もち性大麦を試料とし, 米と大麦の混炊, そして炊飯過程の60℃で15分間保持する炊飯方法が, 飯の糖量や冷蔵前後の物性に与える影響を調べた. 炊飯液のpHは浸漬直後から大麦の混合率が高いほど低下した. 飯の全糖, 還元糖, マルトース, グルコースは, 混炊, かつ60℃保持の炊飯により糖量が著しく増大した. 混炊により, デンプン分解酵素の至適pHに炊飯液のpHが近づき, 酵素の至適温度である60℃を保持することにより, 大麦のβ-アミラーゼが大麦ならびに米に作用してマルトースを生成し, 米のα-グルコシダーゼがこれらをさらに分解したことが, 糖の増加に関与したと考えられた. 物性測定の結果, 大麦の飯粒に対しては混炊ならびに冷蔵による老化の影響はわずかであった. 米粒の方は, 常法の温度履歴で調製した飯は混炊することにより米のみの飯よりも老化が抑制されたが, 60℃保持炊飯では米粒の老化程度が常法炊飯よりも大きく, 混炊の効果は見られなかった.
目的 学校給食を通じた教育活動の研究レビューを行い, 今後の研究課題を明らかにする.
方法 2018年10月, 論文検索サイトCiNiiとJ-STAGEにて「給食」と9つのキーワードのAND検索を実施し, 2005年以降に出版された学術論文計259本が検出された. そのうち教育対象者が小学生, 中学生, 高校生 (特別支援学校生, 定時制高校生を含む) のいずれかである文献166本を対象とした.
結果 対象文献を教育実践関連研究37本 (うち教育実践研究22本), 調査研究101本, 論考28本に分類した. 教育実践研究は全体の13%ほどで少なかった. 教育実践研究においては, 給食への興味・関心の高まりや給食時間中の楽しさ, 豊かな人間性に関する教育効果が検討されていた.
結論 給食を通じた教育活動の今後を議論するためにも, 給食が関わる教育実践研究や, 給食時間及び給食が関わる教育活動において児童生徒が何を学び得ているのかを詳しく調べる調査研究の蓄積が期待される.
本稿では, 新学習指導要領家庭分野の目標である「生活を工夫し創造する資質・能力の育成」に「考え, 工夫する」ことがどのように関与しているのかを確認し, 以下のことを明らかにした.
1 . 現行学習指導要領において家庭分野で育成を目指す「課題をもって生活をよりよくしようとする能力と態度」に工夫する営みは符合する. つまり, 工夫する営みは課題をもって生活をよりよくしようとする能力と態度に匹敵する資質・能力として捉えることができる.
2 . 「考え, 工夫する」活動は知識・技能を, 既存の知識や生活経験に結びつけたり関連づけたりできること, 課題解決のために場面や状況に適用したり目的や価値に結びつけたりすることで, 生活を工夫し創造する資質・能力の育成に関与する学習活動となる.
3 . 新学習指導要領における「考え, 工夫する」資質・能力は生活の様々な営みを包括的に捉えた資質・能力として捉えることができる. このような生活の営みを抽象化した捉え方によって, 「考え, 工夫する」資質・能力は汎用性の高い課題解決力に昇華され, 「よりよい生活を営むために工夫すること」という家庭分野の考え方に呼応した資質・能力となる.
本研究では, 家庭内食品ロス削減行動の促進に資するために, 環境配慮的行動と規定因との要因連関モデルに基づいて, 高校生の家庭内食品ロス削減行動モデルを構築することを目的として, 関東地方の高校生を対象とした質問紙調査を実施した. 構造方程式モデリングによる共分散構造分析の結果, 高校生の家庭内食品ロス削減に対する目標意図の規定因はリスク認知と対処有効性認知であり, 行動意図の規定因は便益・費用評価と社会規範評価, 実行可能性評価であること, および, 家庭内食品ロスの削減行動に至る意思決定は2段階構造であることが明らかとなった. さらに, 高校生の行動意図に対する目標意図の影響度は, 中程度で目標意図と行動意図の乖離がある可能性が示唆された.
2020年から完全実施となる学習指導要領において, 小学校家庭科では「音と生活との関わり」の内容が追加された. 「音と生活との関わり」の学習教材として, 「屋外に漏れる騒音のモデル教材」, 「床を伝わる騒音のモデル教材」を開発した. 騒音測定法として教育で普及しているタブレットを用い, 音量の定量測定を行なった. 開発した2つのモデル教材を用いて小学校第5学年97名の児童を対象とした授業実践を行ない, 事前・事後調査から理解度, 騒音対策意識の変化を調べた. これらの結果から, 開発したICTモデル実験教材は新学習指導要領での「音と生活との関わり」において, GIGAスクール構想に対応した快適な住まい方の解決法を見いだすための有効な教材となり得ると考えられる.