ソルビン酸は保存料として, もっとも多種の食品に使用されている。その測定法には紫外部吸収法と比色法とがあり, 食品の現場試験には後者が用いられている。
保存料の使用が許可になっている生姜の加工品, すなわち, その酢づけやみそづけ中のソルビン酸を測定した場合, HBAを用いる比色法のみが高い数値を示す。これは生姜中に本来含有される類似呈色反応成分の妨害によるものであり, この成分は食品の透析, 蒸留あるいはエーテル抽出など, いずれの操作においても量的な相違はあるが, ソルビン酸と完全に分別することはむずかしい。
生姜中HBAのによる呈色成分を薄層クロマトグラフィーで調査すると, ソルビン酸と異なる3種のスポットが認められる。なお, 薄層クロマトグラフィーによるソルビン酸の特異検出法として, HBAによる反応を利用することができる。
香辛料のある種のものも, HBAにより呈色する成分を含有するが, これらを使用した食品ならびに上記生姜加工品などにおいては, TBAを用いる比色法によれば問題はない。ただし, 油脂性食品では, その分解生成物がTBAと反応し, ソルビン酸と同様の呈色をすることが報告されているので注意を要する。
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