脳卒中
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39 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 長谷川 秀, 寺崎 修司, 大田 和貴, 植田 裕, 伊東山 剛, 三浦 正毅
    2017 年 39 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
    [早期公開] 公開日: 2016/04/22
    ジャーナル フリー
    当院における動脈瘤性くも膜下出血(SAH)患者の予後と在宅復帰率の現状について検討した.2010 年1 月から2013 年12 月までに当院に搬送されたSAH 患者253 名のうち,当院で外科治療を行った183 名を対象とした.臨床データは熊本型脳卒中連携クリティカルパスから得た.年齢は中央値64 歳,女性はそのうちの70%だった.入院時のWFNS グレードはI–III が72.7%で,Fisher CT 分類はグループ3 が86.3%を占めていた.症候性脳血管攣縮は19.9%にみられ,16.6%は脳梗塞に陥った.GR とMD は73.2%で,在宅復帰率は73.1%だった.在宅復帰に関して,80 歳以上,WFNS グレード,症候性脳血管攣縮,脳梗塞,水頭症が独立した決定因子であった.在宅復帰率に影響を与える脳血管攣縮,脳梗塞,水頭症に対する急性期病院での集学的治療と継続的な回復期リハビリテーションが重要と考えられた.
  • 小久保 安昭, 近藤 礼, 佐藤 慎哉, 園田 順彦, 久保田 功, 加藤 丈夫, 嘉山 孝正, 山形県対脳卒中治療研究会
    2017 年 39 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
    [早期公開] 公開日: 2016/05/27
    ジャーナル フリー
    山形県の基幹病院における急性期虚血性脳卒中患者における頸動脈病変を評価し,その特徴を明らかにしたので報告する.発症2 週間以内に頸動脈エコーと3D-CTA で頸動脈病変の評価ができた510 例の急性期虚血性脳卒中患者を対象とした.510 例中,48 例(9.4%)で頸部内頸動脈に50%以上の狭窄を認め,32 例で70%以上の高度狭窄を認めた.総頸動脈mean-IMT は,アテローム血栓性脳梗塞(AT)で1.09±0.51 mm, 心原性脳塞栓症(CE)で1.06±0.42 mm, ラクナ梗塞で1.03±0.39 mm であり,AT およびCE において高い傾向であり,特に総頸動脈mean-IMT は他の臨床病型と比較してAT で有意に高かった.また,総頸動脈mean-IMT 1.1 mm 以上に有意に相関していたのは,T-Cho/HDL 値比,年齢であった.
症例報告
  • 木下 喬公, 羽柴 哲夫, 山上 敬太郎, 本郷 卓, 高崎 盛生, 宮原 永治, 山田 圭一, 藤本 康裕
    2017 年 39 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
    [早期公開] 公開日: 2016/05/27
    ジャーナル フリー
    右頭頂葉皮質下出血急性期に,血腫の拡大ではなく液性成分の増大により症状が増悪し,手術を要した3 症例を経験したため報告する.症例は,2009 年1 月から2011 年12 月の間に当院に入院した皮質下出血の3 例(男性2 例,女性1 例,平均年齢70 ± 9 歳)である.初診時は全例でJCS 1群であり,頭部computed tomography(CT)では脳室穿破を伴わない右頭頂葉から側頭葉にかけての皮質下出血を認めた.全例で急性期に液性成分増大によると思われる症状の増悪を認めたため,開頭血腫除去術を施行した.脳血管評価では異常を認めなかった.全例で血腫と脳室壁が近接しており液性成分の増大と何らかの関係があることが示唆された.このことから,脳室壁に近接した皮質下出血では,急性期に液性成分の増大による症状の増悪の可能性があることに留意する必要があると考えられる.
  • 水谷 敦史, 中山 禎司, 森 弘樹, 澤下 光二, 加藤 俊哉, 小澤 享史
    2017 年 39 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
    [早期公開] 公開日: 2016/04/22
    ジャーナル フリー
    脳空気塞栓症は比較的稀な病態であり,特に空気の流入経路が静脈逆行性である例は特に稀である.今回我々は画像所見・剖検所見から静脈逆行性の脳空気塞栓症と診断しえた症例を経験したので報告する.症例は80 歳代の男性で意識障害を主訴に救急搬送された.来院時から重度の意識障害,瞳孔不同が認められた.頭部CT にて右側頭葉・後頭葉および両側前頭頭頂葉の傍矢状洞部の脳実質内,横静脈洞・上矢状静脈洞に極めて多量の異所性ガス像が認められ,脳ヘルニアを呈していた.生命予後,機能予後の観点から積極的治療は断念して保存的に治療したが短時間で死亡した.病理解剖所見では,出血性壊死の範囲が静脈灌流域に一致しており,脳静脈内腔に多量の気泡が認められたことから静脈逆行性の脳空気塞栓症と診断した.空気の流入経路としては慢性肺疾患・気管支肺炎に伴い縦隔気腫を来し,ここから上大静脈に空気が流入して静脈内を逆流したと考えられた.
  • 中島 昌典, 岡野 晴子, 傳法 倫久, 平野 照之, 千葉 厚郎, 遠藤 英仁, 窪田 博, 磯村 杏耶, 下山田 博明, 大倉 康男, ...
