日本家政学会誌
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43 巻, 5 号
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  • 調査対象と生活時間調査の概要
    天野 寛子, 伊藤 セツ, 森 ます美, 瀬沼 頼子, 天野 晴子, 堀内 かおる, 井野上 眞弓
    1992 年 43 巻 5 号 p. 351-359
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    1990年調査における研究の目的は, 現在の生活実態が将来の生活内容を規定するという観点から, 生活設計に関わる意識を明らかにし, 生活行動と生活様式の時間的実態を生活時間調査によって把握し, 意識と実態のずれや今後の生活設計上の課題を明確にすることである.
    本調査の対象は世田谷区在住者260名であり, 結果は次のようである.
    (1) 従来の調査結果と比較すれば, 夫も妻も家事時間が短く, 社会的・文化的生活時間にかなりつかわれているが, その中でのテレビ視聴が長い.
    (2) 生活設計に関心をもっているが, 生活行動時間にはそれほど現われてはいない.
    (3) 生活の合理化はされているが, 性別役割分業観に基づく生活行動様式が明確に残っている.これらは高齢期の生活に引き継がれ影響していくものと考えられる.
  • 衣生活
    林 隆子, 川端 博子, 石川 尚子, 大久保 みたみ, 大関 政康, 大竹 美登利, 唐沢 恵子, 斉藤 浩子, 高崎 禎子, 武田 紀久 ...
    1992 年 43 巻 5 号 p. 361-369
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    高齢者を対象とする日常着についての調査より, 高齢者の衣服の着方について以下のような特徴がみられた.
    (1) 男性は, 上半身に肌着シャツ, 外衣シャツ, ジャケットかジャンパーの着用が一般的であるが, 5・6月ごろの気温の変化には, 肌着シャツの重ね着で対応していることがわかった.下半身には, パンツ, ズボン下にズボンを着用している.
    (2) 女性は, 上半身に肌着シャツ, ブラウス, セーター類を着用している例が最も多かった.上半身用衣服には前あき型で七分袖のものが多く, 肌着シャツの重ね着は男子と同様であった.また, 下半身には, パンツ, 長パンツやズボン下そしてズボンかスカートを着用している.夏に向けてスカート・ワンピースの着用が増すが, パンツ類の着用は依然として多く, 足腰の冷えと着衣の関連性をうかがわせる結果であった.また, 服種は男性のものにくらべ女性のほうが多い.
    (3) 高齢者用衣服の素材には, 下着類に綿, 外衣に化学繊維が多く使用され, 天然繊維を志向する若者と対照的である.素材に関する知識は一般に低かった.
    (4) 着衣の種類より推定した衣服の熱抵抗と衣服重量より, 高齢者は, 若者にくらべ厚着の傾向がみられるが, 衣服の着方に個人差が大きい.
    以上の結果より, 高齢者のよりよい衣生活をめざして次のような点が望まれる.
    服種の多様化 : 高齢者の日常着の種類をみるとき, 男性では, ジャケットやジャンパーの着用が多い.それにくらべて女性はカジュアルなセーター類の着用が多い.男性は, 習慣的に外出用としてこの種の衣服を着用していると考えられるが, 家庭内ばかりでなく近所等に出かけるときにも, 軽量で伸縮性に富む衣服の着用が勧められる.女性については, 若年者にくらべ衣服の種類が少ないが, 夏になるとスカートやワンピースの着用者も増えるなどおしゃれに無関心でないことが推察される.そこで, ファッション性を取り入れた衣服の供給が望まれる.たとえばキュロットスカートなどは活動がしやすい衣服の例として考えられる.
    衣服の着方と形・素材の工夫 : 男女とも, 体温調節のため厚着傾向の人が多数を占めていたが, 少ない枚数でも重ね着をすると同効果が得られるような衣服, とくに下着類の充実が求められる.すなわち, 腰, ひざやひじの冷えを防ぐよう局所的に厚手のものにするなど構成と形の工夫, 熱抵抗性の高い布素材の利用, また, 重ね着をしても活動に支障をきたさないような伸縮性素材の使用などが考えられる.一方で着衣の量に個人差が大きいことから, 季節を問わず, 保温性の高いものから低いものまで多種多様な衣服の供給が望まれる.
