日本家政学会誌
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40 巻, 12 号
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  • 斎藤 洋子, 佐藤 咲子, 大岩 泰子
    1989 年 40 巻 12 号 p. 1039-1044
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    野菜食物繊維は調理により質的にも変化することが予想され, その変化が, カルシウム, マグネシウムの利用にいかに影響するかを検討した.
    1) 生および妙めたにんじんをホモジナイズ後, アセトンおよびエーテルで脱水, 脱脂したものを食物繊維とした.この生および妙めたにんじん食物繊維は酵素一重量法で測定した繊維を乾物中それぞれ62, 55%含んでいた.
    2) 生および妙めにんじん食物繊維含有飼料およびセルロース添加標準飼料で5週齢ラットを2遍間飼育し, 終末3日間の糞尿を採取した.飼料および糞尿のカルシウム, マグネシウムは原子吸光法により定量した.
    3) 生食物繊維では妙め食物繊維群およびセルロース添加標準群より糞重量, カルシウムおよびマグネシウム総排泄量が有意に増加し, そのためカルシウム, マグネシウムの吸収率および出納は他の2群より有意に低下した.
    以上, にんじん食物繊維は妙めることにより何らかの質的変化がおこり, それがミネラルの利用に対し, 生の場合と異なる影響を及ぼすことが示唆された.
  • 井川 佳子
    1989 年 40 巻 12 号 p. 1045-1050
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    澱粉粒の崩壊程度を知るため, 簡便で定量的な測定方法を検討した.検討した方法を用いて, ゲルの破断特性や加熱速度と崩壊度の関係を考察した.
    (1) 検討の結果, 測定は粉末試料を一定量の水に分散させ, 分散直後と30℃で100分放置後の透過率から濁り度比を求め, 80~95℃で調製した標準試料の濁り度比を標準として, 未知試料の崩壊度を求める方法とした.なお崩壊度は, 標準試料の調製温度と澱粉粒の状態に基づいて定めた.
    (2) 澱粉ゲルの破断特性は崩壊度と関連があり, 7%ゲルでは崩壊度95, 10%ゲルでは89程度で強いゲルを形成することが示された.
    (3) 澱粉糊を加熱する場合, 加熱速度の速いほうが時間あたりに生成する微小粒子の多いことが認められた.
  • 河村 フジ子, 松本 睦子, 金 和子, 小林 彰夫
    1989 年 40 巻 12 号 p. 1051-1056
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    辛味大根の味覚特性として, 辛味成分と辛味以外で味覚に関与する成分を他の大根と比覚し, 官能検査を行った結果を要約すると次のようになる.
    (1) 辛味大根中の辛味成分である (E) -4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネートは, 73.7mg%で, 他品種の頭部の3.4~5.2倍, 尾部の2.0~2.6倍である.
    (2) 辛味大根は, 他品種の各部より, 水分, 還元糖量が少なく, カルシウム, マグネシウム量が多い.
    (3) 他品種のおろし大根の味を比較した場合, 尾部は頭部より, 辛味, 苦味が強く, うま味, 甘味が弱い。
    (4) おろし辛味大根の味は, 青首大根の尾部より, 辛味, 苦味が強く, うま味, 甘味が弱い.
    (5) おろし辛味大根を60分放置すると, 辛味は顕著に弱くなる.
    (6) おろし辛味大根に食塩, しょうゆ, 食塩+食酢, 天つゆ, 三杯酢を加えると辛味が弱くなる.
  • -骨の有無が食味特性に及ぼす影響-
    韓 順子, 柳沢 幸江, 村田 安代, 寺元 芳子
    1989 年 40 巻 12 号 p. 1057-1064
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    鶏肉の食味特性を生かした加熱方法を, 調理科学的見地より検索することを目的とし, 蒸し加熱によって骨なし肉, 骨つき肉の比較検討を行った結果, 次のような知見を得た.
