脳卒中
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15 巻, 2 号
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  • 木村 和美, 橋本 洋一郎, 熊本 俊秀, 志摩 清, 安藤 正幸
    1993 年 15 巻 2 号 p. 87-90
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    カラードプラを用い, リアルタイムに脳底動脈を描出し定量的血流速度の測定を試みたので報告する.対象は, 健常者16名 (平均30歳, 男6名, 女10名).検査方法はまず初めに後頭隆起約2~3cm下方 (大後頭孔ウィンドウ) より脳底動脈を描出する.次にその部位の平均血流速度を測定する.その値をドプラ入射角度によって補正し定量的平均血流速度とした.超音波ドプラ装置は, シーメンス社製カンタム2000 (探触子3.0MHz) を使用した.平均血流速度は, 角度補正前35.1±10.0/秒, 補正後で41.2±12.6cm/秒であった.ドプラ入射角は0~56 (平均25±18) 度とばらつきがみられた.カラードプラは, 非侵襲的に脳底動脈の描出および定量的血流速度測定が可能であり今後臨床応用が期待される.
  • MRIによる病巣検討と上位顔面神経路についての考察
    鈴木 義夫, 杉田 幸二郎, 河村 満, 荒木 重夫, 塩田 純一
    1993 年 15 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    皮質性中枢性顔面単麻痺を呈した8例のMRI病変と臨床症状を対比し, 中心前回運動野の体部位局在について検討した.また, 顔面単麻痺の程度と性質, さらに顔面随意運動と感情運動時の運動麻痺の態度を観察し, 顔面筋支配の中枢性経路について考察した.MRI上の病変部位は冠状断像から, 中心溝, 中心前回を同定し, これを通る断面像から大脳縦裂を上端とし, Sylvius裂を下端とする大脳皮質を3等分し, 上方1/3, 中央1/3, 下方1/3とした.8例の共通病変は中心前回の中央1/3に存在し, それより, 下方進展例では, 嚥下・構音障害, 舌運動障害がみられ, 一方, 深部白質進展例では, 半側空間無視, 運動性失語などの合併が認められた.8例全例が, 顔面の随意運動時, 感情運動時共に同様な運動麻痺の態度を示し, 顔面随意運動と感情運動に関与する経路はいずれも, 中心前回運動野周辺では近接して走行している可能性が示唆された.
  • 佐藤 美佳
    1993 年 15 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳梗塞患者31例, 対照33例において白血球と赤血球のfiltrabilityをSt.George's Filtrometerを用いて測定した.白血球浮遊液は1,000/mm3に調整し, 孔径8μmのmilliporefilterと陰圧3cmH2Oを用い, 赤血球浮遊液はヘマトクリット10%に調整し, 孔径5μm, 陰圧4cmH2Oを用いて測定した.白血球のmtrabilityは急性期群 (発症後第2週以内, 11例), 慢性期群 (発症後第3週以降, 20例) ともに対照群 (33例) より有意に低下しており, 血栓症群 (24例) は対照群より低下していたが (p<0.05), 塞栓症群 (7例) は低下しておらず, 小梗塞群 (14例) は大梗塞群 (11例) より低下していた (P<0.01).赤血球のfiltrabilityは脳梗塞群と対照群の間に有意差を認めなかった.以上より脳梗塞患者では白血球のfiltrabilityが低下しており, 白血球の血液rheologyにおける重要性と脳虚血の病態への関与が示唆された.
  • 運動失調の予後および小脳内体性局在について
    桑原 聡, 平山 惠造, 小島 重幸
    1993 年 15 巻 2 号 p. 104-112
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    小脳・小脳脚梗塞47例において臨床症状とMRI所見を分析し, 病変部位と運動失調の予後との関係および小脳内体性局在を検討した.四肢の運動失調は41例でみられ, 発症後1年以内に消失した予後良好群は32例 (78%) で, 1年以上持続した予後不良群は9例 (22%) であった.小脳皮質または下小脳脚病変側の予後は良好であるのに対し, 歯状核+上小脳脚あるいは中小脳脚全体の病変例の予後は不良であった.小脳求心系病変 (中, 下小脳脚) と遠心系病変 (歯状核, 上小脳脚) の運動失調に差異はみられなかったが, 後者では後に企図振戦, 律動性骨格筋ミオクローヌスが出現し日常生活動作を妨げた.四肢の運動失調と小脳病変局在との関係は認められなかったが, 失調性構音障害は小脳上部病変で, 眼球測定異常は小脳下部病変で多く発現し, 小脳における体性局在を示唆するものと思われた.