    表示の改善 : 素材についての知識は一般に低いので, 組成や洗濯表示を見やすく, わかりやすい大きさで表示されるよう改善を促す必要がある.
  • -子供の側の認知と対処-
    高橋 久美子
    1992 年 43 巻 5 号 p. 371-382
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    Problems about aging and death are very important, especially in the aging society. We examined those problems from the point of view of how middle-aged couples treat aging and death of their parents focusing on the relationship between their own parents and them. We investigated perception of changes in the parent-child relationship and influence on the emotional tie as the result of death of a parent, and compared the difference of treatment of their parents between sons and daughters. Moreover, we explored the change of role definition in their parents and role expectation to their children. Parents of students in a high school and a junior high school were investigated. The 269 middle-aged couples were selected on condition that both of them had at least one parent alive and their parents were over 60 years old.
    The results are summarized as follows :
    Sons recognized less changes in their parent's life after death of their spouse than daughters. About 70% of daughters and 60% of sons were more worried about the health and life of their parents than before, while neither of them actually took care of their parents. Concerning the emotional tie, daughters did not necessarily take care of their parents more than sons, which was different from our hypothesis. There was no difference between a child having both parents alive and a child losing one parent. This seems to be related to changes in attitudes toward co-residence with a married child, remarriage, the type of care, living in institution and the necessity for a will.
  • 石田 哲夫
    1992 年 43 巻 5 号 p. 383-388
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    α-ラクトアルブミン (α-La) のペプシン処理過程に生じる高分子性物質 (HMF) の抗原性を知る目的から, α-Laを臭化シアン処理して得られるペプチドと抗HMF血清との反応性を抗α-La血清の場合との比較により検討した.
    その結果, α-Laのメチオニン残基の位置での切断や, SS結合の還元により得られるペプチドは抗HMF血清と強く反応したが, 抗α-La血清との反応性は低かった.また, HMFの抗原決定基はペプチド1-90域および91-123域にその一部が存在することが示唆され, HMFの抗原決定基は一次構造依存型であることが推察された.
  • 長野 宏子, 大森 正司, 矢野 とし子, 庄司 善哉, 西浦 孝輝, 荒井 基夫
    1992 年 43 巻 5 号 p. 389-393
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    植物由来のEnterobacter cloacae GAO と, 腸由来のE.cloacae IAM 12349, E.coli IAM 12119 との簡易判別法開発のための検討を行った.
    (1) E.cloacae GAO の生育はグルコース, アスパラギンを含むG培地にリンゴジュースを添加すると約2倍に, カザミノ酸を添加すると約3倍に促進された.
    (2) GAO の炭素源としてはリンゴジュース中に存在するブドウ糖とショ糖がIAM 12349に比べよく資化された.セロビオース, リボースがよく資化されており, 特にキシロースはIAM 12349ではごくわずかな資化性であるが, GAOではよく資化された.
    (3) GAO は, pH4から10までの広い範囲で生育が可能であり, E.coli はpH7以下, pH10では生育せず, またGAO はエスクリン分解陽性であったが, IAM12349, E.coli は陰性であり相違が明らかであった.
    以上の結果より簡易判別法になりうるものであった.
  • 篠原 寿子, 田畑 武夫
    1992 年 43 巻 5 号 p. 395-400
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    4種類の果実系の生薬とオリゴ糖を用い生薬オリゴジャムを調製し, 保存性及び食味嗜好性等の品質特性について, 相互に比較検討した.
    (1) 生薬オリゴジャムは, その含有するオリゴ糖の安定性を保持するため調製工程ではpHをあまり下げず, pH4, 0~4.2の範囲で比較的短時間の加熱で仕上げ, また調製した生薬オリゴジャムも5~10℃で冷蔵保存した.
    (2) 大秦ジャム中のフラクトオリゴ糖含量は, 粉末オリゴ糖を使用したもので43%, 液体オリゴ糖を使用したもので26.4%の含有であった.
