脳卒中
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45 巻, 4 号
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総説
  • 川原 一郎, 小川 由夏, 塩崎 絵理, 原口 渉
    2023 年 45 巻 4 号 p. 295-302
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    舌骨は,他骨との連続性を持たず,軟部組織を介した状態の極めて特異な解剖学的な特徴を有しており,日常生活においても,位置的変化を呈する可動性を持った骨構造物である.過長した舌骨やその偏位によって,頸動脈に何らかの影響を及ぼすことも知られており,舌骨に関連した血管障害の報告は散見されるが,いまだ認知度は低く,その病態を周知させることは重要であると考えられる.3D-CTAでは,舌骨と頸動脈との決定的な解剖学的異常所見を捉えるのに有用であり,隣接,接触,圧迫,あるいは絞扼の状態を時に経験し,その解剖学的異常は脳血管障害発症の危険因子と考えられる.茎状突起から甲状軟骨まで含めた,いわゆるstylohyoid-thyroid chain複合体において,舌骨は中心的役割を果たしており,内頸動脈の走行異常を呈する症例やESUS症例においては,常に舌骨関与の可能性の有無も念頭に置き,精査する必要がある.

原著
  • 上田 凌大, 今井 啓輔, 山田 丈弘, 猪奥 徹也, 長 正訓, 崔 聡, 徳田 直輝, 山本 敦史, 加藤 拓真
    2023 年 45 巻 4 号 p. 303-309
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【背景および目的】中大脳動脈水平部開存型の内頸動脈閉塞症(ICOPM)に対する急性期血行再建術(EVT)の成績と転帰関連因子を明らかにする.【方法】2014年5月から2021年7月にEVTを実施した511例中,ICOPM例を対象とし,背景因子と時間指標,治療内容,手術成績を検討した.対象を転帰良好群(3カ月後mRS 0–2:G群)と転帰不良群(同3–6:P群)に分類し,比較した.【結果】対象は36例で年齢85歳,NIHSS 17.5点,発症–来院時間200分,穿刺–再開通時間(P2R)84.5分(中央値),術中血栓移動9例,有効再開通32例であった.G群は13例でP群と比較しP2Rが短かった.【結論】EVTを受けたICOPM例は36例で,有効再開通32例,転帰良好13例と成績不良ではなかった.転帰良好例ではP2Rが短かったが,ICOPMは複雑な病態であり,P2R短縮が転帰改善に直結するとはいえない.

  • 尾原 知行, 田中 瑛次郎, 芦田 真士, 前園-神鳥 恵子, 小椋 史織, 毛受 奏子, 水野 敏樹
    2023 年 45 巻 4 号 p. 310-316
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/03/16
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    【背景と目的】穿通枝梗塞,特にbranch atheromatous disease(BAD)は,治療にもかかわらずしばしば神経症状が増悪するが,有効な治療戦略は確立されていない.本邦の穿通枝梗塞の急性期治療方針を明らかにする.【方法】1次脳卒中センター500施設に臨床情報,穿通枝梗塞の画像を複数例提示し,各症例における治療方針を尋ねた.【結果】38%の施設から回答を得た.発症6時間,NIHSS 3点のBAD型梗塞では,初期治療として約70%は抗凝固薬+抗血小板薬2剤以上の多剤併用療法を選択し,症状増悪時に約50%で抗血栓薬を追加すると回答した.発症2時間のBAD型梗塞では,87%でrt-PA静注療法を行い,その後の早期症状増悪時には35%が24時間以内に抗血栓薬を再開すると回答した.【結論】本邦ではBAD型梗塞に対して,現行のガイドラインの推奨より強力な抗血栓療法が行われている可能性がある.

