日本家政学会誌
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50 巻, 2 号
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  • 谷口 彩子
    1999 年 50 巻 2 号 p. 111-120
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    『家政要旨後編』の原典解明および原典と訳書との比較検討の結果, 次の点が解明された.
    『家政要旨後編』の原典は, Andrew Combe : The Management of Infancy, D. Appleton and Co., New York (1875) および Thomas Bull : Hints to Mothers, Longmans, Green, and Co., London (1876) であった.なお本研究において入手できた原書資料は, それぞれ1871年版と1875年版である.
    コム『子女教養論』は, 読者対象として子どもを持つ親ならびに若い医者の入門書として執筆された.同書刊行の背景に, 乳幼児死亡率の高さがある.コムは乳幼児死亡率を改善するための手だてとして, 家庭において, その母親に予防手段としての生理学的知識を提供することによって, 改善を図ろうと試みた.
    コムの『子女教養論』は, 子どもが生まれる前から, 両親の遺伝的性質が子どもに及ぼす影響, 妊娠期の母親の生活様式が子どもに影響を及ぼすことに関する内容から始まって, 以後, 子どもの発達過程に沿って医学的見地に立つ内容が記述されている点に特色がある.とくに, 子どもの精神構造や幼児期における道徳教育の重要性など, 子どもの教育問題にまで踏み込んだ内容になっている.
    一方『家政要旨後編』のもう一つの原典であるブル『母親の心得』の刊行の意図は, 女性に対して妊娠・出産に関する知識を提供することにある.
    このように, 永峯秀樹纂訳『家政要旨後編』の二つの原典は, いずれもイギリスの医師によって執筆されたものであった.19世紀は, 医学がめざましい進歩を遂げた時代であった.この2冊の著作の特色は, そうした発達した医学の成果を家庭生活へと応用を試みている点にある.生理学・衛生学の知識を家庭生活に応用しようとする試みは, 19世紀の家政書に影響を及ぼしている.とくに, アメリカ家政学の先駆者と称されるビーチャーの代表的家政書には, コムの影響を受けて, 生理学・衛生学の科学的知識が導入されている.このような観点に基づく医学的内容を基礎とする翻訳育児書は, 明治初期に『家政要旨後編』以外にもわが国で刊行されている.『家政要旨後編』の二つの原書の一つブル『母親の心得』 (原書) は, 大井鎌吉訳『母親の教』として明治14 (1881) 年に丸善から全訳刊行されている.イギリスで刊行された家庭医学書が, アメリカの家政書のみならず, わが国においても翻訳書によって紹介されていた点には着目される.今後, こうしてわが国に紹介された家庭医学書的内容を持つ育児書が, わが国の家政学・家政教育の発達過程のなかで, どのような役割を果たしていくのかについて, アメリカ家政学の発達過程との比較などを通して, 研究を深めていく必要がある.
  • 東 珠実, 尾島 恭子, 荒深 美和子, 山口 久子
    1999 年 50 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本報告は, 生活経営における生涯設計のあり方を追究するという立場から, そこにみられるリスクに対する認識の実態を明らかにしようとするものである.すなわち, 生涯の短期的・中期的・長期的なイベントについて, 人的・対人的・時間的・空間的・経済的な資源に損害が発生する危険性の全体をリスクとしてとらえた上で, リスク認識の大きさを決定づけている世帯属性が何であるかを把握するとともに, 個人・家族のおかれた状況の違いが, 生涯のリスクに対する認識にどのような影響を及ぼしているかについて明確にすることを目的とした.
    分析の結果, 生涯のイベントの全体において, 世帯のリスク認識に最も大きな影響を及ぼしているのは, 所得水準であり, 所得が低い世帯ほどリスク認識が高く, 所得が高い世帯ほどリスク認識が低いことが明らかとなった.所得水準に次いで, 生涯のリスク認識のほぼ全体にわたって大きな影響を及ぼしているのは, 生活の価値観であった.総じて安定重視の世帯ではリスク認識が高く, 満足重視の世帯ではリスク認識が低いことが理解された.このほかでは, 世帯主の年齢がリスク認識に対して相対的に大きい影響力を示しており, 総じて短期的な不測のイベントについては世帯主年齢の高い世帯 (50歳代) でリスク認識が低く, 中長期的な予測可能なイベントについては若い世帯でリスク認識が低いという傾向がみられた.また, 世帯主の職業の違いは火災や自然災害, 自家用車や高級耐久消費財購入に伴うリスク認識に対して, 住宅保有状況の違いは転職や失職, 定年退職と老後に伴うリスク認識に対して, 有力な説明要因となることがわかった.
    これらの研究成果をとおして, 個人・家族が, 自らのおかれた状況に応じて, ファミリーリスクに対する認識を高めていこうとする場合の具体的な課題が明確となり, さらに諸課題の全体的把握によって, 今後の生活経営論やリスクマネジメント教育のより効果的な展開に資することを期待するものである.