    (3) ジャム中の還元糖量は, 保存日数の経過とともに増加した.なかでも, 山茱萸オリゴジャムは還元糖量の経日変化が顕著であり, オリゴ糖の加水分解が促進されていると考える.
    (4) 保存期間中のジャムについては, 一般生菌数, 大腸菌群数, カビ数とも4ヵ月経過後も検出されず, 異常は認められなかった.
    (5) 生薬オリゴジャムを経口摂取した際の血糖量の経時変化は, ショ糖ジャムに比べ低い値を示した.
    (6) 食味嗜好姓において, 大棗および枸杞子オリゴジャムは, 対照のショ糖ジャムとの間に有意差はなく, 高い嗜好性を示した.しかし, 山茱萸ジャムについてはショ糖ジャムの方が好まれた.
  • 勝田 啓子
    1992 年 43 巻 5 号 p. 401-411
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    一般に, 団子が糯米粉, 粳米粉, 水の3成分で構成されていることから, Schefféの3成分系の単純格子計画法を用いて, 粒度の異なる団子の粘弾性に対する成分の相互作用について検討し, 以下の結果を得た.
    (1) 糯米粉, 粳米粉, 水の中で団子の粘弾性に最も大きな影響を与えるのは, 水であった.
    (2) 糯米粉と粳米粉では, 粳米粉の方が団子粘弾性により大きな影響を与えた.
    (3) 水が少ないときには, 糯米粉と粳米粉の配合の変化は, 団子の粘弾性に大きな影響を与えなかった.また, 米粉粒度が変化しても, 粘弾性変化はほとんどみられなかった.
    (4) 粳米粉と水の相互作用より, 糯米粉と水の相互作用の方が団子の粘弾性に大きな特徴が現れ, 粘性率, 弾性率には相殺作用が, 歪には相乗作用が現れることが多かった.
    (5) 団子の粘弾性挙動はVoigt体によって大きく支配されていると考えられ, 粳米粉と水との間には相殺作用が現れるのに対し, 糯米粉と水との間には非常に顕著な相乗作用が現れた.
    (6) 米粉の粒子が小さい方 (特に200mesh以上の場合) が, 成分配合比の影響を大きく受けたが, 60~100meshの荒い粉で調製された団子は成分配合比の依存性が低く, 相乗・相殺作用の現れないことの方が多かった.
  • 物理化学的特性と食味について
    高橋 ひとみ, 村田 安代, 柳沢 幸江, 寺元 芳子
    1992 年 43 巻 5 号 p. 413-420
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    胚芽精米飯の食味を物理化学的に解明し, 精白米飯との差異を検討するため研究を行った.本研究では胚芽精米飯の加水量を1.6, 1.8倍重量に設定し, 比較のため精白米を1.6倍重量で炊飯しそれぞれの測定に用いた.その結果次のような知見を得た.
    (1) アミログラフでは, 胚芽精米粉は精白米粉に比べ, 最高粘度, 最低粘度が低値であった.
    (2) 飯の色を測定した結果では, 胚芽精米飯は胚芽が残っているため黄味が強く, 白色度が精白米飯と比べると低値であった.
    (3) テクスチャー測定では, 同じ加水量の場合, 胚芽精米飯の方が精白米飯よりも硬かった.胚芽精米飯は, 精白米飯と比較して, 加水量に関係なく付着性が低かった.
    (4) 胚芽精米飯, 精白米飯のにおいの定量ではacetoneなど13の物質を同定, うち10物質を定量した.その結果, 胚芽精米飯の方が総香気量が多く, 精白米飯に比べにおいが強い結果になった.また, 胚芽精米飯に多く含有されている物質としては, toluene, hexanal, heptanal, 1-hexanol が認められた.
    (5) 官能検査の結果, 炊飯直後では, 炊きたては一様に好まれるということがわかった.
    1時間後では, 総合で白米1.6がよいという結果になった.胚芽1.8は硬さ, 粘り, 水っぽさなどの物性において白米1.6に近い評価を受けている.外観の評価の差が, 胚芽精米飯と精白米飯の総合評価に反映されているものと思われる.
