日本家政学会誌
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50 巻, 10 号
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  • 山本 淳子, 大羽 和子
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1015-1020
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    (1) 市販カット野菜の総VC量は新鮮野菜の値と変わらなかったが, 新鮮野菜に比べDHAの占める割合が多く, AAO活性も高かった.
    (2) 野菜の切断方向を横切りにすると, 縦切りに比べDHA量の増加が大きく, 酸化酵素活性の変動も大きかった.
    (3) タマネギでは中間部に, ニンジンでは, 皮層・内髄にVC量が多く, それらの部位ではAAO活性が他の部位に比べ低かった.
    (4) 切断に伴うGLDHase活性の増大は, VC量の増加とパラレルであったので, GLDHase活性がVCの増加に寄与していると考えられる.
    (5) 切断野菜を室温から低温に移すと, 低温ストレスを受け, 活性酸素の消去に関与するAPO活性が顕著に増加し, DHA量が増加した.
  • 下坂 智恵, 下村 道子, 寺井 稔
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1021-1028
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    魚骨を1%酢酸溶液, 茶煎汁, 水中で加熱したときの物性変化と成分との関係および魚骨アパタイトの結晶性の変化について調べ, 以下の結果を得た.
    (1) 魚骨を各液中で加熱するといずれの溶液中でも破断エネルギー値は低下し, とくに1%酢酸溶液中で加熱した魚骨では低下の程度が大きかった.
    (2) 魚骨を各液中で加熱すると粗タンパク質が溶出した.溶出率は加熱溶液により異なり, 1%酢酸溶液中で最も高かった.
    (3) 魚骨カルシウムは, 1%酢酸溶液中の加熱で溶出した.茶煎汁および水中の加熱ではほとんど溶出しなかった.
    (4) 破断エネルギー値がほぼ同じである常圧加熱および加圧加熱の魚骨を比較すると, 加圧加熱の方が成分の溶出が少なかった.
    (5) 魚骨を各液中で加熱することにより, 骨アパタイトの結晶化が進み結晶は純化したが, 魚骨全体としてはタンパク質が溶出することで魚骨が軟化したものと考えられる.
  • 松尾 眞砂子
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1029-1034
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    麹菌 (Aspergillus oryzae) で発酵させたおから (以下, 麹) を新食品材料として普及させることを目的に, 麹をクッキーやカップケーキの調製に活用し, テクスチャー特性や嗜好性に及ぼす影響を検討した.
    麹は薄力粉に比べ保水力が5倍, 吸油力が2倍強かった.麹はテクスチャーや嗜好性になんらの影響を及ぼすことなくクッキーには10%まで, カップケーキには5%まで小麦粉と置換できた.また, 保存中におけるクッキーの油脂の酸化を抑制したり, カップケーキの澱粉の老化を防止した.これらの結果は, 麹が小麦粉の代替品としてのみならず, 油脂含量の高い焙焼製品の保存における品質保持剤としても優れていることを示唆していた.
    本研究の一部は平成7年度浦上食品・食文化振興財団研究助成金によって行った.
  • 地域差に着目して
    宇都宮 由佳, 益本 仁雄
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1035-1048
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    児童・生徒の間食を選ぶ行動を通して, 北タイにおける地域差を明らかにするため, 都市部のチェンマイ, 郊外の町ファーン, 農村部のサムーンで, アンケート, ヒヤリング等の調査を実施した.調査結果は, 家政学, 統計学, 社会学等の方法論を用いて分析した.その結果は以下のとおりである.
    (1) 間食の出現率合計や1人あたりの間食の種類数で, チェンマイが最も多く, 次いでファーン, サムーンの順となり, 顕著な地域差があることが認められた.
    (2) チェンマイの児童・生徒は, 多様な種類の間食を食べているのに対し, サムーンの児童・生徒は, 種類も少なく, よく食べる間食とそうでない間食とに2極化することが認められた.
    (3) 各地域の出現率を高い順位に並べたところ, 高い順位 (果物, 牛乳など) と低い順位 (ゼリー・グミとスルメ) の間食は, 地域間で同じであることが分かった.また, 中間的な順位を占める間食 (ファーストフード, 炭酸飲料, チョコレート, タイおやつなど) は, 地域によって異なっていた.
    (4) 各間食の出現率の地域比較において, 五つのパターンが認められた.
    (5) これらの地域差の生じる要因は, まず経済的要因として, 児童・生徒の小遣いの多少, 販売価格, 販売店の有無・多寡, 販売方法などである.つぎに社会・文化的要因として, チェンマイの欧米志向と新奇性・積極性, ファーンの自己完結性と保守性, サムーンの貧困性と消極性などの地域特性と, 情報量 (テレビCM, 友人からの情報など) の地域差等があげられる.各間食に対して, それぞれの要因の影響の強弱や組合せが異なることによって, 間食を摂る行動に地域差が生じたと考えられる.
  • 高橋 美加, 田辺 新一, 長谷部 ヤエ
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1049-1056
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    Thermal insulation of clothing is usually measured using a standing thermal manikin. In real life, however, people often sit on chairs and thermal insulation of the nude skin surface and that of clothing should be affected by the chairs. The purpose of this study is to determine the effects of chairs on thermal insulation of the nude skin surface. Seventeen chairs, usually used in an office, were selected for this study. A thermal manikin was used for the thermal evaluation of the chairs. It was found that the area of the back of the chairs influenced the thermal insulation of the manikin in general and the thermal insulation of the back of the manikin in particular as well as the contact area between the chair and the skin surface.
