脳卒中
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39 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 一ツ松 勤, 一ツ松 薫, 田中 俊也, 石堂 克哉, 伊藤 理
    2017 年 39 巻 3 号 p. 177-183
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/03
    ジャーナル フリー
    【目的】脳卒中急性期重症患者に対する早期経腸免疫栄養の効果について検討した.【方法】対象は脳卒中急性期に意識障害を有し経腸栄養を施行した患者.対照群(2004 年7 月~):早期経腸栄養開始前の54 例,実施A 群(2009 年10 月~):早期経腸栄養で急速増量を実施した53 例,実施B 群(2013 年1 月~):早期経腸栄養で免疫調整栄養剤(ホエイペプチド含有)を用い緩徐増量を行った53 例の3 群間で,絶食期間,便性状(腸内環境),感染性合併症,転帰について比較検討した.【結果】対照群に比べ,実施A・B 群では絶食期間短縮,水様便減少,感染性合併症減少,抗菌薬使用量減少,在院日数短縮,死亡率(発症3 カ月)減少が有意に得られ,さらにB 群はA 群より感染性合併症の頻度が有意に減少した.【結論】脳卒中急性期重症患者に早期経腸栄養は有効であり,さらに免疫調整栄養は感染対策上有効である可能性が示唆された.
  • 藤田 祐一, 阪上 義雄, 中溝 聡, 中村 直人
    2017 年 39 巻 3 号 p. 184-189
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/15
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢化地域における高齢者くも膜下出血(SAH: subarachnoid hemorrhage)の臨床像,治療成績を明らかにした.【方法】2009 年4 月~2015 年12 月,当施設で治療した動脈瘤破裂によるSAH 連続162 例のうち,80 歳以上の47 例を対象とし,後方視的に検討した.【結果】男性5 例,女性42 例,平均年齢は85.0 歳であった.発症前mRS 3~5 が43%,World Federation of Neurosurgical Societies (WFNS) grade IV,V が70%を占めていた.破裂動脈瘤は前方循環が95%であった.根治術は22 例で施行した.当施設退院時の転帰は良好例が6%,死亡率が43%であった.発症前mRS を加味した最終的な転帰は15%で良好な結果が得られた.84 歳以下,WFNS grade I~II の症例で根治術を施行できた場合に転帰改善が期待できる傾向を認めた.【結論】年齢,発症前mRS,WFNS grade を総合的に検討し,根治術可能な症例を慎重に選択することで転帰改善も望める.
症例報告
  • 蛭薙 智紀, 村尾 厚徳, 後藤 洋二, 真野 和夫
    2017 年 39 巻 3 号 p. 190-194
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は44 歳の女性.片頭痛の既往あり.2012 年8 月上旬下腹部痛を主訴に受診した.Hb 4.7 g/dl と重度の貧血を認め,精査により子宮体癌と診断した.輸血,鉄剤投与により貧血は改善し,9 月下旬に準広汎子宮全摘・両側附属器切除術を施行した.10 月下旬激しい頭痛のため搬送され,MRI で可逆性後頭葉白質脳症の所見を認め入院した.入院後,後頭部から前頭部へ広がる頭痛発作を繰り返した.第6 病日シャワーの湯を頭にかけた瞬間に雷鳴様頭痛が生じ,痙攣後不穏状態となったため鎮静を要した.頭部CT で左側頭葉に出血を認め,可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome: RCVS)の疑いでベラパミル240 mg/日の投与を開始し,頭痛は軽快した.第12 病日頭部3DCTA で広範な脳血管攣縮を認め,第69 病日改善を確認しRCVS と診断した.貧血の補正に加え,子宮体癌の手術に伴うエストロゲン欠乏状態がRCVS の誘因となった可能性がある.
  • 佐藤 貴洋, 佐治 直樹, 小林 和人, 芝崎 謙作, 木村 和美
    2017 年 39 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/03
    ジャーナル フリー
    症例は73 歳の男性.側方へ転落して頭頸部を打撲し,第6 頸椎骨折と小脳梗塞を発症した.脳血管造影検査によって右椎骨動脈の起始部閉塞とintimal flap を伴う左椎骨動脈の解離を認めたが,保存的に治療して経過良好であった.左椎骨動脈は頸椎横突孔内への侵入部位で解離しており,頸椎骨折で偏倚した椎体が椎骨動脈の横突孔侵入部に力学的負荷をかけて動脈解離を合併したと考えた.右椎骨動脈については,転倒時の頸部左側屈により右椎骨動脈が過伸展されて解離し,血栓症を来して閉塞したと推測した.外傷に伴う両側椎骨動脈解離の報告は散見されるが,発症メカニズムについて考察した報告は少なく,文献的考察を加えて報告する.