    24時間後では, 3試料とも評価が悪い方に移行し, 特に胚芽1.6, 白米1.6の評価に変化があった.
  • 緑川 知子, 登倉 尋実
    1992 年 43 巻 5 号 p. 421-427
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    暑熱放射熱存在下での帽子の防暑効果について明らかにし, それが温熱生理反応に与える影響を調べることを目的に, 環境温28℃においてコントロール値をとったのちに, 人工気候室の環境温を約15分かけて35℃に上昇させるとともに, 400Wの陽光ランプ2個を用いて, 被験者の後ろ上方50cmの位置から, ランプが後頭部表面に直角にあたるように (Fig.1参照) 60分照射した.これと同時に着帽時には着帽した、鼓膜温・直腸温・皮膚温・心拍数・発汗速度・帽子表面温度・衣服内気候を測定し, 着帽時と無帽時について比較した.得られた主な知見は次のとおりである.
    (1) 鼓膜温ならびに直腸温のレベルと上昇度は, 着帽時に比べ無帽時に有意に高くなった.
    (2) 頭部表面温は無帽時には着帽時に比べ, 上昇速度が速く有意に高いレベルになった.
    (3) 着帽時に比して無帽時に, 発汗が速く始まり発汗量も多かった.
    熱が頭部に流入した結果, 帽子表面温と頭部表面温が上昇した (Fig.3) が, 着帽により熱の流入を防ぐ効果が現れて, そのレベルは着帽時に低い値になった.その効果は, 鼓膜温, 直腸温にも同様の変化をもたらし, 着帽時においてこれらの値は低くなった (Fig.2).無帽時の鼓膜温が37℃にほぼ達したとき (15分目), 鼓膜温のレベルに有意差が現れたとともに発汗が認められた.発汗開始は, 無帽時に15.3±2.3分で, 着帽時の22.2±3.4分より有意に速かった (Fig.4).鼓膜温が37℃に上昇すると, いずれの条件においても発汗が観察された.そして, 無帽時に鼓膜温のレベルが高かったために, 発汗中枢の活動が高くなり, 発汗量はすべての被験者において無帽時に多い値が得られた (Fig.4).本実験において無帽時には熱流入が多かったが, これに対して放射, 対流, 伝導による熱放散だけで熱平衡を保つことができなくなったために, 蒸発による熱放散を増加させるために発汗が生じて蒸発による熱放散を行った.発汗が速く始まって蒸発による熱放散が増加したので直腸温に差が現れるのが遅れた (25分目) と考えられる.
    鼓膜温のレベルと上昇度が着帽時に比べ無帽時に有意に高くなったのは, 無帽時に頭部表面温の上昇速度が速くレベルが有意に高く保たれたことと関係している.放射熱が後頭部上方50cmから加えられたために頭部表面温が上昇し, 上矢状静脈洞・横静脈洞・海綿静脈洞から流入した静脈血が加温されて, 鼓室近くを上行する内頸動脈血が内頸静脈血液と対向流熱交換により加温されたために, 鼓膜温が上昇したと考察した.
  • 岡部 和代, 杉生 次代, 山名 信子, 中野 慎子
    1992 年 43 巻 5 号 p. 429-435
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    上半身衣の着衣状態でのゆるみ率と間隙量ならびにシルエットとの関係を明らかにすることを目的として基礎実験を行った.一般に使用されている実験衣14種類の着衣形態について, 形態描画器により横断面形状を採取すると同時に, シルエッター写真撮影を行った。実験衣の横断面形状や間隙量, シルエットを定量的に求めて次の結果を得た.
    (1) 間隙量は支持部に少なく, 垂下部に多い特徴をもち, また位置によって特徴ある様相を呈する.ゆるみ率小の0%や5%では, 分割数が多い実験衣のほうが測定点での間隙量は少ない.
    (2) 実験衣のゆるみ率が多くなると間隙量も多くなるが, バストでの間隙量合計はY=27.42X+182.69の回帰式でゆるみ率より求められる.
    (3) 実験衣の総面積に対し, 各面のシルエットは, 後面が約40%, 前面が約36%, 側面が約20%をしめる.