    なお, ファミリーリスクに対する「準備」についても, 同様の視点に基づく分析を実施しているので, 別途, 報告をする予定である.
  • 畦 五月, 三好 正満
    1999 年 50 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    (1) 5分間98~100℃で茄でたカリフラワーから, DEAEセルロース, セファロースS-1000を用いたクロマトグラフィーによりレクチンを精製した.
    (2) 茄でカリフラワー100gから5.4mgのレクチンが得られた.
    (3) 精製レクチンのアミノ酸組成は, グリシン, アラニン, グルタミン酸の3種の含量が高く, 含硫アミノ酸含量は低含量であった.
    (4) ラムノースを標準とした本レクチンの糖含量は, 67.5%であり, 中性・酸性糖から構成されていた.アミノ糖は含有されていなかった.
    (5) 精製レクチンの分子量は, 液体クロマトグラフィーの結果, 非常に高分子の740万であった.
    (6) 精製レクチンは, 熱耐性, 酵素耐性ともに大であった.
    (7) フェツイン, チオグロブリンの2種類の糖タンパク質は, カリフラワーから精製したレクチンのHA活性を阻害した.
  • 寺沢 なお子, 松浦 民恵
    1999 年 50 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    上白糖および市販の新甘味料を用いてりんごジャムを調製し, テクスチャー, 吸湿性, 再結晶性, 官能評価等について調べた.
    (1) テクスチャー (硬さ, 付着性, 粘着力, 凝集性, 弾力性) においては試料C (オリゴのおかげEX) が最もA (上白糖) に近い値を示した.
    (2) pHはいずれの試料でも3.3~3.6付近であり, 大差なかった.
    (3) 吸湿性が最も高かった試料はF (シュガット), 最も低かった試料はH (エリスリム) であったが, 試料間で大差なかった.またいずれの試料でも微生物の生育は見られなかった.
    (4) 試料H (エリスリム) は調製直後から再結晶が始まったが, その他の試料では5℃保存, 20℃保存共に30日後に再結晶は見られなかった.
    (5) 官能検査では, 総合評価で試料間に有意差はみられなかった.
    以上の結果より, 甘味料H (エリスリム) は単独ではジャムへの添加は不適当であり, またその他の新甘味料を用いたジャムでは物性的にはC (オリゴのおかげEX) が最も優れるが, 吸湿性, 再結晶性, 官能検査ではいずれも上白糖使用のものと大差ないことが示された.
  • 貝田 さおり, 玉川 雅章, 渋川 祥子
    1999 年 50 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    牛肉の最適加熱時間を決定するために, 厚さ 20 mmの牛肉を 120~220℃ の範囲で熱板焼きする場合の熱板温度の違いによる影響を, 肉の中心温度を 55, 70, 85℃ の 3 段階に変えて検討するとともに, 各加熱温度における時間の算出方法について検討した.その結果は次のようにまとめられる.
    (1) 熱板温度の違いが影響するのは表面の焼き色であり, 硬さや厚さは肉の中心部を何度まで加熱するかによって決まることが明らかになった.
    (2) 生の肉の熱物性値から, 非定常の熱伝導の解だけを利用する方法で加熱時間の推定を行うことができた.
    (3) 厚さ 20mm の牛肉を熱板で焼く際の最適な加熱条件として, 程よく焼き色がつく熱板温度と加熱時間を提示することができた.
  • 畑江 敬子, 中谷 圭子, 福留 奈美, 島田 淳子
    1999 年 50 巻 2 号 p. 155-162
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    旧本人とフランス人の食物に対するおいしさの評価基準の違いを客観的に表すために, 前報のアンケートの結果に基づいて官能検査を行った.パネルは野菜 4 種, パスタ 2 種, 焼き物 3 種, 飯 4 種について, 加熱時間を 5~6 段階に変えた試料の好ましさをそれぞれ評価した.
    日本人パネルは野菜の緑色を重視し, 加熱時間の短い硬めのものを好んだ.フランス人パネルは加熱時間の長い軟らかめの野菜を好む傾向にあった.焼き物の焦げ色の強いものをフランス人パネルは好む傾向にあった.飯の色とテクスチャーに対する好みは, 日本人パネルとフランス人パネルでは全く異なった.いずれの場合も日本人パネルの好みは特定の試料に集中し, フランス人パネルの好みは広範囲に分布した.
