日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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31 巻, 2 号
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  • 松本 昭彦, 新井 達太, 川島 康生, 田辺 達三, 三島 好雄
    2002 年 31 巻 2 号 p. 81-95
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
  • 末永 悦郎, 須田 久雄, 片山 雄二, 里 学
    2002 年 31 巻 2 号 p. 97-99
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    完全体外循環を用いた冠動脈バイパス術連続151例を対象とした.エリスロポイエチン投与し自己血貯血を行った群76例(A群),貧血や不安定狭心症などの理由により自己血貯血を施行しなかった群75例(B群)に分け比較検討を行った.患者背景では年齢,性別,体格,術前ヘマトクリット値に有意差を認めなかった.平均バイパス本数は3.3枝で体外循環時間,大動脈遮断時間に有意差を認めなかった.術中無輸血率はA群で89.4%,B群で66.7%と有意にA群で高かった.術後12時間出血量はA群236.1±244.5ml,B群317.6±270.6mlとB群で高かった.完全無輸血率はA群で78.9%,B群で61.0%であった.高齢者や体格の小さい患者,貧血患者に対する自己血貯血については検討を要するところであり,医療費や患者の負担を軽減した有効な自己血貯血を行うためには個々の症例に対し術前に自己血貯血の必要性の有無を正確に評価することが必要と思われた.
  • 池淵 正彦, 西村 謙吾, 橘 球, 前田 晃央, 金岡 保, 応儀 成二
    2002 年 31 巻 2 号 p. 100-104
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1980年から1997年に手術した腹部大動脈瘤(AAA)191例(非破裂161例,破裂30例)の遠隔期予後を検討した.30日死亡は非破裂群1.2%,破裂群36.6%,在院死亡はおのおの3.1%,53.3%であった.耐術例の累積生存率は5年76.3%,10年42.3%で,一般人口より低かった.非破裂群と破裂群に有意差はなかった.遠隔期の死因は心臓関連死が28.8%,脳血管障害19.2%,悪性腫瘍17.3%,大動脈腸管瘻や再発した真性動脈瘤(真性瘤),吻合部動脈瘤(吻合部瘤)など中枢側吻合部周囲大動脈病変の破裂が9.6%であった.遠隔期に中枢側吻合部周囲の大動脈病変を10%,胸部大動脈瘤を3.7%,大動脈解離を4.2%に認めた.グラフト累積開存率は10年97.4%,15年90.9%であった.AAA患者では術後遠隔期において,冠動脈疾患や大動脈瘤の再発などを早期に発見するために,長期的な経過観察が必要である.
  • 田中 弘之, 成澤 隆, 森 貴信, 桝田 幹郎, 鈴木 隆, 高場 利博
    2002 年 31 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患を合併する慢性血液透析患者では,術前全身状態が不良な例,石灰化大動脈をもつ症例がみられ,またほかの同時手術を要する症例や水分,電解質管理に難渋する症例も多い.そういった症例を中心に体外循環を使用しない心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)は有用と考えられ施行した(5例).体外循環使用,心停止下のバイパス術(ECC;9例)と比較した.術前併存疾患ではOPCAB群に膠原病,porcelain aorta,脳梗塞などを3/5例に認めた.緊急手術例はECC群5/9例,OPCAB群2/5例でほぼ同様であった.バイパス本数(平均3.2 vs. 2.0本),完全血行再建率(7/9 vs. 2/5)ではECC群で多い傾向があったが,輸血量(6.7 vs. 3.0u),術後CK-MB(63 vs. 33u),術後通常血液透析開始時期(4.2 vs. 1.0日)ではOPCAP群で有意に良好であった.術後IABP使用例(3/9 vs. 0/5),術後呼吸器離脱時期(2.7 vs. 1.0日)ではOPCABで良好な傾向を認めた.入院死亡はECC1/9例,OPCAB2/5例ととくにOPCAB群に高い死亡率を認めたが,術前全身状態不良の緊急例で非心臓死であった.術前循環動態不安定例,冠動脈poor run off症例などECC使用が望ましい例を除くとOPCABは血液透析患者の血行再建法として有用と考えられた.
  • 武内 克憲, 坂本 滋, 松原 寿昭, 永吉 靖弘, 西澤 永晃, 庄野 真次, 河野 通孝, 松原 純一
    2002 年 31 巻 2 号 p. 110-113
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術(CABG)において,われわれは左内胸動脈(LITA)採取時にphosphodiesterase III (PDE III)阻害剤をLITAへ直接注入し拡張させ,攣縮を予防することで血流量を増加させるよう,工夫している.今回,PDE III阻害剤とともに,塩酸パパベリン,硝酸イソソルビド(ISDN)を用い,LITAの薬剤反応性について比較検討した.CABG 42例を対象とし,各薬剤14例において薬剤投与前後のgraft free flow (GFF)と体血圧を計測し,血管抵抗(R)値を算出した.各薬剤でGFFIは有意に増加し,R値,体血圧は有意に低下した.いっぽう,各薬剤間の体血圧変化率に有意差はなく,PDE III阻害剤はほかの薬剤よりGFF変化率が有意に増加し,R値変化率が有意に低下した.この結果より,動脈グラフトの血流量増加にPDE III阻害剤はより有用であることが示唆された.