    (4) ボディの横径を1とするならば, 各実験衣の前後横径は1~1.4倍の範囲に, 側面矢状径は1~1.2倍の範囲に認められる.
    (5) ゆるみ率が多くなると前後側面のシルエットは大となり, バストでの前面シルエットはY=5.04X+296.74の回帰式によりバストのゆるみ率から推定可能である.
  • -手縫いにおける縫い糸の引き抜き方向と疲労現象-
    永井 房子, 三石 幸夫
    1992 年 43 巻 5 号 p. 437-447
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    手縫い縫合時の縫い糸の疲労性について, 縫合時の縫い糸と引き抜く際の引き抜き方向に観点をあて, 布の種類, 縫合回数, 針穴接触部と針穴非接触部などと, 引き抜き角度の違いによる, 縫い糸の疲労性の関係を力学的, 形態的変化からとらえて比較検討した.
    すなわち, 各種の布と縫い糸を用い10cm間並縫いし, 引き抜き角度を0°, 45°, 90°の3種類として, モデル的に縫合回数を25, 50, 75回と変化させて引き抜いた.つぎに, 引き抜き後の縫い糸を針穴接触部と針穴非接触部に切断し, 引張り試験機を用いて強伸度実験を行い, 強伸度低下率およびタフネス低下率を求めた.
    さらに, 縫合前と縫合後の縫い糸の外観, 形態変化を走査型電子顕微鏡写真により観察した.これらの結果, つぎの事項が判明した.
    (1) いずれの試料糸においても, 引き抜き角度が0。より90°になるにしたがい, また縫合回数の増加により, 強伸度低下率, タフネス低下率が大きくなる.これは, 引き抜き角度が0°より90°になるにしたがい, 縫い糸の引き抜き方向の変化に伴う摩擦抵抗が大きくなるため疲労が大きくなり, また縫合回数が増加すると縫い糸の布通過回数が増し, 布を通過する際の摩擦による疲労が大きくなるといえる.布では岡木綿を縫合した場合の縫い糸の疲労が大きく, さらに針穴接触部では針穴非接触部より約2.0倍の疲労を示す.
    (2) 全般的にみて特徴的なことは, 綿手縫い糸では, 岡木綿, さらし木綿, 針穴接触部, 針穴非接触部で, いずれの引き抜き角度, 縫合回数においてもタフネス低下率は20%以上と大きく, これと比較してポリエステル糸は20%以内である.すなわち, 綿手縫い糸は極めて疲労が大きく, ポリエステル糸の疲労は極めて小さい.
    既報において, 縫い糸の疲労性は縫合後の縫い糸の引き抜き抵抗に依存することが示唆されたが, 本実験において, 引き抜き角度を変化することによって疲労性が増大し, また, 縫合回数を重ねることによって疲労性が増大することが確認された.
    (3) 走査型電子顕微鏡写真の結果より, 縫い糸は縫合後毛羽が多くなり, 糸の構成が乱れ, これは綿手縫い糸において顕著である.ポリエステル糸では, 毛羽は少なく, 糸の構成の乱れも少ないが, 引き抜き角度が大きくなると糸の太さが約1.5~2.0倍に変化する.
    (4) 以上の結果より, 手縫いにおける縫い糸の疲労には, 縫い糸の種類, 布の物性, 縫合回数, 針穴部などが関与するが, 引き抜き角度にも大きく依存することがわかる.したがって, 縫合後縫い糸を引き出すときは, 引き抜き方向の観点からは, なるべく布の面と平行に, 進行方向に引き抜くことが疲労性の上から好ましい.
  • 布野 修司
    1992 年 43 巻 5 号 p. 449-453
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • -安全と健康確保を目指して-
    松本 恭治
    1992 年 43 巻 5 号 p. 454-464
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 〈その2〉国連事務総長報告書「家族の発展のために-国際家族年にむけての準備と行事」の概要
    日本家政学会国際交流委員会
    1992 年 43 巻 5 号 p. 465-467
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
  • 第2回 : 家政学データベースの構成と構造
    日本家政学会データベース特別委員会
    1992 年 43 巻 5 号 p. 469-473
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
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