕捉活性, スーパーオキシドラジカル捕捉活性) を分析した. 後の2つは電子スピン共鳴 (ESR) スピントラップ法を用いた. 黒米加工品は80%エタノールで抽出した. さらに, 黒米及び黒米焙煎は80%エタノールと熱水でそれぞれ抽出した. その結果, 黒米焙煎の80%エタノール抽出物のラジカル捕捉活性は黒米のそれと比較して高い活性値を示した. このことから焙煎がラジカル捕捉活性に影響すると示唆した. 3 種のラジカル捕捉活性は関連を検討した. ラジカル捕捉活性法間の関連性は, スピアマンの順位相関係数により検討した. 黒米及び黒米焙煎は全てのラジカル捕捉活性間に相関が見られた. しかし, 黒米加工品のラジカル捕捉活性についてはDPPHラジカル捕捉活性とスーパーオキシドラジカル捕捉活性間にのみ相関が見られた.
地面とテラス面との間に段差がある保育所で, 子どもの靴脱ぎ行動を観察した. その際, 靴を脱ぐ操作と姿勢に着目した. 検討の結果, 靴脱ぎ行動は7つのタイプに分類された. 操作は, 踵部分に指を突っ込むなど手で靴を脱ぐ動作と, 両足の踵部分を合わせて擦りあげるなど足で靴を脱ぐ動作が観察された. 姿勢は, 座位, 四つ這い, 掴み立ち, そして立位が観察された. 月齢の増加に伴い操作は手から足へ, 姿勢は座位から四つ這いあるいは立位へと多様化した. 子どもは部分的に新しい操作あるいは姿勢の要素を取り込みながら, 靴脱ぎ行動のタイプを発展させていることが考察された.
これまでに我々は, 省エネ教育が省エネ行動に与える影響を継続的に調査し, 学生の意識が「省エネ教育」前後に大きく変化すること, CO2排出量に大きな削減効果があることを確認してきた. しかし, 「省エネ教育」は対象とした省エネ行動項目の全体のレベルの底上げにつながるものの, 教育後にも行動変容が起こらない層が一定数残り, 特に省エネ行動項目の中で実践度が低い項目に関しては, 意識が変わるだけでは行動に結びつかない項目が多く, 各人のレベルに応じた省エネ教育が必要であることが示唆された.
そこで, 本研究では, これらを総合的に鑑みた結果, 「行動変容ステージモデル」が省エネ行動変容にも適用できる可能性があると考え, 行動変容ステージモデルに応じた省エネに関する教育内容を盛り込むことでどの程度変化するのかを確認することとした.
結果, 教育前に環境問題への関心がない状態で省エネ教育を行っても省エネ行動の実践度が向上しないことを確認するとともに, 行動変容ステージモデルを活用し, ステージを的確にとらえ介入策を設計することで省エネ行動変容を促すことが示唆された.