1) DMAの亜硝酸によるニトロソ化反応は, 醤油, 味噌, ワイン, 酒, 米酢, たん白分解液を5%または7%添加することにより抑制された。抑制効果は, 醤油, 味噌, たん白分解液の場合がもっとも大きく, ほとんどが60~70%の抑制率を示した。この抑制効果は, GC-MS法で確認された。
2) 醤油について抑制効果と醸造工程の関係を検討した。熟成が進むにつれて抑制率が大きくなったが, 火入した場合, 加熱時間にかかわらず抑制率は一定であった。
3) 醤油をDMA-亜硝酸反応に1~4%添加した場合, 添加量に比例して抑制率は大きくなったが, それ以上添加しても抑制率はほぼ一定の値を示した。
4) 醤油についてN-ニトロソ化反応の抑制機構の検討を行なった。
i) 醤油のN-ニトロソ化反応抑制の主要因子は, 相関分析の結果, T.N., F.N. 区分にあることが推定された。さらに醤油の塩基性区分の成分, とくにアミノ酸に強い抑制効果のあることが, アミノ酸分析および, イオン交換による中性, 酸性, 塩基性区分の分画, 限外濾過などの実験により確認された。
ii) 醤油中のアミノ酸によるN-ニトロソ化反応抑制は, 反応時に発生するガスが窒素ガスであることおよび, アミノ酸の減少とオキシ酸の生成が化学量論的に起こることにより, バンスライク反応によるものであることが明らかにされた。
iii) 亜硝酸に対するアミノ酸の反応速度は, DMAとの反応速度に比べはるかに大きかった。
iv) 以上の結果, 醤油中のアミノ酸は, DMAより亜硝酸との反応性が強く, そのためアミノ酸と亜硝酸の反応すなわちバンスライク反応が優先的に進行し, N-ニトロソ化反応の主要物質である亜硝酸が減少し, N-ニトロソ化反応が抑制されると結論した。
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