脳卒中
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44 巻, 1 号
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原著
  • 荻野 達也, 上山 憲司, 進藤 孝一郎, 立田 泰之, 櫻井 卓, 山口 陽平, 大熊 理弘, 遠藤 英樹, 麓 健太朗, 渡部 寿一, ...
    2022 年 44 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

    【背景および目的】血栓回収療法(MT)において,静注rt-PA併用の安全性への影響は必ずしも明確ではない.静注血栓溶解療法適正治療指針の適応外や慎重投与に相当し,MT単独で治療した症例の成績を明らかにする.【方法】2018,2019年に単施設で実施した前方循環主幹動脈閉塞に対する MT 102例について後ろ向きに検討した.rt-PA静注併用群と非併用群の2群に分け比較した.【結果】患者背景に2群間で有意差を認めなかった.有効再開通,出血性合併症に2群間で有意差を認めなかった.転帰良好(90日後 mRS 0–2)は併用群 64%,非併用群 51%で有意差は認めなかった.【結論】出血性合併症が懸念され,MT単独で治療した成績は,併用群と比較し有意に劣る結果ではなかった.併用が懸念される症例においても,MTによる有効再開通が転帰良好につながり得ると考えられた.

  • 山路 千明, 前島 伸一郎, 永井 将太, 渡邉 誠, 稲本 陽子, 園田 茂
    2022 年 44 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/08/13
    ジャーナル フリー

    【背景および目的】回復期リハビリテーション病棟に入院した左被殻出血の発症時CT画像所見から,血腫型による失語症重症度の特徴を見出すことを目的とした.【方法】対象者92名の診療録から,年齢,性別,発症から入院までの期間,発症時CT画像所見における血腫型と血腫量,神経徴候,言語機能を後方視的に調査し,血腫型(I~V型に分類)とSLTA総合評価尺度および下位項目である書字・発話・言語理解との関連性を検討した.【結果】失語症の重症度について,I型は軽度,IV・V型は重度となる傾向があったが,II・III型に明らかな傾向はなかった.下位項目をみると,I型では書字のみ低下,IV型は発話と書字での著明な低下,V型は全ての項目で著明な低下を示した.【結論】血腫型における失語症重症度や下位言語モダリティには血腫量の影響が大きく,血腫の進展による白質損傷が失語症重症度に関与する可能性が示唆された.

症例報告
  • 藤川 征也, 和田 始, 市原 寛大, 高野 千恵, 佐藤 広崇, 齊藤 仁十, 安栄 良悟
    2022 年 44 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/12
    ジャーナル フリー

    動脈瘤治療にflow diverter(FD)が広く用いられるようになったが,遅発性動脈瘤破裂が稀に発生する.左内頸動脈瘤に対しFDを留置した69歳の女性が,治療3週間後に動脈瘤破裂による内頸動脈海綿静脈洞瘻を発症した.経静脈的治療を施行したが,マイクロカテーテルを瘤内へ誘導できず部分塞栓に終わった.この治療から1カ月後に動眼神経麻痺が出現したため,経静脈的治療を再度試みた.動脈血流をバルーンカテーテルで減弱させることで,3D rotation angiography(3DRA)から multiplanar reconstruction(MPR)画像を作成して動静脈瘻の詳細な構造を把握し,マイクロカテーテルを経静脈的に瘤内へ誘導し,治療を完遂できた.FD留置後の内頸動脈海綿静脈洞瘻は治療困難であるが,3DRAのMPR画像は経静脈的治療を行う上で有用な情報であることが示唆された.

