児童・生徒の福祉・高齢者観とそれを培う家族の生活背景的な要因を探るために, 新潟, 富山, 福井の3県において小・中・高校生を対象にアンケート調査を実施した.得られた有効調査票数は1,546で, これらを分析した結果, つぎのような点が明らかになった.
(1) 別居祖父母との接触は, 「電話」「行き来」を『月1~2回以上』行っている家族が多いが, 学校段階があがるに従ってその頻度は減る傾向がみられる.また, 父母の社会的・文化的活動度は, 「PTAや町内会の仕事」と「子どもと話す」ことはかなりなされているが, その他の活動はあまり活発ではない.これに対し, 祖父母の活動は, 「友達との付き合い」「旅行や習い事」など自分の楽しみに関するものが活発になされ, 地域活動に関するものは少ない.
(2) 福祉・高齢者観をみるために設定した「高齢者への親しみ・関心」「高齢者のイメージ」「他者援助意欲」「福祉・高齢者学習への関心」のいずれにおいても, 小学生が最も偏見が少なく積極的な福祉・高齢者観をもっているが, 学校段階があがるにしたがって消極的になる傾向が認められた.
(3) 父母・祖父母の活動度と福祉・高齢者観の関連をカイ2乗検定により検討したところ, 中学生が最も多くの関連がみられ, 別居祖父母との接触頻度, 父母・祖父母の活動度のどれもが, 福祉・高齢者観と有意な関連があった.ついで, よく関連が認められたのは高校生で, 中・高生共通に認められたのは, 父母・祖父母の活動度と「高齢者への親しみ・関心」であった.小学生は父母の活動度が「他者援助意欲」に, 別居祖父母との接触が「高齢者への親しみ・関心」に, 祖父母の活動度が「高齢者イメージ」に影響をおよぼす等の関連がみられた.
(4) 「高齢者への親しみ・関心」「高齢者のイメージ」「高齢者の手伝い経験」「福祉・高齢者学習への関心」の4項目を目的変数にして, 生活背景要因の20項目の影響を数量化1類で検討したところ, 「高齢者への親しみ・関心」は小・中・高とも父母の活動度の影響が大きく, なかでも「ボランティア活動」「子どもと話す」がなされていると, 「高齢者への親しみ・関心」が大きかった.また, 別居祖父母との「行き来」も影響していた.
「高齢者のイメージ」は小・中学生の場合, 父母・祖父母の活動度が活発である場合と, 別居祖父母と「物のやりとり」がある場合良いイメージであった.高校生は, 別居祖父母との接触頻度が高く, 父母が「子どもと話す」, 祖父母が「スポーツ」をするほど良いイメージであった.
「高齢者の手伝い経験」は, 小・中学生では父母・祖父母の活動度が高く, とくに「ボランティア」をしている場合や, 別居祖父母ともよく接触している方が, 手伝う傾向が認められた.高校生では別居祖父母との接触頻度が大きく影響していた.
「福祉・高齢者学習への関心」は父母の活動度の影響が大きい傾向がみられたが, やはり祖父母の活動度や別居祖父母との接触頻度も影響要因となっていた.
(5) 祖父母との同居経験や生徒の性差が福祉・高齢者観におよぼす影響は, 父母・祖父母の活動度の影響に比べれば, 小さいものであった.
以上のように, 小・中・高校生の福祉・高齢者観が培われる過程において, 父母・祖父母の生活活動の影響が大きなものであることが判明した.これらの結果を踏まえて, 家庭生活のあり方や福祉・高齢者学習を考えていく手がかりとしたい.
抄録全体を表示