  • 小澤 玲子, 片山 倫子
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1057-1069
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    衣料品の廃棄につながる事故例を知る手掛かりとして全国の消費生活センター (104カ所) の「年度別報告書」を入手し, 解析を行った.
    全相談件数は354,856件, 被服品33,105件, クリーニング8,942件, 食料品15,925件, 住居品29,414件であった.この中で, 特に衣料品に関する事故例の報告内容を「相談業務報告」と「商品テスト業務報告」から調べた結果, 具体的に事故の内容を報告していたのはわずか480例のみで, 「クリーニング」を含めた「被服品」の全相談件数42,047件のごく一部に過ぎなかったが, 相談内容としては色 (168例) >損傷 (124例) >形態・外観 (121例) の順で多かった.各消費生活センターで対応する多数の「衣料品」の相談について, 各事故例の情報分析を可能にするための聞き取り票を提案した.
  • 藤原 康晴, 宇野 保子, 中川 敦子, 福井 典代
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1071-1077
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    服装に対する評定の再現性が評定者個々人によってどのように異なるか, さらに, その再現性の良否が服装に対する評定値にどのように影響するかを検討するために, 同一の評定者群に対して同じ服装, 同じSD尺度を用いて7日の間隔をおき, 2回測定した.
    各評定者別に1回目と2回目の評定値間の平均距離を算出した結果, その値は, 0.35から2.19まで分布し, この値の評定者平均は0.81であった.評定者をこの値の大小によって評定の再現性の高い評定者, 中程度の評定者, 再現性の低い評定者の3グループに分け, これらのグループ別に8種の各服装に対する13個の各SD尺度による評定平均値を算出してその違いを分析した.その結果, 3グループの評定平均値が異なるのは, ここで測定した104個の評定値のうちの34個であった.
    これら3グループによる評定平均値が異なる場合, 再現性の低い評定者グループの評定平均値は高いグループの値よりも, SD尺度の「どちらともいえない」側になる傾向のあることがわかった.
    なお, 各SD尺度別に算出した1回目と2回目の評定値の相関係数は, 0.23~0.82であった.評定者平均値を代入して各服装別に算出した相関係数は, 0.97~0.99であり, 評定者平均値を用いた場合, 再現性のある評定値が得られることがわかった.
  • ビンフォード夫妻を中心にして
    川崎 衿子
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1079-1089
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    As Japan opened the door to the rest of the world in the Meiji Era, the wave of westernization spread rapidly over many sectors of Japanese society. One of the most remarkable impacts it made was on the style of dwelling and here we find that the grassroots-level Christian missionary work in many parts of Japan played an important role. This report is a case study that focuses its attention on the missionary activities of Gurney and Elizabeth Binford. This missionary couple engaged in their preaching activities primarily in Ibaraki Prefecture during the period of 37 years, from the time of their arrival in 1899 until1936 when they left Japan.
    They opened up their home to the public to show what the Western style of living was like. They taught the local people not only the Western cooking and housekeeping but also the family management based on love and respect as well as pure life. Their activities attracted the attention of younger people, especially those young women who admired Western culture and were sensitive to new ways of thinking, prompting them to long for improvement in their dwelling life. It should be noted that the Western style of dwelling spread in the Japanese society, keeping pace with the modernization and democratization led by Christian spirits. In later years, the trend was carried on by the efforts of the female members of Omi Mission; it was in Omihachiman in Western Japan where dwelling life saw remarkable improvement.
  • 今中 正美, 道本 千衣子
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1091-1096
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    急激に変化してきている食環境の中で, 学生の基本4味に対する味覚感度にどのような変化が生じているかを知る目的で, 都内の女子短大2年生を被検者として行った全口腔, 上昇系列法による基本4味に対する官能検査の結果を1980年から1985年群と, 1986年から1995年群とに分けて検討し, 以下の結果を得た.
    (1) 4味とも1980~1985年群と, 1986~1995年群間で味覚閾値に有意差は認められなかった.
    (2) しかし, 塩から味・苦味・甘味の味覚閾値は高くなる傾向が認められた.特に, 甘味については, 有意差は認められないものの, 1段階の構造変化を生じたといえるほど, 味覚閾値が高濃度に変化した.また, 酸味の味覚閾値は低くなる傾向にあると考えられる.
  • 伊藤 紀之
    1999 年 50 巻 10 号 p. 1097-1098
    発行日: 1999/10/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    昨年秋の日本デザイン学会で「電気やぐらこたつデザインの変遷」の研究発表があった.諸外国には見られない日本固有の生活文化に根ざしたこたつのデザイン変化について報告された.興味深く聞いていると, 1966年に登場した折りたたみ式のやぐらこたつが紹介された.それはまぎれもなく私のデザインだった。現在ではほとんど見かけなくなったが, 自分の作品がある時代を特徴づける歴史のひとコマになっていることに, 改めて感慨深く感じた.
    当時, 家庭暖房の必需品であった電気こたつは春になると片づけることになるが, しまいにくいこともあり, テーブル代わりに一年中使っている人もいた.季節商品は使用しない時のことも考えに入れねばならない.また購入の際, 電気店から各自が持ち帰る製品であった.収納と運搬時にはコンパクトになるように二つ折りやぐらこたつを世に送り出した.市場の反響は良かった.翌年, 同業他社は似て非なる二つ折りのこたつを出してきた.その後, このタイプが市場の主流になった.
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