    2017 年 39 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
    [早期公開] 公開日: 2016/05/27
    ジャーナル フリー
    症例は喫煙歴のある80 歳男性で軽度の右上肢脱力を主訴に入院した.頭部MRI の拡散強調画像で両側大脳皮質に微小高信号が多発し,脳塞栓症と診断しヘパリンを開始した.第4 病日の造影CT で上行大動脈に15 mm の複合粥腫病変を認め,大動脈原性脳塞栓症としてアスピリン,クロピドグレル,アトルバスタチンを開始し,ワルファリンを追加した(PT-INR 1.6~2.6 で管理した).第20 病日の造影CT で粥腫に改善なく,第22 病日に頭部MRI で新規梗塞を認めたため,第24 病日に上行大動脈置換術を施行した.術後はクロピドグレル,アトルバスタチン,ワルファリンを再開.経過良好で第43 病日に退院した.術後23 日目・6 カ月の頭部MRI で無症候性の新規梗塞を認めたが,術後7・11 カ月の頭部MRI では新規梗塞を認めなかった.大動脈原性脳塞栓症に対して,薬物療法下に大動脈病変を2 週間評価し,手術の実施を検討すべきと考えた.
  • 芳賀 智顕, 野呂 秀策
    2017 年 39 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
    [早期公開] 公開日: 2016/05/27
    ジャーナル フリー
    症例は73 歳,女性.肺癌に対して左上葉切除を施行されたが,術後3 日目に脳梗塞を発症した.発症4 日目に意識障害を認めたため当院脳卒中センターへ搬送となった.頭部CT 上,脳梗塞の臨床病型は塞栓症と思われた.塞栓源の検索のため造影胸部CT を施行すると,左上肺静脈断端部血栓を認め,これに由来する脳塞栓症と思われた.肺葉切除後の肺静脈断端部血栓はあまり知られていないが,左上肺静脈断端部血栓の頻度は稀ではないことがわかってきた.また,塞栓症や血栓の検出は周術期だけでなく遠隔期にもみられる.左上葉切除術の既往がある場合,肺静脈断端部血栓による脳塞栓症も念頭に置くべきと思われる.
  • 篠原 禎雄, 山中 祐路
    2017 年 39 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
    [早期公開] 公開日: 2016/05/27
    ジャーナル フリー
    症例は75 歳女性.完全房室ブロックに対してペースメーカ留置の既往があるが血栓性既往はない.交通外傷で右鎖骨骨折,肋骨骨折,血胸と診断された.第8 病日に軽快退院したが,第12病日より右上肢と顔面の腫脹および頭頸部痛が出現し,第13 病日に来院した.造影CT で右鎖骨下静脈から右内頸静脈に至る血栓症を認め,ただちにヘパリン点滴を開始した.第18 病日からエドキサバン30 mg の内服を開始,症候増悪なく26 病日に退院後は症候軽快し,第87 病日の造影CT では血栓の消失が得られていた.以後再発なく経過した.鎖骨下静脈から内頸静脈に至る上半身深部静脈血栓症に対してもエドキサバンは安全かつ有効な治療の第一選択になりえる.
  • 和久井 大輔, 伊藤 英道, 佐瀬 泰玄, 小野寺 英孝, 大塩 恒太郎, 田中 雄一郎
    2017 年 39 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
    [早期公開] 公開日: 2016/05/27
    ジャーナル フリー
    25 歳女性.右頸部腫瘤を主訴に他院を受診し皮下頸部動脈や椎骨動脈,外頸動脈からの多数の流入血管を有し,複数の瘻孔から皮下静脈瘤を経由して傍脊椎静脈叢へ流出する傍脊椎動静脈瘻(PAVF)を指摘された.主たる流入路の上行頸動脈を頸部切開で結紮したが側副血行のため根治せず,経動脈的塞栓術を行うも再発し当科紹介となった.多数の流入血管と瘻孔からなる複雑な血管構築のため,全ての血管を網羅するように動脈と静脈双方にカテーテルを誘導しコイルで塞栓した.瘻孔は消失し1 年後の血管撮影でも再発は認めない.PAVF はまれな脊髄シャント性疾患であり確立された治療法はない.血行動態が複雑なPAVF に対する経動脈的および経静脈的な同時塞栓は試みるべき有効な治療法の一つである.
  • 上村 岳士, 伊原 郁夫, 福間 淳, 川合 省三, 杉本 圭司, 黒田 雅人, 金子 彰
    2017 年 39 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/24
    [早期公開] 公開日: 2016/11/22
    ジャーナル フリー

    くも膜下出血の術後7 日目にたこつぼ型心筋障害を発症し,その後1 年以上左室収縮障害が遷延した症例を経験した.症例は67 歳の女性で前交通動脈瘤の破裂によるくも膜下出血を発症し,同日動脈瘤クリッピング術を施行した.術後7 日目に突然胸部不快感を訴え,急性心不全状態となった.心電図検査,経胸壁超音波検査,冠動脈造影の結果たこつぼ型心筋障害と診断した.心筋逸脱酵素が高値を示し過換気負荷試験が陽性のため,冠攣縮が原因の急性心筋梗塞を合併したと考えた.くも膜下出血は順調に回復したが,たこつぼ型心筋障害は左室壁運動・心機能障害は改善なく,1 年後も同様の所見が継続した.たこつぼ型心筋障害にもかかわらず,左室壁運動・心機能障害が1 年以上継続した理由として冠攣縮による急性心筋梗塞が合併したためと考えた.

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