日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
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74 巻, 3 号
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報文
  • 乾 眞理子, 森下 正修
    2023 年 74 巻 3 号 p. 113-128
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/01
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     本研究の目的は以下の3点である. (1) 被服選択における正と負の理想自己を分析し, 分類する. (2) 被服選択における理想自己と友人関係の志向性や被服行動との関連性を検討する. (3) 被服選択における理想自己の持ち方の違いによりクラスター分けし, 友人関係の志向性や被服行動などの特徴を明らかにする.

     予備調査をもとに, 「被服選択における理想自己」尺度を作成した. 因子分析の結果, 正の理想自己「きれいさ」・「かわいらしさ」・「精神的強さ」の3因子と, 負の理想自己「社会的負のイメージ」・「非友好的」2因子, 人により正負が変わる「派手・個性」因子が抽出された.

     被服選択における理想自己と友人関係の志向性や被服行動には多くの点で関連性が認められた. 正負の理想自己の持ち方により4つのグループに分類された. グループ間で, 友人関係の志向性などで差があった.

     被服選択における理想自己への意識は, 友好的な人間関係や社会から求められているものをどの程度意識するかと関係しており, 被服関心や被服の実践的行動の違いにも関連するといえる.

ノート
  • 孫 珠煕, 李 珠英, 西丸 広史, 堀 悦郎, 西条 寿夫
    2023 年 74 巻 3 号 p. 129-139
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/01
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     本研究は, 「コロナウイルス感染症流行時における大学生のマスク着用と日常生活の変化との関連性」について日韓の比較を明らかにすることを目的とした. 標本数は日本252名, 韓国241名の計493名である.

     (1) 日韓の比較では27項目中19項目に有意差が認められた. このうち, 5項目 (p<.001, t検定) は日本の平均値が高く, 11項目 (p<.001) は韓国の平均値が高かった. (2) 「マスク着用理由」は, 日韓共に「COVID-19感染予防」と一致していた. 次いで, 日本は「他人の社会的視線が気になる」, 韓国は「メディアから勧められたから」であった. (3) 日本では使用後のマスクを洗濯後再利用し, プリーツマスクが好まれていた. 韓国では2~3日使用後のマスクは捨てる割合が高く, 立体マスクが好まれていた. (4) 共分散構造分析の結果, モデルの適合度は (韓国 : GFI=.934, AGFI=.902, RMSEA=.060) (日本 : GFI=.952, AGFI=.926, RMSEA=.045) となり, 当てはまりの良さが示された. (5) 韓国人データを用いて構造方程式モデリング (SEM) を行った結果, 『日常生活への変化』が『危機意識』に正の影響を及ぼしていたが, (危機意識が) 『社会との距離』とは関連性が認められなかった.

     以上より, 日韓共に女性が男性よりCOVID-19への対応が慎重であり, 性別の違いが明らかになった.

  • ~月経周期の安定性に着目して~
    近藤 渚, 小川 睦美, 戸谷 誠之, 髙尾 哲也
    2023 年 74 巻 3 号 p. 140-147
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

     月経周期の日数が安定しているか否かに着目し, 女子大学生の月経記録習慣及び月経教育を受けた経験の現状を検討した. 解析対象者75名を月経周期の日数が安定している群 (安定群) 41名, 安定していない群 (非安定群) 34名に分けて検討すると, 非安定群の方が安定群よりも月経記録習慣をもつ者が有意傾向に多かった. よって, 月経周期の日数が安定しているか否かは月経記録習慣の有無に影響を与える可能性が示唆された.

     一方, 75名全員には月経教育を受けた経験があった. このことより, 月経記録習慣の有無は月経教育を受けた経験がある否かではなく, 現在の月経周期の日数が安定しているか否かという点との関連が示唆された.

     月経記録習慣を持つことで月経周期異常に早めに気付くことができると思われる. 今後は, 月経周期の日数が安定しているか否かに関わらず, 女子大学生に対して月経記録の重要性を伝える月経教育が必要である.

資料
  • ―新任者・中堅者・熟練者を対象に―
    佐藤 有香
    2023 年 74 巻 3 号 p. 148-155
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/01
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     本研究は, 新任者・中堅者・熟練者の保育者を対象に, 子どもの心情を理解する際にどのような点に着目し理解を進めるか「子ども理解」の視点が, 経験年数による違いがあるか検討することを目的とする. 具体的には, 現職保育者115名を対象に, 日常の保育で想定される子どもが登場する2場面の映像を視聴し, 子どもの行動の理由や心情について自由記述による回答を求めた. 自由記述の回答を分節化し, 「子ども理解」の視点カテゴリに分類し, 3者間による違いがあるか検討した. 分析の結果, 保育者の経験年数の増加と比例し, 子どもの行動や発言等細部に着目し言語化が可能になることが明らかにされた. また熟練者は, 新任者と中堅者と比較し, 子どもの発達等【背景】や周囲の子どもの発言や行動等【他者に関する理解】に着目し「子ども理解」を行っていることが示された.

シリーズ 研究の動向 69
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