脳卒中
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原著
  • 荒井 雪花, 稲次 基希, 清水 一秀, 近藤 静琴, 清川 樹里, 酒井 亮輔, 藤野 明日香, 金 瑛仙, 林 俊彦, 若林 光, 金岡 ...
    2024 年 46 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景】脳卒中後てんかんには,治療薬選択基準がない.新規抗てんかん発作薬ペランパネルの長期治療効果を検討した.【対象・方法】2016年6月~2022年4月にペランパネル投与を開始した,脳卒中後てんかん28例の患者背景や投与量,併用薬剤,副作用,最長24カ月の発作消失率・忍容率を調査した.【結果】平均55.8歳(17~97歳),脳卒中病型は,出血性20人(71.4%),虚血性8人(28.6%).投与開始時の平均併用薬剤数は1.1剤,平均維持投与量は3.6 mgで3, 6, 12, 24カ月での発作消失は77%, 80%, 83%, 80%であった.忍容率は80%以上で,発作型別ではfocal to bilateral tonic-clonic seizuresの成績が良好であった.病因別や先行薬剤数で治療成績に差は認めない.【結語】ペランパネルは,脳卒中後てんかんに対し,長期的な治療効果と忍容性を示した.

  • 稲桝 丈司, 秋山 武紀, 赤路 和則, 稲葉 真, 柴尾 俊輔, 小嶋 篤浩, 寺尾 聰, 林 拓郎, 釜本 大, 倉前 卓実, 福永 篤 ...
    2024 年 46 巻 3 号 p. 224-228
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/13
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】近年,高齢化に伴う高齢者ドライバーの増加,および高齢者ドライバーが運転中に脳卒中に罹患することによる自動車事故の増加が社会的に懸念されている.今回,「慶應義塾大学脳動脈瘤共同研究」データベース解析により,運転中発症くも膜下出血(aneurysmal SAH: aSAH)の全体に占める比率および特徴を解析した.【結果】発症時行動様式が記録されていた623名中,発症時運転中だったのは10名(1.6%).623名を発症時運転群(n=10)と非運転群(n=613)とに分け,臨床因子を比較した.運転時発症群は有意に男性比率が高かったが,それ以外の臨床因子(来院時aSAH重症度,退院時予後等)では有意差を認めなかった.【結論】自動車運転とaSAH発症との因果関係については否定できず,また,運転時に発症した場合事故につながる確率は低くないため,研究継続されるべき課題である.

症例報告
  • 泉原 康平, 神浦 真光, 守本 純, 小川 智之, 藤田 浩二, 小林 和樹
    2024 年 46 巻 3 号 p. 229-233
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は86歳男性.1週間前から持続する視野障害と頭痛を主訴に受診した.頭部CTで右後頭葉皮質下出血を認め,保存的加療目的に入院した.入院時より誤嚥性肺炎による発熱を繰り返し,そのたびに抗菌薬治療で軽快していた.Day35に失行が出現し,Day41に施行した頭部MRIで脳出血部に脳膿瘍を疑う病変を認め,硬膜下や右側脳室内にも同様の病変を認めた.穿頭によるドレナージ術を行い,術中所見から脳膿瘍と診断した.術中検体と同日採取した血液培養から Bacteroides fragilisが検出された.抗菌薬治療を約6週間行い,療養型病院に転院した.脳出血後の脳膿瘍は報告が少なく,稀な合併症である.本症例は脳膿瘍と血液から同一の菌種が同定された初めての症例である.さらに, Bacteroides fragilisが脳出血に続発した脳膿瘍の起因菌として報告された症例は,渉猟し得た限り見当たらなかった.そこで我々は,この稀な症例を文献的考察を加えて報告する.

  • 吉岡 大和, 奥村 栄太郎, 小野寺 翔, 神保 洋之
    2024 年 46 巻 3 号 p. 234-238
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/24
    ジャーナル オープンアクセス

    Angio-Seal(テルモ,東京)は,すでに多くの施設で使用されている止血デバイスであるが,使用による出血性および閉塞性合併症も散見される.今回我々は,Angio-Sealを使用した大腿動脈穿刺部の止血から1週間後の遅発性大腿動脈閉塞を経験したため,報告する.症例は,80歳男性.心房細動,脳梗塞,高血圧の既往あり.突然の意識障害,左片麻痺を認め,造影CT検査で右内頚動脈急性閉塞症の診断に至った.機械的血栓回収療法を施行し,完全再開通が得られた.右大腿動脈穿刺部の止血に8 Fr Angio-Sealを使用し,止血が得られた.穿刺部の止血から1週間後に,右下肢の疼痛,蒼白,足背動脈の拍動が触知不良となり,下肢造影CT検査を施行したところ,右大腿動脈閉塞症と診断した.同日,心臓血管外科により緊急血栓除去術が施行され,再開通が得られた.

  • 市川 大, 柳澤 俊晴, 大森 泰文, 鎌田 幸子
    2024 年 46 巻 3 号 p. 239-244
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/30
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は70歳女性.頭痛を主訴に当院を受診し,MRI T2, FLAIRで右側頭葉の髄軟膜病変と半卵円中心に多数の血管周囲腔拡大を認めた.半年後の経過観察MRIで皮質微小出血,皮質脳表ヘモジデリン沈着を認め,3年後には右下1/4同名半盲と意識障害を呈し,MRIで髄軟膜病変の拡大と出血性病変の増大を認めた.脳生検の結果,アミロイドβ関連血管炎と診断し,ステロイド治療を行うも,意識障害が残存した.本例では,血管炎による炎症が先行し,その後血管脆弱性から出血を来したことが推定された.発症初期に出血性病変を呈さず,髄軟膜病変と血管周囲腔拡大を認める症例では,炎症性脳アミロイド血管症を鑑別診断に挙げる必要がある.

