脳卒中
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38 巻, 1 号
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原著
  • 傳 和眞, 今井 啓輔, 濱中 正嗣, 山田 丈弘, 山﨑 英一, 山本 敦史, 中村 拓真, 竹上 徹郎, 梅澤 邦彦, 池田 栄人
    2016 年 38 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー
    要旨:【背景および目的】Penumbra-MAX 導入後のPenumbra System(PS)による機械的血栓除去術の有用性を明らかにする.【方法】PS で血栓除去術を施行した74 例を対象とし,Penumbra MAX を用いた例(MAX 群)と従来のPS を用いた例(CPS)群に分類.両群間で背景因子,手技内容,成績を比較した.【結果】MAX 群/CPS 群で,平均年齢は76/72 歳,平均術前NIHSS は20/18 点(p<0.05),再開通率(TICI2b-3)は88/71%,平均手術時間は67/114 分(p<0.01),単独手技率は66/36%(p<0.05),症候性頭蓋内出血は0/2%,予後良好例(3 カ月後mRS≤2)は41/43%であった.【結論】Penumbra MAX 導入後のPS による機械的血栓除去術は予後改善効果を示せなかったが,再開通率の上昇と手術時間の短縮に寄与しており有用といえる.
  • 江﨑 孝徳, 野々村 諭香, 白石 哲也, 村川 孝次, 安倍 基幸
    2016 年 38 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】回復期リハビリテーション病棟への入院を目的とした脳血管障害患者での深部静脈血栓症(以下DVT)の頻度,特徴,治療を検討することを目的とした.【方法】対象は2011 年1 月から2012 年12 月までの間に入院した237 例で,全例急性期病院から当院へ転院した症例とした.DVTの診断は転院時に血漿D‒ダイマー測定と,下肢静脈エコー検査で行った.【結果】DVT は28 例(11.8%)に認め,そのうち前医で診断されていたのは4 例のみであった.2006 年の当院での調査時の併発率は8.8%であったので,DVT の診断は増加していた.DVT は,下肢の麻痺が重度でADL の低い患者の麻痺側に有意に認めた.当院転院後に発見されたDVT 治療は,ほとんどがワルファリンの投与で十分であったが,1 名は肺血栓塞栓症が判明し下大静脈フィルターを留置した.【結論】脳血管障害患者のDVT 頻度は高く,早期に診断されるべきである.
  • 渡邉 誠, 前島 伸一郎, 奥山 夕子, 佐々木 祥, 石橋 美奈, 園田 茂
    2016 年 38 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】回復期リハビリテーションを実施した脳卒中患者において,言語性・非言語性知能がADL 改善に及ぼす影響を検討した.【方法】回復期リハビリを施行した脳卒中患者146 名に対し,RCPM(Raven’s Colored Progressive Matrices)とMMSE(Mini-Mental State Examination)を施行し,ADL 改善に与える影響について検討した.【結果】MMSE のみの低下(M 群)は,左半球損傷で言語障害例に多く,RCPM のみ低下(R 群)では右半球損傷で視空間認知障害例に多かった.M 群は両者で低下のないもの(N 群)とADL 改善に差はなかった.R 群はN 群より在院日数が長く,退院時ADL が低かった.両者共に低下したもの(MR 群)は他の群に比べ,退院時ADL が低く,ADL 改善効率が低かった.また,MR 群はN 群より在院日数が長かった.【結論】MMSE は言語性,RCPM は非言語性知能を反映しており,両者の成績は退院時ADL やADL の改善に影響を与えることが示唆された.
  • 竹中 朋文, 芝野 克彦, 梅垣 昌士, 佐々木 学, 鶴薗 浩一郎, 松本 勝美
    2016 年 38 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー
    要旨:急性期脳梗塞への治療は,血管内治療併用や閉塞血管別の治療方針など未確定な部分が多い.我々は2005 年4 月~2014 年10 月の間に急性期脳梗塞にてrt-PA 静注療法および血管内治療,あるいはその双方を施行した急性期脳梗塞患者191 例に対し,A 群(rt-PA 静注),B 群(ウロキナーゼ動注),C 群(機械的血栓除去),D 群(failed rt-PA 患者に血管内治療を追加)に分別し遡及的に検討した.治療開始までの時間が短いA,D 群は予後良好な傾向を認め,内頸動脈閉塞患者ではD 群で予後良好,C 群では不良傾向を認めた.今回の検討において,最大の予後改善因子は早期再開通と考えた.また,rt-PA 静注適応の内頸動脈閉塞患者においても血管内治療併用による予後改善の可能性が示唆された.急性期脳梗塞においては,再開通までの時間を可及的に短縮する必要があると思われる.
