卵巣摘出ラットにおいて, 高脂肪食摂取時の葉酸制限によるアルカリホスファターゼ (ALP) 活性へ及ぼす影響について検討した. 13週齢SD系雌ラットに卵巣摘出 (OVX) (n=44) または偽手術 (Sham) (n=11) を行い, OVXラットはさらに14週齢より基準食 (OVX-Cont.) 群, 葉酸制限食 (OVX-FR) 群, 高脂肪食 (OVX-H) 群, 高脂肪葉酸制限食 (OVX-HFR) 群の4群に分けた. 実験食開始28日後の血清ALP値はOVX 4群間での有意差は認められなかった. 血清葉酸値について葉酸制限により, 有意に低値を示した (p<0.001). 一方, 血清ホモシステイン値は, OVX-HFR群でOVX-H群に比べて有意な高値を示した (p<0.01). 多重比較検定により, 大腿骨のALP比活性はOVX-HFR群で, OVX-H群と比べて有意な低値を示した (p<0.001). 閉経後モデルである卵巣摘出ラットにおいて, 高脂肪食摂取時の葉酸制限が骨形成マーカーである大腿骨のALP活性を低下させ, 骨粗鬆症発症リスクを高める可能性が示唆された.
本稿は, 戦前の生活合理化運動と戦時体制の親和性に着目し, 自由学園の1940年代すなわち戦時下における裁縫教育の具体的実践の様相を, 当時の生徒が発行していた『学園新聞』や雑誌『婦人之友』の分析を通して明らかにした. 明らかになったことを3点挙げる. 1点目は, 学園の戦時下における裁縫教育実践であった協力裁縫は, 「更生利用」「節制」という方向性を持っており, それは学園の戦前からの教育方針であった生活の「合理化」と親和性が高く, 「生活即教育」という学園のあり方にも即して戦時体制に馴染むことが可能だったことである. 2点目は, 戦前の実践と異なり, 協力裁縫は作業的な能率の良さを求める傾向が強く, 合理化路線よりむしろ工場化・労働化へと移行していったことである. 3点目は, 協力裁縫はただ生活を「合理化」するだけでなく, 「美化」するという戦前からの一貫した視点を有していたことである.
我が国において, 酒や味噌などの発酵食品は重要な食文化の一つである. 日本酒は米と米麹から作られ, 調味料や嗜好飲料として用いられている. 酒粕は日本酒の製造過程で作られる副産物であるが, 漬物やみそ汁など様々な調理で使われており, 他の発酵食品同様, 和食を支えてきた. また, 副産物である酒粕を利用することは, 日本の「もったいない文化」の象徴である. これは, 学校教育で求められている持続可能な社会をつくるための取組みに繋がる. 本研究では, 現在行われている家庭科における酒や酒粕などの発酵食品についての学習状況と課題を把握することを目的として, 教科書分析を行った.
小・中・高等学校, いずれにおいても, 発酵食品についての学習項目はあったが, 校種によって学習内容が異なっていた. 発酵食品について, 歴史や材料, 製法などに関する記述は少なかった. 特に, 酒やその副産物である酒粕についての記述はほとんど見られなかった. これらの結果から, 伝統的な食文化である発酵食品に関する学習内容を詳細にすることにより, 食文化に対する理解を促す必要があることが示唆された.
COVID-19の感染が拡大していた2020年4月に, 布製マスクを製作する中学校家庭科の授業実践を行った. 授業は1週間で行い, 中学校の2・3年生の283名の生徒がマスクを500枚製作した. 危機に対応する力を育成するため, 家庭科の布を用いた製作実習で学んだ知識・技能を活用したマスク製作の授業を実践し, その教育効果を検討した. 生徒の自由記述では, 学んだ技能を生かし生徒同士が協力して分業で製作を行い, 短期間で目標を達成した実感をあげる生徒が多かった. 知識・技能を活用し, 役割分担を行い短期間に生徒同士で協力する力が, COVID-19のような予期せぬ状況に対応できる力として効果的であった. 今回の実践を通して, より高い技能の習得への意欲をあげる生徒が多かったことも明らかになった. また教科の枠組みを超えた専門知識を有する他教科の教員との連携が, 今回の実践で大変に効果的であった. 実践を通した課題としては, 連続使用によるミシンの金属疲労や布地の補修を行うコンピュータミシンの整備など, 道具について補完が望ましい状況であることがあげられた.