症例報告
  • 平山 周一, 横田 陽史, 近藤 恭史, 田澤 浩一, 山本 寛二, 草野 義和
    2023 年 45 巻 4 号 p. 317-323
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は60歳女性.約10年前に心筋梗塞を発症し,経皮的冠動脈形成術がなされた.約3年前に穿通枝領域の脳梗塞を発症して他院で加療を受け,抗血小板薬が導入された.当時の頭部MRI/MR angiography(MRA)では陳旧性の穿通枝梗塞巣が散見され,頭頚部主幹動脈に狭窄や閉塞は認めなかった.今回,穿通枝梗塞を再発して当科へ入院となり,繰り返す虚血性血管イベントに対して原因精査を行い,弾性線維性仮性黄色腫(pseudoxanthoma elasticum: PXE)の確定診断に至った.本疾患は常染色体劣性遺伝の形式をとり,若年性心血管イベントや網膜下出血・消化管出血の要因となり得る.根本的治療はいまだなく,高血圧や脂質異常などの危険因子の管理が一般的となっている.非高齢者の再発性穿通枝梗塞患者においては,本症を鑑別に挙げることが併発症の管理の面からも重要になると考えられる.

  • 山田 大輔, 桧山 永得, 市橋 大治, 金城 典人
    2023 年 45 巻 4 号 p. 324-330
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/02/17
    ジャーナル オープンアクセス

    88歳女性.2日前からの意識障害と頭痛を主訴に救急搬送された.JCS 3,血圧261/127(平均血圧:172)mmHg.頭部MRI, FLAIRにて両側後頭葉皮質下白質等に高信号領域を認め,posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)を疑った.緩徐な降圧を行い,第4病日には意識障害は改善した.腎不全に対して利尿薬も投与した.第8病日のMRI検査では,血管原性浮腫は改善していたものの,両側の大脳半球分水嶺領域に新規の脳梗塞を認めた.血行力学性脳梗塞と判断し,循環血液量増量を試みた.その後,神経症状は増悪なく経過した.PRESでは降圧を行うが,急速な降圧は血行力学性脳梗塞のリスクとなる.超高齢者では,血行力学性脳梗塞が発症し得る可能性を事前に説明する必要がある.

  • 下高 一徳, 永井 康之, 藤木 稔
    2023 年 45 巻 4 号 p. 331-336
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/02/17
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は17歳女性.夜間就寝中に突然の頭痛を自覚,顔面を含む右半身の脱力も出現しており,当院に救急搬送された.頭部CT検査でくも膜下出血がみられ,脳血管3D-CT-angiographyでは左内頸動脈先端部に4 mmの囊状動脈瘤がみられた.破裂脳動脈瘤に対し脳動脈瘤頸部クリッピング術を施行し,術後は脳血管攣縮対策を行った.リハビリテーションを行い麻痺は消失し,良好な術後経過であったが,術後の頭部MRI検査で左レンズ核線条体動脈の灌流域に虚血巣がみられた.虚血の原因となる基礎疾患はなく,発症時から麻痺を呈しているため,今回のくも膜下出血が中大脳動脈穿通枝の虚血に何らかの影響を及ぼしたと考えた.若年のくも膜下出血例で稀な病態であり,文献的考察を加え報告する.

  • 水戸 勇貴, 松崎 丞, 大道 如毅, 山本 直樹, 岩田 亮一, 山縣 徹, 石本 幸太郎, 佐々木 強, 西川 節
    2023 年 45 巻 4 号 p. 337-342
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/03/06
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は,88歳女性,来院時,失語,右片麻痺を認め,NIHSS 26点であった.左内頚動脈閉塞による急性期脳梗塞と診断し,アルテプラーゼ静注療法および脳血栓回収療法を行った.多発性骨髄腫(multiple myeloma: MM)と心房細動(atrial fibrillation: AF)が併存しており,その発症機序として,Trousseau症候群か心原性塞栓症かの診断に苦慮した.初療時,D-dimer 2.25 µg/mlと若干の上昇を認め,回収された血栓は白色血栓で,新鮮な血栓であった.また,経時的にD-dimerの上昇を認めたこと(ピーク8.83 µg/ml),すでにアピキサバンを内服していたことから,Trousseau症候群による塞栓症と診断した.AFが併存する塞栓性脳梗塞であっても,回収血栓の病理組織像やD-dimerの推移などから,総合的に発症機序を検討することが肝要であると考えられた.