  • 松崎 丞, 山本 直樹, 岩田 亮一, 石本 幸太郎, 川村 晨, 樫村 洋次郎, 山縣 徹, 生野 弘道, 西川 節
    2024 年 46 巻 3 号 p. 245-251
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    破裂脳動脈瘤によるSAHにおいて,コイル塞栓術後に脳動脈瘤とは離れた部位の血腫が増大した症例に関して報告する.症例1:47歳女性,左内頚動脈–後交通動脈瘤破裂のため,コイル塞栓術を行った.術後,左insular cistern内の血腫が増大したため,第3病日に開頭減圧術を行った.症例2:80歳女性,右内頚動脈–後交通動脈瘤破裂のため,コイル塞栓術を行った.術後,右insular cistern内の血腫が増大し,第4病日に死亡した.いずれの症例もsubpial hematomaの増大であったと考えられた.2症例とも術中活性化凝固時間の過延長はみられず,手術終了時にプロタミンを静注してヘパリン中和を行っていた.また,周術期に抗血小板剤は使用しなかった.術前評価でsubpial hematomaの可能性があれば,急性期に血腫増大リスクがあるため,治療戦略を十分に検討する必要があると考えられた.

  • 宮里 紗季, 植村 順一, 山下 眞史, 八木田 佳樹, 井上 剛
    2024 年 46 巻 3 号 p. 252-257
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/30
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    82歳,男性.家族歴はなく,脊柱管狭窄症の既往歴があった.自宅で倒れているのを発見され,救急搬送された.来院時の神経所見は意識JCS-II-30, 左側空間無視,右共同偏視,構音障害,左顔面を含めた左片麻痺あり,頭部MRIで右中大脳動脈後方枝領域に急性期脳梗塞,MRAで右中大脳動脈M2(後方枝)閉塞を認めた.入院翌日に心電図で心房細動あり,経胸壁心エコーで重度拡張能障害とapical sparingがあった.99mTcピロリン酸心筋シンチグラフィで心臓に核種の異常集積を認めたことから,amyloid transthyretin(ATTR)心アミロイドーシスに合併した心原性脳塞栓症と早期に診断した.これまで心原性脳塞栓症と診断されていた脳梗塞患者の中に,ATTR心アミロイドーシスが潜在する可能性があり,その存在を念頭に置いて精査することが重要である.

  • 山髙 元暉, 牧野 健作, 西岡 和輝, 眞上 俊亮, 中尾 保秋, 山本 拓史
    2024 年 46 巻 3 号 p. 258-262
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    下垂手は,末梢神経障害の典型的な臨床症状とされているが,今回我々は,下垂手を主訴として来院した急性期脳梗塞に対して,血栓溶解療法を用いて良好な転帰をたどった症例を経験したので報告する.症例は75歳男性,突然の手関節より末梢の筋力低下を主訴に来院した.頭部MRIにて左運動野に限局する急性期脳梗塞を認め,rt-PAによる静注血栓溶解療法を行った.神経症状は急速に改善し.神経脱落所見なくmRS 0で自宅退院した.手指に限局する筋力低下を主訴とする脳梗塞は稀で,末梢性神経障害との鑑別が問題となる.手指機能は日常生活に大きく影響するため,脳虚血を原因とする場合には,適切な治療の早期介入が必須である.本症例は,早期の診断と治療介入により良好な転帰を得られた.

  • 金森 翔太, 小島 隆生, 伊藤 裕平, 前田 卓哉, 喜古 雄一郎, 山田 慎哉, 金城 貴士, 竹石 恭知, 藤井 正純
    2024 年 46 巻 3 号 p. 263-268
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は74歳男性.血圧低下を伴う心室頻拍発作のため前医に搬送され,アブレーション目的に当院循環器内科へ紹介された.アブレーションは局所麻酔下に実施され,カテーテルを経動脈的に左室内に挿入した直後に失語が出現し,当科紹介となった.脳血管撮影を実施したところ,左中大脳動脈M1 distalの閉塞を認めた.Combined techniqueによる血栓回収術を実施し,1 passでthrombolysis in cerebral infarction (TICI) Grade 3の再開通を得た.術直後より症状は改善した.塞栓子の病理所見はフィブリン血栓で,その後実施した経食道心エコーおいて,大動脈弓部に可動性のあるプラークを認めた.左室内膜アブレーションに際しては,アクセスルートの評価を含めた脳卒中リスクについて,循環器内科との共有と連携が重要であると考える.

  • 馬場 大地, 藤村 陽都, 福山 幸三, 清澤 龍一郎, 荒川 渓, 三本木 千尋, 梶原 真仁, 原田 啓, 高木 勝至
    2024 年 46 巻 3 号 p. 269-274
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/25
    [早期公開] 公開日: 2023/12/15
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は,右三叉神経痛に対し2度のガンマナイフ治療(gamma knife radiosurgery: GKS)を施行された既往がある,くも膜下出血の78歳女性.搬送時のCT angiographyで,右前下小脳動脈–後下小脳動脈共通幹の分岐部に3 mm大の動脈瘤を認めた.開頭手術によるtrappingを行い,mRS 1で自宅退院となった.GKSの照射野周囲の高線量領域に含まれる仮性動脈瘤であり,放射線関連動脈瘤と判断した.GKS関連動脈瘤は仮性動脈瘤であることが多く,小型でも破裂を起こす危険性が高い.ガンマナイフ照射野に圧迫血管が含まれないように工夫が必要である.GKS関連動脈瘤の治療はtrappingが必要なことが多く,脳梗塞を合併することがあるので注意が必要である.個々の症例に応じて,血管内治療と直達手術のどちらが安全で確実であるか,検討が重要である.

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