本研究では, 嚥下補助食品としての市販増粘剤を添加し, テクスチャー特性の硬さを市販ヨーグルト程度にそろえた粘稠な液状食品について, 飲み込み特性と力学的特性の関係について検討した.飲み込み特性は官能評価により, 力学的特性はテクスチャー特性, 流動特性および動的粘弾性により得た.
(1) デンプン系試料はグアガム系試料に比べ, ヨーグルトの経口評価のずり速度に相当する19.15 (s
-1) における粘性率は低く, 降伏応力および貯蔵弾性率が小さく, 損失正接が大であることが認められた.硬さをヨーグルト程度にそろえた粘稠な液状食品では, 本実験の測定範囲において, デンプン系試料の方がグアガム系試料に比べ, より流動しやすいことが示唆された.
(2) 官能評価では, いずれの液状食品においてもグアガム系試料はデンプン系試料に比べ, べたつき, 飲み込みにくく, また口中の残留感が多いことが認められ, グアガム系試料とデンプン系試料で異なる傾向がみられた.
(3) 官能評価値間の関係より, べたつかず, 口中における残留感も少ない粘稠な液状食品が飲み込みやすいことが示唆された.また, 飲み込み特性をあらわす重回帰モデルより, 飲み込みやすさには, べたつき感の影響が大きいことが認められた.
(4) 飲み込み特性と力学的特性の関係より, 飲み込みやすい粘稠な液状食品は, 19.15 (s
-1) における粘性率が低く, 降伏応力および貯蔵弾性率が小さく, 損失正接が大きいことが認められた.また, 飲み込み特性を力学的特性値であらわした重回帰モデルより, 飲み込みやすさには, 貯蔵弾性率の影響が最も大きいことが認められた.
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