不規則な生活習慣と4年後の体重増加の関連の検討を目的とした. 2013年と2017年の両方の人間ドック受診者のうち2013年に脳卒中, 心臓病, 慢性腎臓病を有する者を除いた20~64歳, BMI 18.5~24.9 kg/m2の9,123名を対象とした. 不規則な生活習慣は睡眠時間, 食事時間, 朝食欠食, 夜遅い食事, 夜食とした. 体重増加と不規則な生活習慣の関連は多重ロジスティック回帰分析を用いた. 従属変数を体重変化率 (≧ 4%, < 4%), 独立変数は不規則な生活習慣5項目, 共変量はModel 1は年齢, BMI, Model 2はModel 1+喫煙, 身体活動習慣, 高血圧, 糖尿病, 脂質異常症とした. 不規則な生活習慣の数と体重変化率の傾向性の検定は一元配置分散分析を行った. 共変量は多重ロジスティック回帰分析と同様とした. 体重変化≧ 4%と関連した項目は男女ともModel 1, 2で朝食欠食であった (OR[95%Cl] ; Model 1 ; 女性 : 1.58[1.22-2.04], 男性 : 1.40[1.16-1.70], Model 2 ; 女性 : 1.53[1.18-1.98], 男性 : 1.34[1.11-1.63]). 一元配置分散分析の結果, Model 1は不規則な生活習慣の数は体重変化率との間に有意な正の傾向性が観察された (女性 ; p=0.044, 男性 ; p=0.027). Model 2は, 男性のみ有意な正の傾向性が認められた (女性 ; p=0.053, 男性 ; p=0.030). 非肥満の日本人成人において朝食欠食は4年後の体重変化≧ 4%と関連が認められた. 不規則な生活習慣を多く有するほど体重変化率が大きくなる可能性が示唆された.
木製まな板およびエンボス加工されたプラスチック製まな板について, 新品および使用済みのまな板をそれぞれ3枚入手し, 模擬的な調理後の洗浄, 次亜塩素酸消毒処理, 自然乾燥の各工程における一般生菌数および大腸菌群数を測定した. また, まな板の表面粗さの定量的な検討を行い, 粗さと生菌数等との関係を検討した. 模擬的な調理を行った後の, 洗浄, 消毒, 乾燥工程後の一般生菌数及び大腸菌群数は木製新品まな板, 木製使用済みまな板, プラスチック製使用済みまな板間で有意な差はなかった. 一方, 未使用および使用済みまな板双方で表面粗さは, まな板によって差があるものの, 全体としては木製まな板の方がプラスチック製まな板と比べて小さかった. 数年間使用したことにより平滑性が低下した木製まな板でも, 粗さはエンボス加工されたプラスチック製まな板と同等かそれ以下であった. まな板の表面粗さと微生物の残存性との関係を検討した結果, 凹凸の平均粗さ (Pa) が乾燥時の一般生菌数と大腸菌数で正の相関を, 凹凸差を示す最大高さ (Pz) が洗浄後と消毒後の一般生菌数と大腸菌数とに対して正の相関を示した. 一方, 最大深さ (Pv) はこれらと相関を示さなかった. これらの事から木製まな板においては, Pa及びPzがエンボス加工されたプラスチック製まな板と同等かそれ以下であり, 「大量調理施設衛生管理マニュアル」が定める洗浄, 消毒, 乾燥工程を経れば, 木製まな板とエンボス加工された使用済みプラスチック製まな板との間で, 洗浄性や消毒性, 微生物の生残性にも有意な差は無く, 両者を同様に使用でき, 衛生性の差も大きくないと考えられた.
染色排水中の染料の脱色システムへの応用を目的として, 大豆の根の抽出液中のペルオキシダーゼ (SPO) を簡易的なアミン処理PET布帛への固定化を試みた.
PET布帛のアミン処理条件について検討した結果, エチレンジアミン (EDA) 50 wt%濃度で処理した時がPET布帛の減量が少なく, アミノ基を導入出来ることが明らかとなった.
EDA処理PET布帛 (EDA-PET) へのSPO固定化条件の最適化を行った. その結果, 固定化pHをpH4, 緩衝液をCarmody緩衝液, 固定化温度を20℃と決定した.
最適化条件で調製したSPO固定化PET布帛を用いてオレンジⅠ水溶液の脱色反応の条件について検討したところ, p-クマリン酸濃度5.0×10-4 M, 過酸化水素濃度8.3×10-4 M, 反応温度20℃となった.
SPO固定化PET布帛によるオレンジⅠ水溶液の繰り返し脱色反応性について評価した. 退色反応4回目では反応速度が1.12×10-3 min-4となり, 染色排水処理に利用可能な速度で脱色反応が進行していた.
本研究は育児期女性のキャリア選択の希望がQOL (Quality of Life) にどのように関連するかについて, 就労形態と自尊感情を含めて検討することを目的とした. 研究対象者は3歳~6歳児を持つ育児期女性245名で, キャリア選択の希望実現, 自尊感情, QOLについての質問紙調査を行った. キャリア選択の希望実現については, 妊娠・出産時 (過去) と子育てがひと段落する頃 (将来) のことについて尋ねた.
その結果, 自尊感情が低いフルタイムの女性, および自尊感情が高い専業主婦の女性の場合, 将来, キャリア選択の希望が叶いそうだと思う女性の方が, 叶いそうにないと思う女性よりも『日常生活への満足感』が高かった. また, 自尊感情が高い女性の方が低い女性よりも『家庭への情緒的満足感』が高く, フルタイムの女性の方が専業主婦の女性よりも『家庭への情緒的満足感』が高かった. さらに, パートタイムの女性と専業主婦の女性の方が, フルタイムの女性よりも『園における対人関係の満足感』が高かった.
本研究では, 育児期女性のキャリア選択の希望がQOLをどのように規定するかは就労形態によって異なり, フルタイムの女性と専業主婦の女性にとっては, 過去のキャリア選択の希望が実現したかどうかよりも, 将来のキャリア選択の希望が叶いそうだと期待することが, 日常生活への満足感を高める重要な要因である可能性が示唆される.
江藤春代は, 1924年に編物記号である「合理的符号」を考案した編物講師である. 明治期~昭和期に渡る彼女の人生は, 明治維新後の秩禄処分, 日露戦争, 第一次世界大戦, 関東大震災, 日中戦争, 第二次世界大戦と幾度となく政策の変更と戦争や災害に見舞われた. 家族, 特に男手を失う環境が常にあった. 彼女は, 編物で自立 (精神的な自立も含む) すること, 家族の為に編むことに焦点を合わせて正しい編物技術の普及活動を多種多様に行った. 災害や戦争後の復興時における経験を活かした江藤春代の編物普及活動に着目して変遷にまとめた. 江藤春代の編物普及活動を辿ることによって見えてきたことは, 日本女性が生業としての副業を願い, 家庭の平和を願い, 生きる為に編物技術を取得し内職を得ようとしていたことがわかる. 正しい編物技術を身に着ければ, 災害戦争の影響下にある毛糸, 綿糸等様々な糸を使いこなすことが可能になり, 生計を助ける手立てになったのである. 編物は, 欧米では, 教養としての技術であったが, 日本にとっては生きる為の技術であったのである.