日本家政学会誌
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57 巻, 1 号
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報文
  • ―ワーク時間階級別にみた夫妻相互の生活時間―
    貴志 倫子, 上原 智子, 平田 道憲
    2006 年 57 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    同一世帯内の夫妻について, それぞれのワーク時間が自身と配偶者の生活時間配分に与える影響について考察した. 主な結果は次のとおりである.
    (1) PW時間階級の分布より, 共働きの妻は, 夫に比べ, 9時間を超えて働く割合が少なく, 逆に, 夫はUWに割く時間が少なく, 120分以上UWを行うのは, 妻の就業形態によらず約1割である.
    (2) 共働きの妻自身のPW時間階級が増すにつれ, 生理的時間を差し引いた時間を二分するように, 妻のUW時間と自由時間は同じような減少傾向を示していた.
    (3) 妻常勤世帯と妻パート世帯において, 夫のUW時間は, 妻のUW時間が長くなるにつれ増加していた. しかし, 妻の就業によるUWの減少分を夫が補完しているとはいえない状況であるだけでなく, 週全体のデータでは, 夫のPWは, 妻のPW時間が長くなるにつれ, むしろ増加する傾向にあった.
    (4) 妻無業世帯における夫のUW時間は, 妻のUW時間が長くなるにつれ増加する傾向はみられなかったが, 共働き世帯の夫に比べ, UW時間が短いわけではない.
    (5) 配偶者のワーク時間別の生活時間で, 妻無業世帯の妻のUW時間と夫のPW時間は相互に関連しており, 妻常勤世帯や妻パート世帯に比べ, 夫妻のワーク時間が相互の生活時間に影響を与えていた.
    本研究の結果は, 原データの目的外使用によってはじめて明らかにすることができた部分が多い. 引き続き, 夫妻間のより詳細な属性を考慮していくと同時に, 他の世帯員にも分析枠組みを広げ, 世帯のワーク時間構造を明らかにしたいと考える.
  • 川野 亜紀, 細田 千晴, 高橋 智子, 大越 ひろ
    2006 年 57 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, きざみ食を安全に食べるための基礎的研究として, とろろの有効性を検討した.
    (1) 山芋粉末と蒸留水で調製したゾル (とろろ) は, 粉末濃度が増すほど硬さ, 付着エネルギー, 貯蔵弾性率G 'および降伏応力Syは高い値を示し, 凝集性および臨界歪み点は低い値を示した.
    (2) ゲル-ゾル混合試料は, 硬さはヨーグルト程度のゾルとマッシュポテト程度のゾルを用いた試料のときに低値を示した. 付着エネルギーおよび凝集性では, 硬いゾルを用いた混合試料ほど高値を示す傾向が認められた. いずれのゾルを混合した場合にも, ゲルのみよりも硬さおよび付着エネルギーは低値を示し, 凝集性は高値を示し, きざみ食へのあんの有効性が示された.
    (3) ゾル5種において, 濃度の高い試料ほど, 官能評価においてもかたく, べたつき感および残留感が多いと評価された. 中濃度の, マヨネーズ程度の試料がまとまり感があり飲み込み易いと評価された.
    (4) ゲル-ゾル混合試料の官能評価結果より, 高濃度ゾルを用いた混合試料ほど, べたつき, まとまり感があると評価された. 中濃度ゾル, すなわちマヨネーズ, 大和芋とろろ程度のゾルを用いた混合試料が飲み込み易いと評価され, ヨーグルトおよびマヨネーズ程度のゾルを用いた混合試料が残留感が少ないと評価された.
    (5) ゲル試料, ゲル-ゾル混合2試料の計3試料での官能評価結果より, ゲルをゾルで覆うことにより, ゲル単独のときよりも有意にやわらかく, 残留感が少なくなることが示された. 本研究に用いたゲルはマヨネーズ程度の硬さや粘度をもつゾルでまとめると, まとまりよく, また飲み込み易くする働きがあることが明らかとなった.
  • ―味噌の嗜好調査から―
    真部 真里子
    2006 年 57 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    We examined the correlation between the odour desirability and the overall desirability by a sensory evaluation of four kinds of soybean paste (miso), differing in the food material and/or fermentation period. Compared with the three other kinds of miso, soy miso was particularly disliked for both its odour and overall attributes. The results of the sensory evaluation also suggested that familiarity with the food contributed to its overall desirability. Most subjects seemed to be unfamiliar with soy miso and barley miso, although barley miso was acceptable as well as the two kinds of rice miso. The aromas of these four kinds of miso were then investigated by headspace solid-phase microextraction (HS-SPME) and gas chromatographic-olfactometric (GC-O) analysis. The results showed that soy miso had a characteristic odour which was undesirable and resulted in a low evaluation. The results of this survey of miso for food preference suggest that an unpleasant odour induced an overall dislike for it.