  • 滝川 浩平, 横沢 路子, 真貝 勇斗, 鹿毛 淳史, 土井尻 遼介, 高橋 賢, 木村 尚人, 菊池 貴彦, 菅原 孝行
    2022 年 44 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/12
    ジャーナル フリー

    一卵性双生児双方に前大脳動脈遠位部脳動脈瘤が指摘された症例を経験した.症例は47歳男性の一卵性双生児,一方は破裂発症で血管内治療を施行した.もう一方も,その後の精査で同様に前大脳動脈遠位部瘤を含む多発脳動脈瘤を認め,脳動脈瘤頚部クリッピングを施行した.過去の報告と本症例検討から,一卵性双生児に発生する脳動脈瘤の傾向として,女性に多く,若年発症であり,多発例の割合が高かった.そして,双子間で同じ部位あるいは線対称な位置に動脈瘤を持つ傾向があった.さらに,破裂率が高く,一方が破裂してから他方が破裂するまでの期間が短いこともわかった.一卵性双生児の一方に脳動脈瘤が指摘された場合,他方のスクリーニングおよび治療を積極的に考慮する必要性が示唆された.

  • 矢野 鉄人, 前田 有貴子, 石倉 克祥, 福嶋 直弥, 秋山 茂雄, 佐藤 元彦, 古知 龍三郎, 野下 展生, 高橋 俊栄, 日野 秀嗣
    2022 年 44 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

    症例は69歳男性.夜間に突然の頭痛を自覚し,翌朝に構音障害,左上下肢の麻痺が出現し当院を受診した.頭部MRI検査で両側小脳,延髄左外側に急性期脳梗塞がみられた.第2病日に右不全片麻痺も出現し,四肢麻痺に進行.頸髄MRI検査でC2からC5レベルの脊髄内にT2高信号がみられ,頸髄梗塞と診断した.脳血管造影検査(DSA)で,左鎖骨下動脈起始部から左椎骨動脈起始部に高度狭窄がみられ,右椎骨動脈は正常に造影されたが,前脊髄動脈の描出はなかった.第30病日に再度施行したDSAで左鎖骨下動脈の描出は改善した.鎖骨下動脈病変が動脈解離であったことが想定され,追加で施行した鎖骨下動脈エコーで血管内にflap構造を確認し,特発性左鎖骨下動脈解離と診断した.鎖骨下動脈の高度狭窄病変は動脈解離に起因することがある.画像検査で血管の形状変化を追うことが重要であり,診断に血管エコーが有用であった.

  • 中瀬 孝, 善本 晴子, 渋谷 聡, 平山 雅啓, 田中 聡, 佐藤 光, 石田 敦士, 加藤 正高, 白水 秀樹, 朝来野 佳三, 松尾 ...
    2022 年 44 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

    症例は28歳女性.一過性の複視が出現し左視床梗塞を認めた.脳血管造影検査にて右P1から分岐する紡錘状に拡張する血管を確認した.Artery of Percheron(AOP)解離との診断は難しく,虚血発症であり,再発予防としてアスピリンの投与を開始して経過観察していた.しかし,投与開始1カ月後にくも膜下出血を発症し,アスピリンがAOP解離からの出血を惹起した可能性を考えた.本症例は,短期間に虚血およびくも膜下出血を来したこと,また,紡錘状拡張の退縮傾向を認めたことから,その病態はAOPの解離性病変であることが強く示唆された.アスピリンによりくも膜下出血が惹起されたと考えられ,痛恨の症例であったが,極めて稀な症例であり,文献的考察を加え報告する.

  • 傳 和眞, 今井 啓輔, 徳田 直輝, 山本 敦史, 猪奥 徹也, 上田 凌大, 濱中 正嗣
    2022 年 44 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

    特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の既往がある79歳女性.進行性の無症候性右頸動脈狭窄症に対して頸動脈ステント留置術(CAS)を実施した.術前,狭窄病変のプラークは頸動脈エコーにて高輝度であり,MRIプラークイメージングにてT1WI等信号を呈していた.術後,新たな症候は出現しなかったが,翌日の頭部MRI拡散強調画像にて右大脳半球の多発高信号域,頸動脈エコーにてステントのストラット破損を伴わないステント内の高輝度突出物を認めた.1週間,抗凝固療法を追加したが,三次元回転アンギオグラフィーと血管内超音波にて突出物は残存しており,ステント留置の追加にて消失した.高輝度エコープラークでは硬い成分が示唆され,CAS後にストラット破損なしの内腔突出物を生じにくい.本例における高輝度エコープラークの形成と,CAS後の脳塞栓症とステント内突出物の合併には,ITPが関与した可能性が示唆された.