    1) 同じ条件で加熱した場合, 骨なしにくらべ骨つきのほうが低温で緩慢に加熱され, 試料の内部温度および加熱速度に差異がみられた.
    2) かたさについては, 同じ条件で加熱した場合, 骨つきのほうが柔らかかった.骨ありでも最終内部温度や温度上昇速度を骨つきと同様にするとその差が認められなくなった.
    3) 遠沈残渣量は骨つきが有意に少なく, 多汁性に富むことが示唆された.
    4) うま味成分は, 骨なし, 骨つきに顕著な差はみられなかった.
    5) 官能検査の結果, 骨つきのほうが有意に柔らかく, 多汁性に富み, 好まれた.これは理化学測定とよく対応した.
    6) 組織の観察では, 20分加熱において骨なしの筋細胞の密度が高く, かたさと正の相関が認められた.
    以上, 骨つきのほうが有意に好ましいとされ, 本実験で用いた鶏胸肉の大きさでは, 20分加熱で内部温度が約80℃になるまで緩慢に加熱することが望ましいという結果が得られた.
  • 調理の行動解析
    長野 宏子, 馬路 泰蔵
    1989 年 40 巻 12 号 p. 1065-1072
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    大学生男女を対象として食品の購入から調理にいたる食事作りの行動を観察し, 調理時の行動について解析した.
    1) 調理行動の中で女子学生が男子学生より多かったのは, 後片づけ, 切る, しぼる, 味つけおよび確認であった.反対に男子学生が女子学生より多かったのは, 揚げるおよび情報収集であった.
    2) 複数の料理を同時に調理する程度を表す調理操作の料理間移行は, 女子学生のほうが男子学生より多かった.このことは, 女子学生は複数の料理を同時に調理することが多いことを示し, かつ各料理の調理操作をより構造化された手順で行っていることを示唆している.
    また, 後片づけを含んだ共通操作は女子学生が多かった.複数の料理を同時に調理することおよび後片づけは, 食事作り全体を見通して行動できるものであり, 女子学生はより明確化された手順で食事作りを行っていると思われる.
    これらの結果は, 食事作りの能力の要素に調理手順の構造化, 明確化というストラテジーの側面があることを示すとともに, 調理操作の料理間移行と共通操作の回数がストラテジーの様相を表す指標となることを表している.
    3) 男子学生は女子学生より, 切る操作の種類が少なかった.また, 切った後の操作の少ない食品を多く使用し, 切る操作の出現時期が遅かった.この結果は, 切る操作の現れ方 (種類, 出現時期) が食品の選択を含めた食事作りに関する能力を表す指標になることを示している.
    4) 食事作りにおける行動・使用食品などの相互関連を主成分分析によって検討した結果, 調理操作の料理間移行数, 切る操作数, 切り方の種類, 調味料の使い方が調理能力を表す主要な指標となることが示された.
  • 浜田 明美, 林 淳一
    1989 年 40 巻 12 号 p. 1073-1081
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    来聘と参向という幕府の公式行事の饗応に用いられた膳組について, 膳組の格式と客の身分・役職との関係を中心に検討し, 格式を重視した江戸幕府の饗応の形態を構成していく過程と膳組の格式を区別している要素を明らかにすることができた.
    1) 江戸幕府の身分と格式を重視し, 上下の関係を規定した封建制は, 料理面においては饗応の膳組の格式の細かい区別という形であらわれていた。
    2) 膳組の格式を区別する要素として, 膳と菜の数, それに続く膳と菜の数, 材料の差, 菓子の種類と出し方, 膳と器の種類, 膳と器の組み方の六つの要素があることを明らかにした.
    3) 膳組の格式は, 饗応の種類と客の身分・役職で決定される.この二つに六つの要素を対応させて客にふさわしい膳組を構成していく過程を明らかにすることができた.
  • 渡辺 紀子
    1989 年 40 巻 12 号 p. 1083-1088
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    実験室で調製したCa-ゼオライトとMg-ゼオライトを用い, これらの置換ゼオライトの布への付着性を水分散液中における粒子径変化と対応させ, 次の結果を得た.