  • ―四つ間型と中廊下式の住居―
    佐々野 好継
    2006 年 57 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    This paper aims to explain the types of housing in Fukue, Goto City in Nagasaki Prefecture, and to offer a theory on the organization of living space in these houses. In the field survey, 158 residences in seven farming villages were covered by the analysis. A field survey on the residents' lives was also conducted. A traditional viewpoint with two right-angled axes was introduced for the analysis of housing, and the spatial axes of each “kuchi” and “oku” in four areas were extracted and verified. The result shows that “four-room type” and “middle corridor type” are popular in Fukue; the housing type evolved into the middle corridor type in and after 1975. Besides, the space in housing are based on the structural principle with spatial axes of “kuchi” and “oku” which exist in the two right-angled axes of “front and back” and “top and bottom.”
  • ―首都圏の注文戸建住宅における―
    川村 道乃, 今井 範子, 伊東 理恵
    2006 年 57 巻 1 号 p. 39-52
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, 首都圏の都市住宅における畳空間の現況を平面動向から明らかにし, 今後の住宅における畳空間の計画に資する知見を得ることを目的としている. 畳空間の機能と平面における位置関係を検証し, 居住者が住宅計画時に畳空間に求めている機能, 現在の畳空間の使用状況や満足度などを把握することにより, 今後の都市住宅における畳空間の動向について考察している.
    近年開発分譲された首都圏の住宅地の注文戸建住宅を調査対象として, その居住者に質問紙調査, および聴き取りによる事例調査を行った. 得られた知見は以下のとおりである.
    (1) まず, 平面の中での畳室数について, 1室57.0%, 2室27.6%, 3室以上8.0%で, 畳室1室が過半数を占め最も多い. また畳室のない住宅が1割程度存在し, 首都圏の都市住宅においては畳室のない住宅が一定の割合で存在することが確認できる. このように, 都市性の高い首都圏において, 畳室のない住宅が存在しながら, また一方では畳室が3室以上という畳室数の多い住宅が畳室のない住宅と同割合で存在している. 世帯主年齢60代以上, 世代家族で畳室数は多く, また延べ床面積が大きいほど多くなる傾向がある.
    (2) 畳室をもたない世帯は, 1) 「畳はもともと使わない」という積極的に畳空間を不要とする場合と, 2) 「畳室をとりたかったが, 住宅規模との関係や費用面から断念した」という場合に二分される. 1) の積極的に畳空間を不要とする世帯が, 世帯主年齢が若い世帯に多いことから, 将来, 畳室のない住宅が増加することは否めない.
    (3) つぎに, 平面の中での畳室の位置関係と室機能についてみる. 平面における畳室の位置は, 畳室1室の場合, 「玄関近く」と「L隣接」の2つの平面型に代表される. 「玄関近く」の場合, 客間または予備室として使われる. 「L隣接」では, 茶の間や居間として使われる場合と, 客間や予備室として使われる場合に二分される.
    畳室2室の場合, まず, 平面における位置は, 「独立+隣接」「2室とも他室隣接」「2室とも独立」の3つの型に分かれ, このうち「独立型+隣接型」が最も多く4.5割を占める. さらに平面における畳室の位置と室機能を合わせてみると多様であるが, 2室の室機能の組み合わせとして, 「Lに隣接させた居間や茶の間」と「独立した主寝室」が多い.
    畳室を3室以上持つ世帯は, 主寝室や客間を含む割合が高い.
    (4) 平面の中に畳の続き間を持つのは27世帯 (8%) である. 畳室が2室の場合はそれが続き間であるのは1割強にすぎないが, 畳室が3室以上の場合はその6割強が続き間を含み, 規模に余裕がある場合には続き間が確保されることが多くなっている.
    (5) 畳コーナーを設けた世帯は23世帯であり, 全体の7%を占める. Lや主寝室の一角に設けられ, くつろぎ空間としての存在が確認できる. またインテリアデザインの大きな要素ともなっている. 今後も畳コーナーの要求は一定の割合で存在すると考えられる.
    (6) 約3割の世帯では, Lなど洋室の居間と畳の居間とくつろぎ空間を2つ設けている. 畳空間は「第2の居間」として機能している. このような, Lに加えて, やすらぎ, くつろいだ空間としての畳空間を, もう一つの居間として設けた平面は, 畳空間に一層やすらぎとくつろぎを求めたものとして, 現代都市住宅の平面における畳空間のあり方の一つとして見出され, 今後の住宅平面計画において, ひとつの形として位置づくものと考える.
  • 小西 史子
    2006 年 57 巻 1 号 p. 53-62
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/10/12
    ジャーナル フリー
    It was investigated whether or not the general self-worth can be improved by intensifying of child-child communication and mutual understanding among children in a particular home economics class in elementary school. Home economics class, where the students were to have a discussion time over subjects such as menu planning, was given for the 6th grade students. All the students had sufficient opportunity to communicate with each other in their efforts to find a solution to a respective problem. Students also had chances to enjoy the meal with all family members, where they were appreciated and recognized from their parents. Thirty students of the class were studied with respect to the following items: communication with father, communication with mother, communication with friends, general self-worth, and frequency of eating meal with all family members. The results were as follows; 1) The scores indicating the communication with father, communication with mother, communication with friends and their general self-worth in March were respectively increased from the scores in previous May. 2) The frequency of eating meal with all family members was significantly increased in November from the scores in May.
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