本研究は, 地域コミュニティとしての存在価値, 活動価値を有するサロンの, その有効性を生かすため, サロン活動の持続性, 包括性を探る目的で, 宇治市のふれあい・いきいきサロンを対象に調査を行った. 結果は以下の通りである.
10年前に調査した11サロンのうち, 活動を継続してるサロンは8サロンであった. 11サロンへの追跡調査から, 活動の持続のためには以下の3点が重要であることが明らかになった. ①サロン関係者や学区福祉委員らによる継続的な参加者の勧誘, ②代表者の予備軍としてのボランティアの勧誘, ③活動場所の確保として, 集会所の整備や, 地域の集合住宅や医療・福祉施設内集会室の活用, 以上である.
続いて宇治市内のM学区をとりあげ, 学区内12サロンに対する調査 (代表者へのヒアリングおよび参加高齢者への質問紙調査) を実施した.
調査対象地区のM学区では, サロン連絡会によって12サロンが連携している. 同時にサロン関係者同志や, サロン関係者と外部の学区福祉委員や民生委員とが相互に関係をもっている. その結果, 学区内にサロンを介したコミュニティネットワークの形成が認められる. 包括性あるサロン活動として, このM学区におけるサロン活動がパイロットモデルとなり得る.
本研究では, 牛乳添加時のコーヒーの温度の違いが, ミルク入りコーヒーのおいしさに与える影響を明らかにすることを目的とした. ミルク入りコーヒーの分析項目として, 物理的特性, 温度, 香り, 時系列官能評価 (TDS法), 嗜好型・分析型官能評価を行った.
1 . TDS法では, 90℃試料で口中と飲み込み後の20秒から50秒まで苦味が有意であり, 80℃試料は口中10秒間で特徴的な味はなく, 飲み込み後に苦味, 甘味, 再び苦味が有意であり, 70℃試料は口中では苦味,飲み込み後は牛乳味が有意に気になる感覚であった.
2 . 評点法による官能評価では, 90℃試料・80℃試料は同様のプロファイルを示し, 70℃試料は他の2試料に比べ, 甘味が強く, 苦味・後味が有意に弱かった. ミルクの好み, 総合評価で70℃試料は90℃試料よりも好まれた. 重回帰分析では, 総合評価に牛乳感の強さが影響を与えることがわかった.
3 . ブラックコーヒーが90℃の時点で牛乳を添加すると約15℃, 80℃・70℃の時点で添加すると約10℃温度が低下した. 室温では, 3試料間の粘度に有意差はなかった.
4 . GC-MSでは5種の香気成分が検出され, ブラックコーヒーと比べると, 2-methylfranは80℃・70℃試料で少なく, pyridineは90℃・80℃試料で多かった.
以上, 70℃で牛乳を添加した試料は検出された香気成分が他の2試料に比べ少ない傾向にあり, 甘味が強く, 苦味・後味が弱く, 飲み込み後に牛乳味が気になる感覚と評価された.
本研究は在宅介護を行ったALS患者の遺族7名を対象に, 過ごし方の変化とそれに伴う滞在場所の変化を療養中から患者の死直後, 死後1ケ月後, 調査時までの4つの時期から捉えることで, 介護を終えた後の過ごし方と住まい方の変化を明らかにすることを目的とした. その結果, 以下のことが明らかとなった. (1) 遺族の過ごし方は, 療養中は睡眠・食事などの生理的時間と, 患者のケアを含む家庭内労働時間が併せて20時間程度占めるものの, 患者の逝去後には家庭内労働時間が減少し, 社会文化的時間が増加する傾向がみられた. (2) 住まい方に関しては, 療養後にこれまでの寝室を移動する遺族が7名中6名確認された. 移動場所は療養前の元寝室が3名, 新築や転居を含む新たな寝室が3名であり, 多くの遺族が新しい生活を確立しつつある. (3) 患者逝去後の経過時間が長い遺族に片付けに関する意識と悲嘆心理が近似する傾向がわずかにみられた. 悲嘆を癒す手がかりとしては, 家族や地縁などの人的支援と, 住み慣れた家での生活の歴史や家族との思い出等が関係していると考えられた.
「繊維」をキーワードとした衣生活の科学的な理解を深めるために, 羊毛のフェルト化を教材として提案し, 中学校家庭科の衣生活学習において以下のことを重視して実践した.
(1) 効率的な方法
ジッパー袋を使用することによって, わずか150~200mlの温洗剤液で実施できた.
(2) 製作時間の短縮
フェルトシートの製作は2時間で実践が可能であった.
(3) 廃棄されるものの有効利用
温かい洗剤液用の容器にペットボトルを使用した.
生徒が自分自身で, 羊毛の繊維から直接布 (フェルトシート) へと加工する過程を体験したことによって, 羊毛繊維だけでなく, 他の繊維に対する着目と探究心が高まる成果が表われ, 科学的な理解を深めることができた. フェルトシート作品に対する満足度も高いということがわかった.