日本家政学会誌
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74 巻, 11 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
報文
  • 樺澤 貴宏, 上田 玲子, 阿部 啓子, 浦野 孝太郎, 明道 聖子
    2023 年 74 巻 11 号 p. 617-626
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー

     熱中症対策飲料の嗜好性と消費者の生理状態の関連性を明確にするために多変量解析を行った. 「イオンぷらす」 ((株) タケショー製 ; 粉末) の3濃度の試料Na57, Na48, Na41を入浴 (湯温40℃, 15分間) 前後に品質特性5項目 (採点法) と印象10項目 (Semantic Differential法) について社内パネル21名が評価した. 入浴後に「酸味」がNa48とNa57で有意 (α<0.01, α<0.05) に, 「塩味」と「おいしさ」がNa41で有意 (α<0.05) に増加した (Wilcoxonの順位和検定). 品質特性と印象を統合して因子分析を適用した結果, 「すっきり感」「飲みやすさ」「酸・塩味」「果汁感」と命名した4つの因子 (累積寄与率59.8%) が抽出された. これらの因子得点は, 入浴の前後と試料の濃度に応じて変化し, 因子軸座標上で可視化できた. 入浴前後別の因子分析から, 入浴後は特に印象の嗜好要因で試料を知覚していることが示唆された. 発汗についての本研究は, 生理変化による飲料の嗜好性を客観的に明らかにする方法として有用である.

  • 高橋 哲也, 林 誠, 渡邉 裕大, 庄野 栄作, 松本 健太郎, 真下 章弘
    2023 年 74 巻 11 号 p. 627-636
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー

     消臭効果に優れる繊維を開発すべく, アンモニアガスを有効に吸着/分解し得るレーヨン繊維の研究を行った. そのために粗面化させたレーヨン繊維を作製し, 高温高圧状態でペルオキソ改質アナターゼゾル (以下, “PAゾル”と略す) の繊維表面への含浸処理を行った. 得られた繊維に対して, アンモニアガスに対する吸着/分解効果について評価した.

     その結果, 多孔質レーヨン繊維にセルラーゼ処理した場合では, 処理していない場合に比べて高いガス吸着効果を示した. さらにその繊維を加熱すると, 繊維内部に吸着されたアンモニアガスが比較的高い濃度で検出された. このことから, アンモニア分子に対する吸着性は非常に高いことがわかった. さらに, それらの繊維にPAゾルを含浸処理したところ, 繊維より放出されるアンモニアガスの濃度は光照射によって低くなることもわかった. このことは, 光触媒機能によってアンモニア分子が分解されたためと考えられた. このような傾向は長時間後 (7日~10日後) ではより明確になり, アンモニアが完全に検出されなくなることもわかった. 以上のことにより, セルラーゼによって表面を粗面化させたレーヨン繊維に対してPAゾルを含浸させることは, アンモニア分子に対する吸着/分解効果の高い繊維を得る上で有効な手段であることがわかった.

資料
  • 清重 めい
    2023 年 74 巻 11 号 p. 637-647
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は, 家庭内にとどまらず学校や社会全体の経済活動を射程とした経済教育を行なった特異な実践として, 1920年代から1930年代における自由学園の高等科経済グループ並びに自由学園消費組合の実践を明らかにすることである. 検討から明らかになったことを2点あげる. 第一に, 自由学園の経済に関わる教育実践として, 高等科経済グループでは, 学園の予算管理に関与していたこと, 著名な経済学者らを講師のもと, 消費組合や金融に関する授業がなされ, 本格的な調査研究を実施していたことが明らかになった. 第二に, 卒業生を主体とした自由学園消費組合の活動は, 高等科経済グループの興味関心をその発端として成立し, 学園内の経済・経営関係に携わりつつ, 女性による消費組合活動を展開したことが明らかになった.

  • 渡壁 奈央, 古田 歩, 鈴木 麻希, 杉山 寿美
    2023 年 74 巻 11 号 p. 648-659
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル フリー

     戦国期毛利氏の饗応献立について, 『元就公山口御下向之節饗応次第』に記された6回の饗応献立記録と, 『身自鏡』に記された季節の食材や調理法から, 饗応献立の料理構成を検討した.

     膳部の本膳, 二の膳, 三の膳の料理の数は, それぞれ7, 5, 3であり, 異なる15の料理が供されていた. また, 1回の饗応で料理の重複は認められなかった.

     一方, “かうの物” “かまぼこ” “あわび”等は, 6回の饗応すべてで供されていた. 御汁は, 二の膳, 三の膳で2つずつ供され, 二の膳では, 魚 (鯉, 鯛, 鮒) の汁と, 山菜または海藻の汁, 三の膳では鳥 (白鳥, 靏, 鴈) の汁と, 獺またはあわびの汁であった. 『身自鏡』には, 塩による保存の有無で魚, 鳥, 獺の汁の調理方法が異なることが記されていた.

     献部では, 初献で“雑煮”, 二献で“さしみ”“鳥”“栄螺”が供されていた. 点心の献には, 上位の食材とされる鯉, 白鳥, 鶴や, 季節の情景を表した料理が, “御副物”として組み合わされていた.

シリーズ くらしの最前線 142
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