  • 福本 仁志, 西本 泰久, 西本 昌義, 茨木 利彦, 鈴木 秀一, 冨士原 彰
    2002 年 31 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Stanford B型急性大動脈解離90例の治療成績と保存療法における早期離床の有用性について検討した.90例中の破裂は来院時破裂11例,入院後破裂1例の計12例(13.3%)であった.このうち8例に手術を行い死亡は1例(12.5%)であった.来院時非破裂例79例に保存療法を行った.保存療法中の破裂は1例(1.3%)で,死亡は破裂1例と腹部臓器壊死2例の計3例(死亡率3.8%)であった.来院時破裂例も含めたB型全体の死亡は90例中6例(6.7%)であった.偽腔閉鎖例の死亡は1例のみで,合併症頻度も開存例より少なかった.1週間で立位,2週間で自由歩行とする早期離床プログラムを作成し最近の31例に用いた.早期離床例に破裂例はなく,肺炎や薬剤を要する不穏などの合併症は有意に減少した.破裂例を除けばB型解離の保存療法の成績は良好で,降圧療法を厳密に行ったうえでの早期離床は合併症減少にも役立った.
  • 大伏在静脈との比較
    鈴木 龍介, 鎌田 聡, 笠原 勝彦, 本田 二郎, 小柳 俊哉, 加瀬川 均, 維田 隆夫, 川瀬 光彦
    2002 年 31 巻 2 号 p. 120-123
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    術後1年以上経過した左回旋枝もしくは対角枝に橈骨動脈を用いたCABG134例を対象に術後中期遠隔成績を大伏在静脈と比較し検討した.平均観察期間は2年4ヵ月.RAは108本,SVGは42本をこの領域にバイパスした.吻合部位はRA群がPLに69本,OMに29本,DBに10本のバイパスを施行した.SVG群はそれぞれ26本,14本,2本であった.早期グラフト開存率はRA群では97.9%,SVG群では91.7%であった.術後1年ごとのTMTによる評価ではRA群では99.0%が,SVGでは90.9%が陰性であった.冠動脈造影での開存率はRA群では92.9%で,SVG群では50.0%であった.左回旋枝,対角枝に対するCABGのグラフトとしてRAは有用と考えられた.
  • 上野 隆幸, 湯田 敏行, 松元 仁久, 久 容輔, 坂田 隆造
    2002 年 31 巻 2 号 p. 124-127
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は37歳女性.完全房室ブロックにて左鎖骨下にPM植え込み術の既往があった.今回,左鎖骨下generator交換後に創部感染を併発したため,左鎖骨下generator除去,右鎖骨下に新規PM植え込み術が施行された.術後2ヵ月目頃より発熱,湿性咳が出現し始め,当科に紹介入院した.心臓超音波検査で三尖弁直上のPMリードに高輝度を有し,浮遊する疣贅を認めた.胸部CT検査で両肺野末梢を中心に多発性結節影を認め,一部には空洞形成も認めた.右心系IEからSPEを合併したと考え,開心術を施行した.右房を切開し,新旧PMリードと三尖弁に付着した疣贅をすべて除去し,心筋電極を右室横隔膜面に植え込んだ.疣贅の細菌培養ではmethicillin sensitive Staphylococcus aureus (MSSA)が検出された.術後長期の抗生剤治療を要したが,肺病変も完全治癒した.感染PMの積極的除去と術後抗生剤投与で救命しえた1例であった.
  • 井上 雅博, 大庭 治, 七条 健, 柚木 継二
    2002 年 31 巻 2 号 p. 128-131
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心臓原発の乳頭状弾性線維腫は比較的希な心臓腫瘍である.今回,遠位弓部大動脈瘤術前検索中に,心エコー検査にて偶然発見された希な乳頭状弾性線維腫の1例を経験した.症例は64歳,男性.呼吸困難を主訴に来院.胸部CT検査,大動脈造影にて遠位弓部大動脈瘤と診断された.術前の心エコー検査にて偶然左室流出路心室中隔に径9×5mmの腫瘤を認めた.手術は脳分離体外循環下に弓部大動脈全置換術と腫瘤摘出術を行った.腫瘍の病理診断は乳頭状弾性線維腫であった.術後経過は良好で,術後1年の心エコー検査で腫瘍の再発は認めていない.