  • 大山 綾音, 安藤 大祐, 山口 枝里子, 小田 桃世, 八重樫 弘, 小野 貞英, 木村 尚人, 石田 格, 大浦 裕之, 高橋 弘明, ...
    2023 年 45 巻 4 号 p. 343-347
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/03/06
    ジャーナル オープンアクセス

    肺動静脈瘻(PAVF)の治療方針の第一選択は,コイル塞栓術であるが,術後に一定期間の抗血栓薬の継続を要する.今回,PAVFの関与が疑われる潜因性脳梗塞を発症し,抗血栓療法開始とともに鼻出血が増悪し,遺伝性出血性毛細血管拡張症を疑った1例を経験した.本例ではPAVFの外科的治療により,抗血栓薬を中止し得た.76歳女性.某日起床時より右片麻痺を自覚し,救急搬送された.MRIでは橋左側,左小脳半球に急性期脳梗塞を呈しており,左後大脳動脈閉塞を認めた.造影CTで左肺上葉にPAVFを指摘したが,エコーでは深部静脈血栓を認めなかったため,PAVFの関与が疑われる潜因性脳梗塞と診断した.病前から鼻出血を繰り返していたが,抗血栓療法開始により増悪し,貧血が進行した.胸腔鏡下左肺部分切除術により,PAVFを摘出した.摘出標本よりnidus内に凝血塊を認めた.術後は直ちに抗血栓薬を中止し,脳梗塞の再発なく経過した.

  • 大塚 俊宏, 熊井 潤一郎, 大野 晋吾, 竹田 哲司
    2023 年 45 巻 4 号 p. 348-354
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/03/29
    ジャーナル オープンアクセス

    症例1は55歳,男性.初回塞栓症5カ月後に同一血管領域の塞栓症を再発した.頸部CT angiographyで右頸部ICAに陰影欠損を認め,Carotid Web(Web)による塞栓症と診断した.再発予防に頸動脈ステント留置術(CAS)を行い,術後14日目にmRS 0で退院となった.症例2は48歳,女性.初回塞栓症3年3カ月後に意識障害が出現した.頭部MRIにて右MCA閉塞による塞栓症と診断し,脳血栓回収術を行った.再開通を得たが,右頸部ICAに陰影欠損と遠位の血流停滞を認めた.Webによる塞栓症と診断しCASを行い,術後9日目にmRS 0で退院となった.動脈硬化危険因子のない若年者脳梗塞において,Webが原因となることは以前から指摘されている.塞栓症再発予防のため,以前はCEAを行った症例報告が多いが,近年CASの症例報告も増えてきている.本2症例を含めた過去のCAS症例をreviewする.

短報
  • 大島 仁実, 影山 恭史, 尾市 雄輝, 山田 圭介
    2023 年 45 巻 4 号 p. 355-358
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/25
    [早期公開] 公開日: 2023/02/24
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は62歳男性.左不全麻痺,左上肢知覚異常,意識レベル低下のため緊急入院となり,誤嚥による窒息・呼吸状態悪化を認めたため,挿管・人工呼吸管理とした.その後に施行した頭部CTで,脳室穿破を伴う右視床出血を認め,さらに急性水頭症の所見あり,緊急両側脳室ドレナージ術を施行した.術翌日に意識レベルが改善し,抜管したが,その後も流涎症による唾液誤嚥リスクが高く,再挿管が検討された.流涎症改善の目的で,スコポラミン軟膏を耳介後部の乳様突起付近に塗布したところ,流涎が軽減し,1日吸引回数も減少した.塗布部位の局所反応はなく,副作用としては口腔乾燥を認めたが,口腔ケアで口腔内汚染なく経過した.スコポラミン軟膏は,唾液による窒息・誤嚥リスクを低減し,挿管・気管切開などの侵襲操作なく,呼吸管理できる可能性が示唆された.

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