    1) 水分散液中における3種のゼオライトの平均粒子径の順位はMg-ゼオライト>Ca-ゼオライト>Na-ゼオライトであった.界面活性剤水溶液系における粒子径は0%>LAS001%>AOS0.01%であり, 各界面活性剤水溶液中における3種のゼオライトの平均粒子径も同傾向を示した.
    2) 0~30°DHのCaとMg硬水中にNa-ゼオライトを添加した後の浴中のゼオライト粒子径は, Ca硬水中よりMg硬水中のほうが大きかった.
    3) 綿/ポリエステル混紡布への3種のゼオライト付着量の順位は, 水および界面活性剤水溶液中においても同様, Mg-ゼオライト>Ca-ゼオライト>Na-ゼオライトであった.
    4) Na-ゼオライトをMgまたはCa硬水中に添加した後の布へのゼオライト付着量は, 20°DH以下ではMg硬水のほうがCa硬水より多く, 分散液中の粒子径が大きいほどゼオライト付着量の多いことが認められた.
  • 植竹 桃子, 植竹 種美, 崔 景美, 高部 啓子, 松山 容子
    1989 年 40 巻 12 号 p. 1089-1095
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    満40~76歳の日本人成人女子88名を対象として, 中高年女子の「外形的肥痩」の検討を試みた.結果は以下のとおりである.
    (1) 身体の周径, 横径等の身体計測値から大きさのファクターを除去するように変換された17項目を用いてクラスター分析を行った結果, 個体は5クラスターに分類できた.そして, これは「外形的に痩せている」あるいは「外形的に肥っている」という「外形的肥痩」に基づく分類であることを確認できた.
    (2) 外形的肥痩により個体を分類するには, 変換された胸囲および上腕最大囲がとくに有効であった.若年女子では有効であると判断された下肢の周径が, 中高年女子ではそれに該当しないことが注目される.
    (3) 若年女子の場合と同様に, 中高年女子においても, 「外形的肥痩」と皮下脂肪厚とは直接的な強い関連性をもつまでには至らないことが確認できた.したがって, 「外形的肥痩」の概念は, 体密度に基づいて医学的分野で定義されている肥痩の概念と意味が異なり, 衣服を設計する分野独自のものと考えられる.
    (4) 外形的肥痩度の変化に伴うからだつきの変化を観察したところ, 肥りの傾向にある個体は痩せの傾向にある個体よりも体幹, 上肢が太く, 体重は重く, 身長は低いことが認められた.また, 胸囲, 胴囲の著しい相対的増加, 体幹の周径に対する頸の周径の相対的減少, 上肢の近位部周径に対する遠位部周径の相対的減少, という傾向も認められた.
    (5) 以上のように, 中高年女子について, 「外形的肥衣服設計の立場からみた中高年女子の肥り痩せの評価痩」の概念がもつ意味, および外形的肥痩度の変化に伴うからだつきの変化を把握することができた.
  • 柳本 正勝, 堀井 正治
    1989 年 40 巻 12 号 p. 1097-1103
    発行日: 1989/12/05
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    専門家を対象に実施した「食生活の長期展望に関するアンケート調査」結果を補完する目的で, 女子大生を対象に同じアンケート調査を実施した。結果を専門家調査と比較することにより以下の知見を得た。
    (1) 専門家の予測と女子大生の予測の間には, かなりの差を指摘することができた.しかし専門家調査でのまとめがおおむね当てはまる程度のもので, 本質的な違いではなかった.
    (2) 専門家に比べると, 女子大生のほうが米の消費の減少や洋風化傾向を小さく予測していた.
    (3) 女子大生も簡便化傾向を強く予測していたが, とくに持ち帰り弁当や調理ずみの食品の増加を強く予測していた.
    (4) 女子大生を対象とした結果は, 専門家調査を補完する資料として役に立つことが確認された。
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