本調査の結果, 以下のことが明らかになった.
(1) 日本の「高齢群」は「準備群」に比べて「購入」行動, その中でも特に「購入の計画性」項目でそのレベルが高くなっている.一方, 韓国の「高齢群」は「環境配慮商品購入」項目で「準備群」より有意に高くなっている.
(2) 日韓同様に「高齢群」は「準備群」より「処理」行動の面で優れており, 日韓比較においては日本の方で「処理」行動のレベルが高い.
(3) 日韓の高齢消費者, 特に「高齢群」は, 「購入」行動より「処理」行動の面でよりすぐれた実践能力を持っている.
(4) 「高齢群」の「購入」と「処理」行動に影響を与えている変数は, 日韓で一致してはいないが, 「性別」「学歴」「買物経験度」「代替案意識度」などは共通の変数である.
(5) 「高齢群」の「購入」行動に対する変数の相対的影響力は, 日本では「代替案意識度」が, 韓国では「買物経験度」が最も大きい.一方, 「処理」行動に対しては日本では「買物経験度」が, 韓国では「年齢」が一番影響を与えている変数である.そして, 「購入」と「処理」行動に対する変数の影響力の差はあるものの, その傾向は日韓同様である.
本研究で見る限り, 日韓の「高齢群」は, 生活環境が過去より豊かになってきた現在も, 「購入」と「処理」行動, 特に「処理」行動において優れた実践力を持っていることが分かった.ブランド志向や過重消費, 環境汚染の問題が深刻化されつつある現代社会において, このような「高齢群」の品質の重視, 購入の計画性, 環境配慮消費行動, リサイクル, 廃棄などの資源節約的消費者行動には注目する必要があると考えられる.このような高齢者の消費者行動は他年齢層に多くのことを示唆できると考えられる.そして, 消費者教育や消費者政策においても高齢者の消費者行動に理解や関心をおくことはもとより, これまで被消費者学習対象者であった高齢者の「伝える側」としての役割が期待されると言える.高齢者の持っているすぐれた節約及び環境配慮への心がけを始め, 消費者行動の具体的事例を教材化するなど高齢者による消費者学習の企画も提案されるべきであろう.
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