  • 渡辺 正樹, 高橋 昭, 新畑 豊, 茂木 禧昌, 古瀬 和寛
    1993 年 15 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    MRIにより検出された画像上の脳幹梗塞155例を検討した.脳幹梗塞はT1強調で低信号, T2強調で高信号を, かつ2×2mm以上の異常影を有するものとした.部位では橋底部に梗塞を認めるものが132例 (85.2%) と圧倒的に多く, 1症例で2つの脳幹部位に梗塞を持つ例では全例で橋底部に梗塞が認められた.テント上脳梗塞と合併するものは122例 (78.7%) あり, 対照例より有意に高頻度であった.中でも橋底部梗塞に合併が多かった.今回の検討では, 既存のテント上症候性脳血管障害のMRIでのfollow up中に発見されたもの, あるいは一過性の不定愁訴例に伴うものを無症候性脳幹梗塞としたが, これらは57例と高率に認められ橋底部梗塞に多かった.
  • 浅野 賀雄, 島津 邦男, 大久保 毅, 澤田 雅彦, 濱口 勝彦
    1993 年 15 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    橋下部縫線核 (橋縫線核・大縫線核) 破壊慢性モデルの, 脳循環動態に対する影響をサルを用いて検討した.破壊群8頭と刺入のみの非破壊群6頭を作成し, 1週間後に電磁流量計を用いて内頸動脈血流を測定した.脳循環化学調節能はChemical Vasomotor Index (%CVI) を, 脳循環自動調節能はAutoregulation Index (%AI) を, 脳代謝は脳酸素消費量を指標とした.1) 血圧・脈拍は両群間に差を認めなかった.2) 内頸動脈血流は破壊群と非破壊群, 破壊群の左右の比較で差を認めなかった.3) 脳酸素消費量は破壊群が非破壊群との比較で有意な増加 (p<0.05) を示した.4) CO2吸入負荷時の%CVIは, 破壊群の左側が非破壊群に比し高値傾向, 過換気負荷では壊破壊群の右側が非破群に比し有意な低下 (p<0.02), 左側も低下傾向を示した.5) 脱血・血液注入負荷時の%AIは, 破壊群と非破壊群, 破壊群の左右の比較で差がなかった.以上の成績は, 橋下部縫線核群が脳代謝および脳循環化学調節に関与することを示唆する.
  • 奥田 文悟, 出田 淳, 立花 久大, 杉田 實, 前田 行雄
    1993 年 15 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.両側の核間性眼筋麻痺と小脳失調で発症し, 6週後より頭部・四肢に振戦が出現した.頭部CT及びMRIにて中脳被蓋傍正中部に梗塞を認めた.脳幹の限局した血管病変により上記症状が出現することは極めて稀である.その発生機序として, 後大脳動脈傍正中枝の閉塞により内側縦束, 小脳出力系及び錐体外路系が両側性に障害されたことを考察した.
  • -特に前大脳動脈FMDと上小脳動脈Fusiform Aneurysmの合併について-
    河野 威, 西谷 和敏, 曽我部 紘一郎, 松原 俊二
    1993 年 15 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    頭蓋内・外の血管にfibromuscular dysplasia (FMD) を有し, そのうちの左前大脳動脈 (ACA) のFMDにより脳梗塞をきたしたと考えられる稀な1例を報告した.7年前より高血圧のある42歳, 女性で, 突然下肢に強い右半身麻痺と右半身知覚鈍麻をきたし入院.CTでは左ACA領域に脳梗塞による多発性低吸収域を示し, 脳血管写で左ACAに, FMDに特徴的な “string of beads” (SB) 像を認めた.しかし血管の閉塞や狭窄は無かった.症状は保存的治療で徐々に改善し, 脱落症状なく退院した.本症例には他にもSB像を左頸部内頸動脈 (ICA) と左椎骨動脈 (VA) に2ヵ所, SB像ではないが他のFMD所見を呈した部位が左VAに2ヵ所, またFMDと強い因果関係があると思われた “fusiform aneurysm” が左ICA, 右VA, 右上小脳動脈 (SCA) に3個あり, 合計8ヵ所の病変があった.ACAのFMDおよびSCAのfusiform aneurysmは非常に稀で, 本症例はこの稀な両者が合併しており, 我々の調査した限り文献上このような症例は見当たらなかった.