  • 矢野 浩己, 小長井 直樹, 前田 光徳, 三坂 昌温, 松丸 泰介, 工藤 龍彦, 石丸 新
    2002 年 31 巻 2 号 p. 132-135
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性.15年来閉塞性肥大型心筋症(HOCM)で,βブロッカーを投与中であった.本年6月より突然の心不全の進行を認め,経食道心エコーにて僧帽弁腱索断裂と診断した.まず内科的治療にて症状を改善させたのちに,開心術とした.僧帽弁前尖と後尖に腱索断裂を認めたため,人工弁置換術を施行し,腱索の病理組織診断は粘液変性であった.術後経過は良好であり,また心エコーでは,左室流出路圧較差は術前55mmHgから術後0mmHgとなり,狭窄は消失した.HOCMに腱索断裂を合併すると僧帽弁逆流による心不全の急性増悪をきたすため,経食道心エコーなどによる早期診断と時期を逸することなく外科的治療を行うことが必要と考えられた.
  • 宮城 直人, 田中 啓之, 村上 美樹子, 恵木 康壮, 長谷川 悟, 砂盛 誠
    2002 年 31 巻 2 号 p. 136-138
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性.大動脈弁狭窄症の経過観察中にα-streptococcusによる感染性心内膜炎を合併,保存的治療では感染および頻回に発生する胸痛発作の制御が困難になり手術目的で当院に転院した.術前検査で,大動脈弁に疣贅の付着および圧較差80mmHgの大動脈弁狭窄,冠動脈造影にて右冠動脈#3に90%,左冠動脈#13に75%の有意狭窄を認めた.手術所見では右冠尖を中心に弁輪部膿瘍を形成しており,術前冠動脈造影は,術式の決定に重要な検査であったものの塞栓症を引き起こす危険性がきわめて高かったことが推察された.感染組織掻破・弁輪形成ののち,AVR(SJM-19mm)+CABG2枝を施行した.術後経過は良好で,約4週で退院となった.
  • 田村 健太郎, 野村 文一, 向井 省吾, 井原 勝彦
    2002 年 31 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性で,径12cm大の巨大遠位弓部大動脈瘤に対し,弓部置換ならびに外科的ステントグラフト内挿術を施行した.ステントグラフト内挿後,大腿動脈の拍動を触知しなかったため,axillo-bifemoral bypassを追加した.術後代謝性アシドーシスが進行し,手術終了6時間後に死亡した.病理所見では上腸間膜動脈塞栓症,大動脈解離を認め,偽腔内にステントグラフトを留置していた.本症例のような合併症を予防するためには,大動脈の形状や性状の評価,シースの材質,デリバリーシステムの改良が必要である.
  • 内藤 祐次, 横山 晋也, 丁 毅文, 高 英成, 宮田 圭悟, 松村 博臣
    2002 年 31 巻 2 号 p. 143-145
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心臓手術後24年目に発見された,偽性上行大動脈瘤,大動脈弁狭窄兼逆流および,感染性膝窩動脈瘤を経験した.症例は34歳男性.10歳時に大動脈弁下狭窄症に対する根治術施行し,術後急性期に感染性心内膜炎と推測される重症感染症を併発している.膝窩動脈瘤の診断ののち,精査にて偽性上行大動脈瘤,大動脈弁狭窄兼逆流を認め,二期的に手術を施行した.膝窩動脈瘤切除,開口部の直接縫合閉鎖,および,偽性上行大動脈瘤切除,欠損部のパッチ形成,大動脈弁置換術を行い良好な結果を得た.
  • 瀬戸 達一郎, 北原 博人, 和田 有子, 中島 恒夫, 古沢 武彦, 高野 環, 中野 博文, 天野 純
    2002 年 31 巻 2 号 p. 146-149
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性.右下肢の腫脹,疼痛を主訴に近医を受診,下肢閉塞性動脈硬化症を疑われ入院した.入院時の心電図で陳旧性心筋梗塞が疑われたため,冠状動脈造影を施行したところ冠動脈3枝病変と診断された.腹部大動脈造影では腎動脈分枝後狭窄を認め,Leriche症候群と診断された.入院後左足尖に壊疽を合併し,治療の緊急性が生じたため,当科紹介,入院となった.Leriche症候群は左足尖の壊疽を合併しており,冠状動脈病変は重症3枝病変であることより一期的手術が必要と考えられた.手術は体外循環中の下肢疎血を考慮し先に下肢の血行再建術を施行し,続いて体外循環心停止下に冠状動脈バイパス術を施行した.足趾のみの壊疽は改善せず,後日同部の切断術を施行したが,術後経過は良好であった.
