Broca失語の責任病巣とその臨床症状発現閾値を調べるために, 右利きBroca失語者8例, 非失語者30例においてPETを用いて局所脳循環代謝を測定した.
15O steady state methodにて安静非刺激時における脳血流量CBF, 酸素消費量CMRO
2を求めた.Broca失語者においてX線CT上, 低吸収域が現在考えられている責任病巣, すなわち, シルビウス前方でブローカとその周辺領域およびそれらの皮質下に一致してみられる症例3例, みられない症例5例であったが, PETによる血流代謝低下域は8例とも現在考えられている責任病巣領域に一致していた.また, この領域にROIを設定し, 失語者と非失語者を比較することにより臨床症状発現閾値を求めた.その結果, この閾値はCBFにおいて20~27m
l/100g/min, CMRO
2において2.0m
l/100g/minと思われた.X線CT上低吸収域の発現する閾値と, 臨床症状発現閾値との間には差があると思われるために, 臨床症状の責任病巣を検討する場合には, 脳機能を良く反映する脳循環代謝を測定する必要があると思われた.
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