  • 中川 実, 吉本 祐介, 河村 茂雄, 藤原 賢次郎
    2016 年 38 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー
    要旨:今回われわれは混合型出血の治療成績を検討したので報告する.対象は当院で経験した連続28 例の混合型出血で,男性18 例,女性10 例,年齢は41~97 歳,平均70.0 歳であった.治療方針は基本的に保存的に加療し,水頭症を合併している症例では脳室ドレナージを施行し,救命を目的とする場合には開頭血腫除去術を施行した.転帰はmRS6 は19 例に及んだ.mRS0–2 の症例はなかった.自宅退院は5 例のみであった.混合型出血の治療成績は被殻出血や視床出血より悪く,混合型出血という予後不良群を被殻出血や視床出血に含めてデータ解析をすると,被殻出血,視床出血自体の治療成績や手術適応に影響がでる可能性も懸念される.特に手術療法の可能性が含まれる被殻出血に関しては混合型出血を除外することによって,より明確な手術適応が示される可能性がある.このことから混合型出血は被殻出血や視床出血とは別に独立して検討する必要がある.
症例報告
  • 古市 眞, 下田 健太郎, 加納 利和, 佐藤 祥史, 吉野 篤緒
    2016 年 38 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー
    要旨:77 歳男性,一過性の歩行障害を契機に発見された症候性内頸動脈狭窄に対して頸動脈ステント留置術を施行された.頸動脈ステント留置直後の脳血管撮影で右後大脳動脈末梢部に新生脳動脈瘤を認めた.術後当日に心臓超音波検査を施行したところ,僧帽弁に疣贅を認めたため感染性心内膜炎に合併した感染性脳動脈瘤と診断した.ステント再狭窄予防のため二重抗血小板療法が必要であり,破裂リスクが危惧された.ステント留置術後2 日目に血管内手術でN-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)による母血管閉塞術を施行した.術後,同名四分盲を後遺したものの4 週間の抗生剤点滴投与と2 週間の経口投与にて独歩で退院した.感染性未破裂脳動脈瘤の治療指針は未だ統一見解がないが,二重抗血小板療法が必要な症例には早期の血管内手術が重要な選択肢の一つと考えられた.
  • 廣瀬 昂彦, 塚原 彰弘, 細川 隆史, 土居 芳充, 横手 耐治, 中嶋 秀人, 木村 文治
    2016 年 38 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は63 歳男性.浮遊感で受診し,MRI で急性期多発性脳梗塞を認め治療が開始されたが,尿閉,左片麻痺,意識障害が出現し1 カ月後に転院となった.顔面を含む左片麻痺を認め,MRI では拡散強調画像とFLAIR 画像で左小脳脚,両側大脳深部白質に多発性の高信号病変を認め,左小脳脚と橋の内部,右大脳のくも膜にガドリニウム増強効果を認めた.頸髄髄内にも病変を認めたが,脳MRA では血管狭窄や閉塞は認めなかった.血液検査でLDH と可溶性IL-2 レセプターの上昇を認め,ランダム皮膚生検にて血管内に増殖する腫瘍細胞を認め,血管内大細胞型B 細胞性リンパ腫の診断を得た.化学療法R-CHOP とhigh dose MTX 療法により寛解状態になった.本疾患では小血管内腔内で選択的に増殖するため,進行性の多発性脳梗塞および脊髄病変を有する症例では本疾患を念頭におく必要があり,ランダム皮膚生検も速やかに実地すべきである.
  • 阿部 英治, 郷田 周, 中野 俊久, 湧川 佳幸, 永冨 裕文, 藤木 稔
    2016 年 38 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/25
    [早期公開] 公開日: 2015/10/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は63 歳,女性.乳癌に対し放射線治療とホルモン療法中で,1 週間前に頭痛で発症し,2 日前より発熱と右不全麻痺が出現.MRI(DWI)で左頭頂後頭葉から左側脳室内に連続する高信号域を認め,脳室内穿破した脳膿瘍と診断.抗生物質投与および脳膿瘍排膿ドレナージ術を行った.術後2 日目に右片麻痺増悪と失語も増悪し,DWI で左前頭側頭葉に急性期脳梗塞を認め,点滴加療した.入院時MRA で左中大脳動脈および両側前大脳動脈に壁不整や狭窄を認めたが,脳梗塞発症時には左中大脳動脈が閉塞した.抗生物質投与後,感染徴候は改善し,CTA にて両側前大脳動脈の壁不正は改善したが,左中大脳動脈の閉塞は残存し,原画にて左中大脳動脈周囲のくも膜や軟膜の造影効果を認めた.脳室内穿破した脳膿瘍でも脳梗塞を来す可能性があり,ステロイドを投与すべきだが,合併症もありうるため十分な注意が必要である.
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