  • 大城 真也, 保田 宗紀, 三木 浩一, 湧田 尚樹, 重森 裕
    2017 年 39 巻 3 号 p. 200-204
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/15
    ジャーナル フリー
    症例はくも膜下出血に対するコイル塞栓術既往がある76 歳女性.10 日前より生じた右眼瞼下垂で当科を再診したが,頭部MRI では責任病巣となる新鮮虚血巣は認めなかった.脳血管撮影では塞栓術が施行された脳底動脈瘤と前交通動脈瘤部に再発徴候は認めなかったが,新たに右IC-PC分岐部に囊状動脈瘤が確認された.新生したIC-PC 動脈瘤が動眼神経麻痺の責任病巣と考え開頭すると,S 字状に蛇行した床上部内頸動脈が直接動眼神経を圧迫している可能性があり,さらに動眼神経下面には新生した囊状動脈瘤がはまり込むように局在していた.動眼神経直下の動脈瘤をクリップすると床上部内頸動脈が内側移動・直立化傾向となり,サンドイッチ状に圧迫されていた動眼神経の減圧効果が達成された.本例では新生したIC-PC 動脈瘤が動眼神経麻痺の主要因と思われたが,内頸動脈の走行変化はIC-PC 動脈瘤発生時に動眼神経障害が出現しやすい局所環境に寄与していたものと判断された.
  • 田中 健一郎, 中安 弘幸, 周藤 豊, 高橋 正太郎, 影嶋 健二, 中島 健二
    2017 年 39 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/06/15
    ジャーナル フリー
    急性脳梗塞と急性心筋梗塞をほぼ同時に発症し,t-PA(tissue plasminogen activator)静注療法が両者に奏功した症例を経験した.症例は66 歳の女性.突然の左不全麻痺にて,当院へ救急搬送された.来院時には構音障害,左不全片麻痺,左半身感覚鈍麻を認めており,画像検査にて急性脳梗塞であることが判明し,同時にうっ血性心不全を伴う急性心筋梗塞も来していた.t-PA 静注療法により,急性脳梗塞,急性心筋梗塞ともに軽快した.これまでにも急性脳梗塞と急性心筋梗塞の同時発症症例においてt-PA 静注療法が行われた報告はあり,必ずしも予後良好の報告ばかりではないが,同様の症例においてはt-PA 静注療法も有用であると考えられる.
  • 平山 航輔, 宗 剛平, 野田 満, 徳永 能治
    2017 年 39 巻 3 号 p. 210-214
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/07/14
    ジャーナル フリー
    症例は52 歳,男性.左不全麻痺を発症し,頭部MRI で右前頭葉内側の急性期脳梗塞を認め,MRA では右前大脳動脈遠位部に動脈瘤を認めた.CT,CTA および脳血管造影で右pericallosal artery とcallosomarginal artery 分岐部に部分血栓化大型動脈瘤および右pericallosal artery の閉塞を認めた.入院23 日目に開頭手術施行,pericallosal artery は血栓化した動脈瘤により圧迫され機械的に閉塞しており,瘤ネック付近は強い動脈硬化を認め,動脈瘤に対してdome clipping およびcoating 施行した.術後半年経過し当科外来に独歩通院し,再発なく経過しているが,脳梗塞の再発や動脈瘤のcoating を施行した残存部分の再増大の可能性はあり,今後も慎重な画像フォローが必要である.
  • 萩原 悠太, 小野寺 英孝, 内田 将司, 中村 歩希, 榊原 陽太郎, 岡田 智幸, 今井 健, 大島 淳, 清水 高弘, 長谷川 泰弘
    2017 年 39 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/25
    [早期公開] 公開日: 2016/07/14
    ジャーナル フリー
    症例は45 歳女性.頸部痛,咽頭痛を主訴に当院に紹介となり,咽頭部膿瘍の疑いで入院となった.入院時造影CT にて巨大右頭蓋外内頸動脈瘤をみとめ,第2 病日内頸動脈母血管コイル閉塞術を施行した.第5 病日,腫瘤周囲の培養検査および排膿目的に経口腔的な穿刺が予定されており,動脈瘤内部の状況を詳細に把握するため経口腔超音波検査(transoral carotid ultrasonography,TOCU)を施行した.コイル塞栓された内頸動脈は血栓化し完全閉塞しており,内部が高輝度,外周が低輝度の二層となる形で血栓化されていた.周囲の外頸動脈系血管との位置関係と瘤内部に血流がないことを確認したうえで安全に腫瘤周囲を穿刺することができた.頭蓋外感染性内頸動脈瘤は稀であり確立された治療はないが,本症例は母血管コイル閉塞術にて良好な転帰を得た.またTOCU は血管内治療術後の評価と排膿穿刺術に有用であった.
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