近年高齢化が急速に進み, 介護保険施設入所者全員に対する低栄養対策のための栄養管理が急務となっている. そこで, 介護老人保健施設における体重減少の要因を明らかにするため, パス解析を用いて因果関係モデルを構築し検討した. 対象者は, 2014年から2016年の入所者60名 (平均年齢91.5±5.4歳, 男性5名, 女性55名) で, 毎年5月から11月に秤量法による12回の食事調査を実施し, 平均エネルギー・栄養素摂取量を算出した. そのうち48名についてactivities of daily living (ADL), 入所期間, たんぱく質摂取量, 脂質摂取量, 炭水化物摂取量, エネルギー摂取量, 体重減少率の変数を用いてパス解析を行った結果, ADLと入所期間がたんぱく質, 脂質, 炭水化物摂取量に影響し, エネルギー摂取量を介して体重減少に影響することが明らかとなった. 以上より, 介護老人保健施設の低栄養予防に対する栄養管理では, ADLや入所期間について考慮する必要がある.
高吸湿レーヨン繊維の吸湿に伴う発熱状態の持続性を高めるべく, 蓄熱マイクロカプセルを繊維に付着させてその改良を試みている. 本研究では様々な使用環境を想定し, 異なる温度や湿度の雰囲気状態にて発熱状態の持続効果について調べた.
その結果, 雰囲気温度が低いほど, 吸湿に伴う発熱状態は時間的に長くなることがわかった. 同様に雰囲気湿度を変えて吸湿発熱挙動への影響を調べたところ, 低湿度の状態より吸湿させた方が発熱ピークが高くなる傾向が認められた. また, 蓄熱マイクロカプセルを付着させることによって, 幅広い雰囲気温度や雰囲気湿度の範囲で発熱状態を長く維持できるようになることもわかった. これらの結果より, 低温低湿度である日本の冬季においては, 吸湿発熱繊維の蓄熱マイクロカプセルの付着による効果は非常に有効であることがわかった.
アパレル分野において色彩調和は非常に重要であり, 多くの調和理論がある. これらの理論の多くは色相の調和範囲を同一の調和, 類似の調和, 対比の調和として展開している.
本実験では, ムーン・スペンサーの調和論, オストワルトの調和論, PCCSの調和論を取り上げ, L*, a*, b*色空間にて調和範囲の比較検討を行った. その結果, 表色系の色相間隔の均等性は認められず, 調和範囲が不明確であることが確認された.
そこで本研究では, 色相角を均等に20分割した色票試料を作成し, 2色配色として色相の調和について視覚評価を行った. 試料は高彩度領域20色, 高明度領域20色の計40色を作成し, それらを上下に2色配色し, 計800試料をN6のグレーを背景で提示した. 実験参加者は女子大生200名であり調和の程度を6段階で回答させた. その結果, 高彩度も高明度も同一色相が最も調和し, 2色の色相角が大きくなるほど評価は下がり, いわゆる対比の調和領域は存在しなかった. また, 上下の配色の位置は暖色が上に, 寒色が下に配置した方が評価は高かった.
本研究では, 離島 (宇久島) の未利用魚介類を用いて製造された魚醤油の呈味特性と色調を明らかにした. 試料はエソ, タチウオおよびガンガゼを原料として, 2019年に製造されたものとし, 味覚応答 (味認識装置により測定), 呈味成分 (遊離アミノ酸や有機酸など) 濃度および色調を測定した. 宇久島の魚醤油の特徴を明確化するために, 市販の醤油や魚醤油と比較した. 宇久島の魚醤油は, 市販の醤油や魚醤油と比べて酸味や渋味刺激が強く, うま味と塩味が弱いことが明らかとなった. これは, 宇久島の魚醤油の遊離アミノ酸濃度が市販の醤油や魚醤油よりも低く, 有機酸が比較的多く含まれるためと考えられた. また, 宇久島の魚醤油の色調は市販の醤油と魚醤油の中間程度であった. これら研究成果は, 宇久島の魚醤油を調理に利用する際の基礎資料として有用であると考える.