脳卒中
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29 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 加藤 裕司, 棚橋 紀夫, 荒木 信夫, 大久保 毅, 古屋 大典, 服部 公彦, 島津 智一, 名古屋 春満, 伊藤 康男, 島津 邦男
    2007 年 29 巻 3 号 p. 451-456
    発行日: 2007/05/25
    公開日: 2009/02/06
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者の急性期脳梗塞について臨床的特徴を検討した. 対象は2003年5月から2006年8月までに, 当科で入院加療した慢性維持透析中 (血液透析29例, CAPD4例) の急性期脳梗塞患者33例 (男25例, 女8例) である. 発症時年齢は44~88歳, 平均68歳で, 発症までの透析期間は平均5.6年. 透析導入疾患は慢性糸球体腎炎が16例, 糖尿病性腎症が10例, その他7例. 臨床病型はアテローム血栓性脳梗塞13例, ラクナ梗塞9例および心原性脳塞栓11例で, 動脈硬化性病変と心臓内血栓の存在が示唆された. 入院時のNIHSSは平均9で, 高血圧は79%に, 心房細動は21%に認めた. 透析中ないし透析直後の発症が12%にみられ, 動脈硬化に加え透析に伴う血行力学的機序が関係していると考えられた. 平均在院日数は25日で, 退院時mRS4以上の重症患者が42%, 死亡例も15%含まれ予後不良例が多かった.
症例報告
  • 伊藤 康男, 棚橋 紀夫, 荒木 信夫, 大久保 毅, 古屋 大典, 服部 公彦, 名古屋 春満, 加藤 裕司, 許 俊鋭, 島津 邦男
    2007 年 29 巻 3 号 p. 457-462
    発行日: 2007/05/25
    公開日: 2009/02/06
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓 (left ventricular assist device : LVAD) は, 一般に末期心不全の心移植待機症例に使用される. しかし, 臓器提供を待つ間に生じる血栓塞栓症, 感染症, 装置故障トラブルなどの合併症が時に問題となる. 我々は当院心臓外科においてLVAD装着術後に脳梗塞を合併した4症例を経験した. 症例は7歳から46歳までの男性3例, 女性1例で, 原疾患は全てが拡張型心筋症であった. 脳梗塞はLVAD装着術後1週間から1年までに生じた. 4例中2例は脳梗塞発症時に頭痛を訴えた. 全例がLVAD装着術後に抗凝固療法を受けており, うち3例ではPT-INRが2.0~3.0と良好にコントロールされていたにも関わらず, 大脳半球に広範な脳梗塞を合併した.
  • 荒木 有三, 野倉 宏晃, 伊藤 毅, 古市 昌宏, 岩田 辰夫, 岩間 亨
    2007 年 29 巻 3 号 p. 463-468
    発行日: 2007/05/25
    公開日: 2009/02/06
    ジャーナル フリー
    正中脳梁動脈閉塞により脳梁全体に梗塞を来たした1例を報告した. 患者は53歳男性, 車を運転中に右片麻痺, 右半身感覚異常と見当識障害で発症した. MRIの拡散強調画像にて, 脳梁全体と左右頭頂葉内側に高信号を認め, T1, T2強調およびFLAIR画像にて, 脳梁膝部前方の動脈内に高信号域を示す血栓が確認された. 2年前のラクナ梗塞発症時に施行したMRAとの比較の結果, 正中脳梁動脈の起始部閉塞と診断した. 経過中, 右片麻痺に加え, 左下肢麻痺や左上肢感覚障害が認められた. また, 右上肢は構成障害や運動失行, 左上肢は観念運動失行, 両上肢には強制把握や拮抗失行が認められた. 自己の手の認識が乏しく, 左手はcallosal+posterior type, 右手はanterior typeの「他人の手徴候」と診断した. 正中脳梁動脈は脳梁梗塞の重要な責任血管の一つであり, 多様な血流分布を示すため, 高次脳機能評価を行い特徴的な神経症状を明確にすることが大切である.
  • 河北 直也, 藤田 浩司, 三ツ井 貴夫, 和泉 唯信, 鈴江 淳彦, 宇野 昌明, 佐藤 浩一, 永廣 信治, 山田 博胤, 森田 奈緒美 ...
