日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
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ISSN-L : 0913-5227
72 巻, 1 号
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報文
  • 鈴木 美穂
    2021 年72 巻1 号 p. 1-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

     妊娠初期の妊婦を対象に, 妊娠前の体格区分 (BMI: Body mass index) で食生活状況と栄養素等摂取状況を比較し, さらに妊娠中の体重増加量との関連を検討した. 三重県S市において, 妊婦健診を受診した妊婦108人を対象に自記式質問紙調査と秤量記録法による食事調査を実施した. その後, 医師により基礎疾患および合併症を有すると指摘があり転院した者 (13人), 里帰り出産にて転院した者 (12人), また, 子宮内死産 (1人), 流産 (1人) を除外し, 最終的に81人を分析対象者とした. 妊娠中の体重増加量は (最終妊婦健診時の体重-妊娠前の体重) とし, 最終妊婦健診時の体重は診療録より把握した. その結果, エネルギー摂取量は妊娠前のBMI区分で有意差はみられなかった. また, いずれの群においても推定エネルギー必要量 (EER: estimated energy requirement) を下回っており, 妊娠初期の付加量に対応できていなかった. 妊娠中の体重増加量は, ふつう (BMI 18.5以上25未満) の妊婦で推奨範囲未満が多い傾向がみられた. 推奨範囲未満の妊婦のエネルギー, たんぱく質, 脂質, 鉄, 亜鉛, 銅は他区分に比べて有意に少なく, 食品摂取状況は豆類, 肉類が有意に少なかった. 妊婦の栄養状態の維持と胎児の成長には, 妊娠初期からの適切な食事量の摂取, 妊娠中の体重管理に関する支援の機会を増やす取り組みが必要であることが示唆された.

資料
  • 岡本 和花, 白神 敬介
    2021 年72 巻1 号 p. 13-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

     本研究は, 保育者の自然災害発災に対して抱く不安の様相を視覚的に表すことを目指した. 保育者829名にアンケート調査を実施し, 災害発生を想定した場合に保育者として不安に思うことを尋ねた. 共起ネットワーク分析の結果, 5つのサブグラフからなる「災害時の安全な避難誘導」についてのネットワークが形成された. ネットワークを構成する各語の出現回数が多いことから, 保育者は「災害時の安全な避難誘導」に大きな不安を抱いていることが示唆された. また, 「職員」と「連携」の共起が示され, 保育者は災害時の連携先として主に職員を想定している一方で, 連携先として地域はほとんど見られなかった. 施設における防災の主な担い手は保育者自身であると認識していることから, 保育者の災害時における心理的負担は大きいことが示唆された.

  • 川端 博子, 張 瀛之, 萩生田 伸子
    2021 年72 巻1 号 p. 25-35
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

     本研究では, インターネットショッピングサイトの情報をもとに, 乳がん専用ブラジャーの販売と利用の実態について明らかにすることを目的とする. インターネットショッピングサイトに掲載される製品をリラックスタイプとフルカップタイプの2形状に分類し, それぞれ27製品, 25製品の特徴を分析した. 各タイプ2製品を取り上げ, 購入者のレビューをもとに満足と不満について分析した. 主な結果は以下のとおりである.

    1) リラックスタイプには, 乳がん術後の身体にやさしい作りが工夫され, 術後早い段階から多くの人に着用されている. 色数のバリエーションも多く, 低価格のものから販売されていた. レビューには「肌触りの良さ」「やさしい着け心地」「綿素材」「前開き」に満足を得ている. 一方で, 術後の身体状況の中で「サイズ」「肌触り」に不満を抱く意見が挙げられた.

    2) フルカップタイプは, 一般のブラジャーに近い形状を保ちながら術後の患者向けに工夫がされている. 色の種類が少なく, 平均的バストサイズから外れる人には製品が少ない課題が捉えられた. レビューには「ホールド感」「価格」「肌触り」「色・柄」に満足を得ているのに対し, 「サイズ」に不満が挙げられた.

    3) 通信販売は, 製品を手に取ることなく, 試着せず, 提示される情報を参考にして購入するが, 商品ページに示されない内容もあった. サイズが重要な評価基準となるブラジャーにおいては, とりわけサイズへの不安・不満が多いという問題が明らかとなった.

  • 表 真美
    2021 年72 巻1 号 p. 36-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/13
    ジャーナル フリー

     フィンランドにおけるカリキュラム改訂後の家庭科の授業実践を明らかにするために, ヴァンター市, ヘルシンキ市の総合学校2校を訪れ, 授業見学, および家庭科教師へのインタビュー調査を行った. 明らかになった結果は, 以下の3点にまとめることができる.

    1) ヴァンター市の総合学校では, 4年生から6年生の3学年において, 家庭科が選択科目として設けられ, 週2時間, 半年間の授業が実践されていた. 家庭科教師が工夫して授業計画を作成していた.

    2) ヴァンター市の総合学校では, 4年生対象の教科横断的な事象ベースのテーマ学習である「Life Skill」に, 家庭科が参加していた.

    3) ヘルシンキ市の総合学校では, 7年生において実践される必修家庭科の授業において, 少人数グループでの調理実習が行われていた. また, ヴァンター市の7年生向け必修家庭科の年間計画によると, 調理実習の頻度が高かった. 必修家庭科では, 改定後も学校現場では, 調理技能が重視されていることが明らかになった.

シリーズ 研究の動向 53
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