  • 松永 拓, 土井尻 遼介, 園田 卓司, 滝川 浩平, 横沢 路子, 高橋 賢, 菊池 貴彦, 菅原 孝行, 木村 尚人
    2022 年 44 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

    79歳女性.急性大動脈解離の術後に失語,左共同偏視,右片麻痺を発症し,NIHSS 32点であった.最終未発症時刻から2時間30分であり,ASPECTS 10点,頭部CTAで左中大脳動脈M1近位部閉塞を認め,血栓回収療法の適応と判断した.大動脈解離の合併があることから,大腿動脈経由,上腕動脈経由は不可能であると判断し,エコーガイド下に左総頸動脈直接穿刺の方針とした.TICI 3の再開通を得た.気管内挿管した後にシース抜去,人工呼吸器管理とした.術後は合併症なく経過し,第3病日に抜管となった.血栓回収療法時のアクセスルート困難時には総頸動脈直接穿刺を考慮すべきであり,総頸動脈解離合併症例に対しては,エコーガイド下で安全に穿刺が可能であった.また,止血後は皮下血腫による気道圧迫を考慮し,気管内挿管,人工呼吸器管理が必要と考える.

  • 吉村 基, 西村 中, 有村 公一, 下川 能史, 鈴木 諭, 溝口 昌弘, 岩城 徹
    2022 年 44 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/08/13
    ジャーナル フリー

    症例は42歳の男性.23年前に左総頸動脈と左鎖骨下動脈の閉塞を伴う高安動脈炎と診断されたが,内服加療により血管炎の活動性は落ち着いていた.経過中,腎性高血圧の指摘があり,降圧剤が処方された.今回,突然の頭痛を主訴に前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血を発症した.各種治療を施すも,再破裂や脳血管攣縮,脳梗塞を合併し死亡した.剖検にて前交通動脈に複数の囊状動脈瘤を認めたが,組織学的に血管炎や粥状硬化および壁の解離を認めなかった.高安動脈炎により左総頸動脈は外頸動脈分岐部直前まで閉塞していたが,内頸動脈は開存していた.高安動脈炎では,脳梗塞,一過性脳虚血発作の合併頻度が高いが,動脈瘤形成やくも膜下出血に関する報告は少ない.抗血小板剤の使用も推奨される本疾患において,血行力学的機序によると考えられる脳動脈瘤破裂のリスクや寛解期における閉塞血管の血行再建術についても考慮する必要があると思われる.

  • 稲野 理賀, 合田 亮平, 荻野 英治, 西 良輔, 前田 匡輝, 吉岡 奈央, 堀川 文彦, 村井 望
    2022 年 44 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/08/13
    ジャーナル フリー

    76歳男性.2年前に右多発性脳梗塞で発症後,右内頸動脈狭窄症に対して右内頸動脈ステント留置術を施行された.経過中,再狭窄を3度繰り返したため,4回目の経皮的血管拡張術の際に再度右内頸動脈ステント留置術を施行したところ,術後軽度不穏となり,けいれん発作を認めた.CT上新たな出血は認めず,局所混合血酸素飽和度の左右比が逆転していたため,過灌流症候群と診断した.全身麻酔管理のもと,抗てんかん薬投与および厳重な血圧管理を行った.経過中,急性呼吸窮迫症候群を併発したが,術後14日目には抜管し,リハビリテーションを継続した.回復期リハビリテーション病棟を経て,術後88日目,独歩自宅退院となった.