    2007 年 29 巻 3 号 p. 469-473
    発行日: 2007/05/25
    公開日: 2009/02/06
    ジャーナル フリー
    症例は28歳男性, 既往歴として前兆のある片頭痛. 営業職で数時間連続の運転も多かった. 突然の左片麻痺, 左半身感覚障害, 呂律困難にて当院を救急受診した. 来院時には歩行やや不安定だがNIHSS0であった. 発症2時間で3 Tesla (3T) MRIを施行し, 拡散強調画像で右放線冠~島回に高信号を認めた. T2*強調画像 (T2*WI) では右MCAに塞栓子と考えられる強度低信号を認め, 右頭頂葉にてdeoxyhemoglobin増加で明瞭化した髄質静脈と考えられる索状低信号を認めた. MRA, 脳血管撮影で右MCA M2分枝閉塞を認め, 経食道心エコー検査で右左シャントを伴う卵円孔開存と心房中隔瘤を認めた. フォローアップでT2*WIの異常信号は消失した. 本例では3T T2*WIが脳梗塞の病態評価, 治療効果判定に有用であった.
  • 中野 正紹, 緒方 利安, 矢坂 正弘, 岡田 靖
    2007 年 29 巻 3 号 p. 474-478
    発行日: 2007/05/25
    公開日: 2009/02/06
    ジャーナル フリー
    心原性脳塞栓症発症後の頸部血管エコーにてoscillating thrombusを検出した1例 (86歳女性) を経験した. 高血圧と非弁膜性心房細動に伴う心原性脳梗塞の既往があり, 抗凝固療法を受けていた. 意識障害と左片麻痺にて発症, 頭部MRIにて新鮮脳梗塞を確認し, 心原性脳塞栓症と診断した. 同日に施行した頸部血管エコー上右内頸動脈 (ICA) 起始部に可動性血栓 (oscillating thrombus) を認め, 右総頸動脈の拡張末期血流速度 (end-diastolic flow velocity : EDV) は0cm/sであった. 心原性脳塞栓症の再発予防に, ヘパリン持続点滴 (1万単位/日) を開始した. 第3病日には頸部血管エコー上可動性血栓は消失したが, EDVの左右比は4.53と上昇しており右ICA遠位部閉塞と考えられた. 第13病日にはEDVの左右差は消失しており, 右ICA再開通が示唆され, 同所見を頭部MRAで確認した. 本症例では内頸動脈遠位部閉塞によって生じたoscillating thrombusが抗凝固療法中に消失し, 再開通していく様を頸部血管エコーにて捉える事が出来た. 頸部血管エコーは内頸動脈閉塞とそれに続く再開通現象を捉える良い指標であると考えられた.
  • 中嶋 匡, 西村 裕之, 西原 賢太郎, 浮田 透, 辻 雅夫, 三宅 裕治, 大村 武久, 立花 久大
    2007 年 29 巻 3 号 p. 479-482
    発行日: 2007/05/25
    公開日: 2009/02/06
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性. 既往歴に高血圧, 糖尿病がある. 起床時よりふらつきを自覚し当院に紹介入院した. 入院時, 眼球運動は左方視時に右眼の内転障害と左眼の眼振を認めたが, 輻輳反射は保たれていた (MLF症候群). 左上下肢に協調運動障害を認め, 歩行は独歩可能であったが, 軽度開脚歩行で左へ偏移する傾向にあり, つぎ足歩行は不可能であった. 入院当日の頭部MRI水平断 (DWIを含む) では, 明らかな虚血病変は認めなかった. 脳幹梗塞を疑い第4病日に頭部MRIを前額断にて再検査したところ, 右中脳水道背側に小梗塞を認め中脳梗塞と診断した. 第7病日には左眼の外転時単眼性眼振は消失し, 歩行障害も軽減し第13病日退院した. MLF症候群と運動失調のみで発症する中脳の小梗塞はまれであり, 病巣診断には前額断を含むMR検査が重要であると考えられた.
  • 穂刈 正昭, 黒田 敏, 長内 俊也, 鐙谷 武雄, 渥美 達也, 小池 隆夫, 岩崎 喜信
    2007 年 29 巻 3 号 p. 483-487
    発行日: 2007/05/25
    公開日: 2009/02/06
    ジャーナル フリー
    成人Still病に脳梗塞を合併した若年女性の一例を報告する. 第1子妊娠中に間歇的発熱と関節痛で発症し, 成人Still病と診断された. 3年後, 第2子の出産2週間後に, 構音障害と右片麻痺で発症し, 脳MRIで左橋傍正中部に脳梗塞を認めた. 抗リン脂質抗体症候群や凝固機能異常などの存在は否定された. これまでにStill病に虚血性の神経症状を合併した症例は5例が報告されているのみで, 稀な症例と考えられた. 脳血管炎や産褥期が発症に関与していた可能性が示唆された.
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