  • 竹内 一馬, 岩隈 昭夫, 立川 裕, 岩橋 英彦, 財津 龍二, 木村 道生
    2002 年 31 巻 2 号 p. 150-152
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は45歳男性.頻回の脳梗塞を反復している症例に対して,左房内血栓の塞栓を疑い,経食道心エコーを施行したところ,僧帽弁前尖に付着した腫瘤を認めた.腫瘤切除および僧帽弁形成術を施行し約1年8ヵ月後の現在も脳梗塞の再発はなく良好に経過している症例を経験した.病理学には,乳頭状線維弾性腫と診断された.乳頭状線維弾性腫は良性の心臓腫瘍のなかでも希であるといわれるが,合併症として塞栓症があげられる.本例の頻回の脳梗塞の原因としては左房内腫瘍との関連が示唆された.
  • 北村 英樹, 中山 健吾, 北野 忠志
    2002 年 31 巻 2 号 p. 153-155
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性.1991年に右内頸動脈領域脳梗塞,左半身不全麻痺を発症し右浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術を施行された.2000年3月より右手を使用したさいのめまいが出現し,脳血管造影を施行された.右鎖骨下動脈は起始部で完全閉塞しており,右鎖骨下動脈遠位側への血流は右椎骨動脈から逆行性に保たれていた.左内頸動脈にも狭窄を認め高度頭蓋内病変を有する鎖骨下動脈盗血症候群であった.2000年6月1日に冷却マットを使用し軽度低体温下に腋窩-腋窩動脈交叉バイパス術を施行した.術中,術後に合併症はなく,症状は完全に消失した.術後の血管造影ではグラフトを介して右椎骨動脈,右腋窩動脈遠位側が順行性に造影された.高度頭蓋内血管病変を有する鎖骨下動脈盗血症候群に対し,軽度低体温下に腋窩-腋窩動脈交叉バイパスを用いて合併症なく治療できた症例を経験したので報告した.
  • 東田 隆治, 市川 誠一, 新浪 博, 伴 哲雄, 須田 優司, 小笠原 英継, 竹内 靖夫, 大川 真一郎
    2002 年 31 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性で,平成元年(60歳時)に心不全で当院内科に入院した.心房細動,僧帽弁閉鎖不全および三尖弁閉鎖不全の診断で内服治療を開始した.その後も心不全,脳梗塞,肺炎で計13回の入退院をくり返していた.平成12年2月(71歳),心エコー,心臓カテーテル検査の結果,手術適応となり当科紹介となり,同年3月,僧帽弁置換術および三尖弁輪形成術を施行した.僧帽弁は前,後尖とも中等度に肥厚し,腱索も肥厚と癒合が認められた.さらに,前側乳頭筋より僧帽弁前尖の弁基部に直接付着する乳頭筋がみられ,前尖の可動性を制限していた.病理組織所見では,古いリウマチ性と思われる変化に加えて,1ヵ所に横紋筋組織(乳頭筋)が前尖の弁基部へ走行していた.臨床的に乳頭筋前尖接合が僧帽弁閉鎖不全に関与したとする症例報告はこれまで少ないことから,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 宇塚 武司, 深田 穣治, 森下 清文, 川原田 修義, 光島 隆二, 田畑 哲寿, 安倍 十三夫
    2002 年 31 巻 2 号 p. 160-162
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤(AAA)手術におけるアプローチ法として,後腹膜法は開腹に伴う合併症をさけるという利点をもつため,待機手術例では頻繁に用いられている.これに対し,破裂例ではその緊急性から経腹法が一般的である.しかし緊急性が高い症例ではCT検査のみで手術に臨まねばならないことが多く,動脈瘤周囲の血腫や瘤自体の形態により動脈瘤中枢端の情報を得にくいことがある.そのような症例において開腹法で安全に中枢側遮断を行えるかの判断は難しい.また破裂例で開腹した場合,循環不全と機械的傷害により術後腸管傷害を併発しやすい.今回,緊急度の高い,2例の高齢者を含む破裂性AAA3例に対して後腹膜法を用いて手術を行い,良好な結果を得たので報告する.
  • 鈴木 健夫, 井本 浩, 鶴原 由一, 王 幼平, 前田 肇
    2002 年 31 巻 2 号 p. 163-166
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    心臓原発乳頭状弾性線維腫は比較的希な疾患であり,良性腫瘍であるが,重篤な塞栓症を併発する可能性のある重要な疾患である.症例は62歳の女性で,TIAによると思われる突然の一過性左下肢麻痺を初発症状とし,近医で心臓エコー検査により心臓腫瘍と診断された.当科に手術目的で紹介され,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は僧帽弁前尖左房側に付着しており,腫瘍摘出により前尖の半分が欠損となると考え人工弁置換術を施行した.病理診断により乳頭状弾性線維腫と確定診断した.患者は3年半後の現在も再発を認めることなく経過良好である.
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