  • 藤原 聡, 福本 真也, 渡部 真志, 日下部 公資, 麻生 健伍, 篠原 朋生, 市川 晴久, 尾上 信二, 岩田 真治, 大上 史朗
    2022 年 44 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    【目的】血栓回収療法で回収した血栓の病理組織診断にて,肺癌の腫瘍塞栓と診断された稀な1例を報告する.【症例】肺癌で当院に通院中の74歳男性.突然の失語と右完全片麻痺で発症し救急搬送された.MRIにて,左MCA領域,両側小脳・後頭葉等にDWIで多発性の小さな高信号域を認め,MRAで左MCA(M2)の閉塞を認めた.rt-PAは肺癌の出血リスクのため使用せず,血栓回収療法を単独で施行し,stent retrieverにてTICI 2bの再開通が得られた.術後,回収した血栓の病理診断にて,肺扁平上皮癌の腫瘍塞栓と診断された.術後1週間で神経学的所見はNIHSS 1まで改善していたが,原疾患の進行にて第27病日で死亡した.【結語】脳塞栓症の原因として,腫瘍塞栓が稀に存在している.担癌患者の主幹動脈閉塞症例に対し,血栓回収療法を施行した場合には,回収した血栓の病理組織学的評価を行う必要がある.

  • 藤原 聡, 近藤 総一, 福本 真也, 麻生 健伍, 日下部 公資, 市川 晴久, 尾上 信二, 岩田 真治, 渡部 真志, 岡本 憲省, ...
    2022 年 44 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    【目的】妊婦の脳梗塞に対する血栓溶解療法や血栓回収療法による急性期再開通療法の有効性・安全性については,各種ガイドラインにもその記載はない.今回,妊婦の左中大脳動脈閉塞症に対し,急性期再開通療法を施行した症例を経験したので報告する.【症例】27歳,妊娠10週の女性.全失語および右片麻痺にて発症し,左中大脳動脈閉塞症と診断した.発症後早期にrt-PA投与下で血栓回収療法を行い,完全再開通が得られた.術後の精査にて,卵円孔開存による奇異性塞栓が原因と考えられた.その後,抗凝固療法を継続し,妊娠38週3日で経腟分娩にて正常児を出産,脳梗塞の再発も認めていない.【結語】妊婦への血栓回収療法は比較的安全に施行することができるが,胎児への影響を十分考慮して行う必要がある.

  • 合田 亮平, 村井 望, 堀川 文彦, 荻野 英治, 稲野 理賀, 吉岡 奈央, 前田 匡輝, 西 良輔
    2022 年 44 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は,左半身麻痺を発症した36歳女性.搬送時のNIHSSは13点であった.頭部MRIで右中大脳動脈の閉塞を認めた.心エコーで僧帽弁に疣贅を認めたため,感染性心内膜炎(infective endocarditis: IE)による中大脳動脈閉塞症と診断し,経皮的血栓回収術(mechanical thrombectomy: MTB)を行った.術中extravasationを起こしたが,最終的にthrombolysis in cerebral infarction grade 3(TICI 3)の完全再開通が確認できた.回収した白色の塞栓子を病理検査に提出した.術後,僧帽弁閉鎖不全による急性心不全,心原性および敗血症性ショックを併発した.第19病日に,心臓血管外科により開胸手術が施行され,リハビリテーションを経て,mRS 0で自宅退院となった.IEの早期診断・治療,MTB,院内連携が転帰改善の要因であったと考えられた.

  • 深沢 良輔, 小島 雄太, 西村 優佑, 武澤 秀理, 櫻庭 均, 藤井 明弘
    2022 年 44 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/25
    [早期公開] 公開日: 2021/08/30
    ジャーナル フリー

    35 歳男性.幼少期から両側大腿に皮疹があり,発汗障害,四肢の疼痛がみられた.また,これらの症状は運動や暑い気候で誘発された.2012年4月,急性発症の右顔面・上下肢麻痺,構音障害を呈し,頭部MRIで左レンズ核から放線冠にかけて急性期梗塞を認めた.幼少期の病歴と若年性脳梗塞であること,αガラクトシダーゼ活性低値,αガラクトシダーゼ遺伝子解析での2塩基の欠失からファブリー病(古典型)と診断し,アガルシダーゼαによる加療を開始した.治療後,四肢の疼痛や発汗障害は改善し,約8年半の間,脳梗塞の再発なく経過している.早期の酵素補充療法開始が,約8年半と長期にわたるファブリー病の脳血管障害再発予防に寄与したものと考えられた.

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