  • 臨床的および神経放射線学的検討
    高松 和弘, 滝沢 貴昭, 佐藤 昇樹, 佐能 昭, 宮本 勉
    1993 年 15 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    われわれは3例のGasperini症候群を経験したので臨床症状・脳血管撮影所見・MRI所見を中心に検討を加え報告した.脳幹梗塞の42歳・女性と70歳・男性, 脳幹出血の42歳・男性の3例を対象とした.患側症状として全例に第V・VI・VII・VIII脳神経の末梢性麻痺と小脳症状, 1例にHorner症候群, 対側症状として3例に頸部以下の感覚障害と2例に筋力低下を認めた.脳血管撮影で橋出血例では異常は認められなかったが橋梗塞例では1例に両側椎骨動脈閉塞と1例に脳底動脈狭窄を認めた.MRIでは全例に患側橋下部被蓋外側に責任病巣を認めた.橋梗塞による本症候群は椎骨および脳底動脈の主幹動脈病変のために脳底動脈の穿通枝である傍正中動脈群, 短周辺動脈群, 長周辺動脈群の終末域梗塞 (terminal zone infarction) として生じる可能性が示唆された.
  • 安部 博史, 亀井 博之, 延原 幸嗣, 竹林 茂夫, 西丸 雄也
    1993 年 15 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    延髄外側症候群を呈した特発性頭蓋内椎骨動脈解離性動脈瘤の剖検例を報告した.50歳, 男性.後頭部痛にて発症, 眩暈, 歩行障害, 悪心嘔吐と症状が増悪し入院.入院時頭痛, 眩暈, 左Horner症候群, 眼振, 嚥下障害, 左協調運動障害, 右半身知覚障害を認め左延髄外側症候群と診断した.第2病日の頭部CT所見は異常を認めなかったが同日のMRIにて左延髄外側部に責任病巣を認めた.症状は第12病日には改善し安定していたが17病日頃より頭痛が増悪し18病日突然椎骨動脈解離性動脈瘤の破裂によるくも膜下出血にて死亡した.死亡まで計3回のMRIを施行し早期より解離性動脈瘤の進展を捉えることが出来た.解離性動脈瘤に於ける壁在血腫のMRI変化は, 脳実質内出血の血腫変化と等しく, T1強調画像は高信号から等信号へ, T2強調画像は低信号から等信号への変化を呈した.以上より, 解離性動脈瘤の早期診断がMRIにて可能なことが示唆された.
  • 福原 正代, 岡田 靖, 佐渡島 省三, 朔 義亮, 藤島 正敏
    1993 年 15 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 1993/04/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は, 肥大型心筋症を有する43歳の男性.38℃台の発熱が1ヵ月持続し, 抗生物質 (セフェム系) を投与した.治療開始10日後に, くも膜下出血を生じ, 同じ日に血液培養からStreptococcus viridansが検出されたため, 感染性心内膜炎と診断された.ペニシリン系抗生物質とアミノグリコシド系の抗生物質の併用に変更したところ, 解熱し, 血液培養も陰性化したが, くも膜下出血から2週間後に, 右片麻痺, 意識障害が出現した.頭部CT所見により, 脳膿瘍及び脳膿瘍からの出血と診断し, 脳外科的処置をおこなった.本例は, 感染性心内膜炎に合併してくも膜下出血, さらに脳膿瘍からの出血をひきおこしたと考えられる.感染性心内膜炎の早期の診断と適切な治療および治療経過中の注意深い観察の必要性を強調したい.
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