  • 村元 美代, 大森 正司, 加藤 博通
    1999 年 50 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では, 経口投与された茶カテキンが, 他の食品成分とどのような相互作用をしながら腸管に至るかを明らかにすることを目的に, モデル系での実験を試みた.カテキンと各種食品成分混合溶液を遠心分離後, その上清液についてカテキン定量を行ったところ, その値の低いのはタンパク質系のミルクカゼインと牛血アルブミンであった.また, この上清液についてのHPLCでのカテキンの分別定量を行ったところ, コーンスターチ, ミルクカゼイン, 牛血アルブミン1%において (-) -エピカテキンガレート (ECg), (-) -エピガロカテキンガレート (EGCg) の減少が見られた.UVスペクトル測定では, コーンスターチ, ミルクカゼインにおいてη電子の励起によると思われる短波長シフトと吸光度の減少, 3%アルブミンではπ電子の励起によると思われる長波長シフトと吸光度の増加が認められた.
  • 日比 喜子
    1999 年 50 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    老化米飯を加熱したときの性状変化について, 老化澱粉の糊化という観点から基礎知見を得るため, 糊化度および粘度測定を行った.
    老化米飯の糊化度は保存1日後で非常に低下し, 初発粘度は糊化度が高いと, 高い傾向にあった.
    老化米飯では生米では見られなかった低温側にピークが出現した.そして, 老化うるち米飯では生米で見られた高温側のピークも同時に見られたが, 老化もち米飯では低温側のピークのみであった.ピーク粘度は, 高温側, 低温側いずれも保存6日後までは上昇し, 極大値を示した後, 低下した.
  • 宇都宮 由佳, 益本 仁雄
    1999 年 50 巻 2 号 p. 175-182
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    This paper is an analysis of research concerning the diffusion of durable consumer goods in the village of Angkhai in northern Thailand. The questionnaire surveys were held twice at the pro-electrification (Oct. 1996) and post-electrification (Oct. 1997) for a comparison of diffusion. In addition the surveys were also held in the neighboring village of Omlong (electrified) at the same point over a specific period of time for the purpose of comparison between two villages.
    The diffusion of durable consumer goods of Angkhai is noticeably grown after the the electrification. It is higher than in Omlong, and obviously influenced by the electrification. A gas stove and sewing machine, though they are not concerned with the electric power supply to the village, have shown a high growth of diffusion. It might be an indication of villagers' intentions to acquire a decent life with the opportunity of present electrification.
  • 滋賀県, 京浜地区, 阪神地区, 長崎県の場合
    日比 喜子, 安達 町子, 前田 昭子, 早川 史子
    1999 年 50 巻 2 号 p. 183-192
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    滋賀県, 京浜地区, 阪神地区および長崎県の4地域において, それぞれを主な生育地とする女子学生 (18~22歳) を対象に茶, 特に紅茶の嗜好に関するアンケート調査を行い, 次のような興味ある結果が得られた.
    (1) 緑茶と紅茶の嗜好の比較では, 京浜地区と阪神地区では緑茶より紅茶の方が好まれるが, 滋賀県と長崎県では緑茶および紅茶の嗜好に有意差がなかった.
    (2) 緑茶あるいは紅茶を好む理由については, 地域間に有意差は認められず, いずれの地域においても緑茶あるいは紅茶を好む理由は圧倒的にそれぞれの “味” であり, “色” をあげた者はごくわずかであった.また, 茶を好む理由として “香り” をあげた割合は, 紅茶嗜好者の方が緑茶嗜好者よりも高かった.
    (3) 女子学生の紅茶飲用頻度は概して低いが, 飲用頻度の平均値は茶葉から抽出する紅茶よりも缶入り紅茶において, また, 緑茶嗜好者よりも紅茶嗜好者において高かった.しかし, 最も好きな紅茶は, 全体的には, 緑茶・紅茶の嗜好にかかわらず, 茶葉から抽出して飲む紅茶であった.
    (4) 缶入り紅茶の中では, いずれの地域においてもミルク紅茶が好まれるが, 特に滋賀県, 長崎県で非常に好まれていた.茶葉から抽出する紅茶の中では, いずれの地域でも紅茶液をそのまま飲む, 砂糖だけ入れて飲む, および砂糖とミルクを入れて飲む紅茶が好まれるが, 特に砂糖とミルクを入れて飲む紅茶は阪神地区で非常に好まれていた.
    (5) 緑茶嗜好者よりも紅茶嗜好者が多い京浜地区と阪神地区の紅茶嗜好者について, 前者では缶入りのレモン紅茶およびミルク紅茶を好み, 後者では茶葉から抽出して砂糖・レモンを入れる紅茶, および砂糖・ミルクを入れる紅茶を好む.
  • 新田 美和
    1999 年 50 巻 2 号 p. 193-194
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 太田 惠子
    1999 年 50 巻 2 号 p. 195-196
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 新居 理絵
    1999 年 50 巻 2 号 p. 197-198
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 西村 一朗
    1999 年 50 巻 2 号 p. 199-200
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 村上 夫光子
    1999 年 50 巻 2 号 p. 201-203
    発行日: 1999/02/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
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