日本家政学会誌
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72 巻, 7 号
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報文
  • 三戸 夏子, 金子 圭希
    2021 年 72 巻 7 号 p. 401-414
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

     四季のある日本では食事摂取量に季節の影響があることが報告されている. 日本の夏の平均気温は上昇傾向にあり, 暑熱環境下において日常的に部活動等で運動する若年層の食習慣を検討する必要がある. そこで本研究は, 運動習慣のある若年男性の食習慣, 睡眠習慣, 及び体組成における季節の影響について検討することを目的とした. 大学の野球部に所属する同一の対象者に対して夏季及び秋季の二つの季節において, 食事調査, 食べる速さ, 食事における咀嚼の程度, 及び睡眠習慣の調査, 及び体組成の測定を行った. その結果, 体重, BMI, 体脂肪率, 体脂肪量は夏季と比較して秋季で有意に増加していた. 食事摂取量は, 夏季は秋季と比較して複数のエネルギー調整後の栄養素摂取量が有意に少なくなっていた. また日本人の食事摂取基準 (2020年版) の値との比較では, 夏季は秋季よりもカリウムとビタミンB1の値を満たしていない人の割合が高かった. 一方, カルシウム, ビタミンB6, 食物繊維総量, 及び食塩については夏季及び秋季ともに値を満たしていない人の割合が高かった. また夏季は秋季と比較して嗜好飲料類の摂取が多かった. さらに, クロノタイプの夜型傾向を示す休日の睡眠中央時刻が遅い群は, 朝型傾向を示す休日の睡眠中央時刻が早い群と比較して夏季において複数のエネルギー調整後の栄養素摂取量が有意に少ないことが示された. この傾向は秋季には認められなかった. 以上の結果から, 近年の夏の気温の上昇による暑熱環境下で日常的に部活動等を行う若年層について, 季節及び睡眠パターンを考慮した食教育が必要であることが示唆された.

資料
  • 恒川 丹
    2021 年 72 巻 7 号 p. 415-424
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

     本研究のテーマであるチーム保育は, 1つのクラスを2人以上の保育者 (非常勤職員を含む) で行う保育方法のことであり, 多くの保育所・幼稚園・認定こども園においてこの方法が取り入れられている.

     このチーム保育の実践は様々な形態・方法で行われているが, 保育者1人ひとりがチーム保育の実践を振り返ることができ, 尚且つ客観的に測定できる指標がない.

     そこで, チーム保育の実践を測定する尺度の開発及び, チーム保育に影響を与える要因の分析を行った. チーム保育の実践を測定する尺度は, 「第1因子 : コミュニケーションの充実」・「第2因子 : 効果的な保育実践のための連携」・「第3因子 : 改善に向けた振り返りの実施」の3つの下位因子で構成される.

     この尺度と保育者がチーム内で担う役割との関連を分析したところ, 保育者の役割の交代があるチームの方が, 役割が固定化しているチームよりも第2因子・第3因子で有意に高い値を示した.

     すなわち, 保育者の役割形態の違いである, 役割の交代の有無がチーム保育の実践に影響を与えていることが明らかになった.

  • 戸松 美紀子, 野村 希代子, 木村 留美, 杉山 寿美
    2021 年 72 巻 7 号 p. 425-430
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

     飯に, 汁やおかずを組み合わせて交互に食べる我が国の食事様式では, 飯の代わりにパンが組み合わされた場合でもパンとスープ, おかずが交互に食べられる. 本研究では, 0.4~0.9%の低塩分濃度のスープにパンを組み合わせた時のスープの塩味の嗜好性 (好ましさ, 許容性) を検討した.

     その結果, 0.5%のスープを最も好ましいとした者が「スープのみ」では多かったが, 「スープの次にパン」, 「パンの次にスープ」では少なかった. 許容できるスープの塩分濃度についても, 「スープのみ」では0.4, 0.5%のスープを許容できるとした者が多かったが, 「スープの次にパン」では0.4, 0.5%のスープを許容できるとした者が少なく, 0.9%のスープを許容できるとした者が多かった. また, パンを組み合わせることによって許容できるスープの塩分濃度が高くなる変化は, 「パンの次にスープ」よりも「スープの次にパン」で大きかった.

     以上から, スープの塩味はパンを組み合わせた場合は, パンの塩味への順応や, パンによる後味の除去などにより, 低塩分濃度のスープの嗜好性が低くなると考えられた.

  • ―空き家管理事業者へのアンケート調査結果から―
    崔 銀淑, 中山 徹, 清水 陽子
    2021 年 72 巻 7 号 p. 431-442
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/31
    ジャーナル フリー

     民間事業者が行っている空き家管理の状況を把握するためアンケート調査を実施した. アンケート内容は, 管理事業者の属性, 管理内容, 運営や管理を行いながら困っていることなどについて回答を得た.

     全て76民間事業者の中で36業者 (47.4%) が不動産会社で最も多く, 次いで, 建築会社が22業者 (28.9%), シルバー人材センターが14業者 (18.4%), NPO法人が2か所 (2.6%) となった. 空き家管理に関っている職員数は5人以内が55民間事業者 (72.4%) で最も多かった. 活動エリアは市町村が最も多かった. 管理経験がある業者は45か所 (59.2%), 経験ない業者は31か所 (40.8%) だった. 住宅形態別管理軒数は戸建て住宅が最も多く, 月1軒~9軒を管理している民間事業者が最も多かった. 開始時期は2018年から管理していると答えが23か所 (30.3%) で最も多かった. 空き家管理事業のきっかけは, 本業と繋がりがあるためが49 (64.5%) 民間事業者で最も多かった. 管理内容と費用は, 室内外管理が多く, 月一回の費用は4,000円~6,000円未満が最も多かった. 行政に要望事項は所有者の情報を共有することが最も多かった.

     アンケート調査結果から, 空き家管理を本業とする民間事業者は見られず, 本業と繋がりのため副業的に行われていることが明らかにした.

シリーズ 研究の動向 56
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