日本家政学会誌
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59 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
報文
  • 青野 篤子, 金子 省子
    2008 年 59 巻 3 号 p. 135-142
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,幼稚園・保育園の保護者(父親は少数のため分析から除外された)を対象に子育ての方針や保育環境のあり方についてジェンダーの観点からその意識を探るための調査を行い,今後のジェンダー・フリー保育の指針を得ようとするものである。母親たちは,全体として脱伝統的な女性像・男性像をイメージしており,ジェンダーにとらわれない子育ての方針をもっている。また,身体的な差異に配慮しつつも,幼稚園や保育所の環境はできるだけ男女の区別がない方がよいという意見をもっている。一方,母親がとらえた保育環境には一部ジェンダー・バイアスが存在し,とくに,習慣化・制度化された保育の営みについては,実態が強く認識されているにもかかわらず,一部許容的な態度が示されている。また,母親のジェンダー(・フリー)についての関心は低く,男女共同参画社会における幼稚園・保育園への期待は大きくない。今後,保育者・保護者の一体となったジェンダー(・フリー)についての学習や取り組みが必要である。
  • 杉浦 陽子, 高妻 和哉, 安増 毅, 時光 一郎, 植松 幹雄, 細谷 哲男
    2008 年 59 巻 3 号 p. 143-153
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    The minimal effective dose was evaluated of a mixture (AG) containing depolymerized sodium alginate as non-fermentable dietary fiber and partially hydrolyzed guar gum as fermentable dietary fiber at a weight ratio 3 to 2 to treat defecation and abdominal discomfort in females (n=60) suffering from functional constipation and low frequency of defecation (≤4 days/week). Clinical testing used a single blind-dose escalation regime. The experimental duration was 14 weeks, constituting four consecutive periods: the observation period (2 weeks); and three periods of AG administration as a 200-ml beverage in doses of 0 g (4 weeks), 2.5 g (4 weeks) and 5 g (4 weeks). The frequency of defecation (numbers of days and times) and the fecal weight of the study subjects (n=42) were significantly higher, and the score for abdominal discomfort significantly lower during the 5-g AG administration period than the 0-g period. There were no clinical problems for any of the subjects (n=60) during the administration period. These results suggest that the intake of at least 5 g of AG can increase the defecation frequency and effectively reduce the abdominal discomfort for some people who experience functional constipation.
  • —雑誌「婦人朝日」記事の分析を中心に—
    森 理恵
    2008 年 59 巻 3 号 p. 155-164
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    本報告では、第二次世界大戦期と戦後高度経済成長期にはさまれた時期の日本の衣生活について明らかにしようとするものである。敗戦後の衣服が欠乏した状態から、衣服が自由に手に入るようになるまでの過渡期の状態については、これまでじゅうぶんに明らかにされているとは言えない。そこで、1950年前後の、総合女性月刊誌「婦人朝日」の記事を分析することにより、当時の女性たちがどのようにして衣生活を再建していったかを明らかにした。女性たちはまず、洋裁学校や洋裁の本で洋裁技術を獲得し、古着や着物を更正して、洋服を作っていった。1950年以降は新しい生地が手に入るようになり、衣服の種類が増え、デザインの幅も広まった。一方、女性たちは、敗戦後の生活物資の不足による、家庭内や家庭外での多くの労働のなかで、和服生活から洋服生活へ移行しつつあったため、和服のよさを再認識しながら、独自に動きやすく働きやすいデザインを工夫していたことが明らかになった。
  • 伊東 理恵, 今井 範子
    2008 年 59 巻 3 号 p. 165-179
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,開発から約35~55年を経過した,奈良市学園前の郊外住宅地を対象に,居住者の家族構成や親子の居住形態の現況と新しい動向を明らかにしようとした.その結果を以下にまとめる.1)家族形態は,夫婦のみ世帯が4割,単独世帯が1割と,小規模家族が約半数を占め,世帯主の高齢化が顕著に認められた.2)初期に開発された駅に近い地区においてはすでに居住者の入れ替わりが起こり,居住者の高齢化率は減少に転じている.高齢化率は開発された時期により地区ごとにタイムラグをみながら推移している.このことは,今後駅に近い地区と遠い地区における住宅地更新に影響を及ぼすと考えられる.3)世代同居は17%を占める.平均で400m2を超える広い敷地条件が同居を可能にしている.同居の形態は,母親のみが子世代と同居している場合が半数以上を占めている.親子の年齢関係は,80代以上の高齢の親をかかえる世帯が約半数である.本調査においては娘同居の割合が高い状況であった.4)既婚子との居住形態は,同居が3割,別居が7割と同居が予想よりも多かった.隣居,徒歩5分(近居)をあわせると1割存在し,同居,隣居,近居は全体の3.5割を占めることが大きな特徴である.5)永住意思は高齢層ほど強いのに対し,50代以下では,田園居住,都心居住,他の郊外住宅地への住み替えなど,高齢期の居住志向は多様である.6)子への居住を前提とする資産継承はさほど考えられていない.
  • 石渡 瑞枝, 鈴木 佐代, 沖田 富美子
    2008 年 59 巻 3 号 p. 181-192
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    本研究はストック活用型社会における住宅計画に資する基礎的知見を得ることを目的とし、分譲後30年以上が経過した横須賀市M団地を対象にアンケート調査を実施した。そして住宅規模別に世帯構成の変化と住宅改善実施状況を分析し、さらに居住者の現住宅広さに対する満足度に影響する要因について検討した。なお住宅規模は、世帯入居時の延床面積を基準にAタイプ(100 m2未満)、Bタイプ(100~110m2)、Cタイプ(110 m2以上)の3タイプに分類した。その結果入居後二世帯同居世帯となった事例数が、住宅規模タイプによりそれぞれ異なることが明らかとなった。また住宅改善実施状況との関連では、改善の実施内容(建替え、増改築、設備更新)や実施時期、建替えにより増加した延床面積の3項目に、住宅規模タイプによる差異が見出された。さらにM団地全体では入居後10~29年目(耐用年数の半分にも満たない時期)に全体の3割が建替えを実施しており、既存ストックが有効に活用されていない実態が示された。現住宅広さに対する満足度は、建替えや増改築を実施した世帯と、現在の世帯主年齢65歳未満世帯において高くなる。また世帯員一人あたりの延床面積との関連性も強く、延床面積が増加するほど上昇するが、60 m2/人以上になると下降傾向を示し、80 m2/人以上では顕著に低下することなどが見出された。
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