脳卒中
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症例報告
  • 安部 大介, 桑城 貴弘, 林田 寛之, 有水 遥子, 水戸 大樹, 今村 裕佑, 村谷 陽平, 溝口 忠孝, 田川 直樹, 森 興太, 杉 ...
    2024 年 46 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/09/27
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は86歳の女性.発熱および意識障害を呈した肺炎球菌性髄膜炎に対して,抗菌薬とデキサメタゾンによる治療を開始した.髄膜炎症状は改善したが,四肢の麻痺が出現し,発症7日目の頭部MRIで多発する脳梗塞病変を認めた.D-dimer 49.8 µg/mlと著増していたが,心原性脳塞栓症を疑わせる所見はなく,髄膜炎に伴う頭蓋内限局性のびまん性脳血管内凝固(diffuse cerebral intravascular coagulation)が原因と考えられた.抗凝固療法を開始後は脳梗塞の再発はなく,脳主幹動脈の狭窄や血管壁の増強効果も認めず,血管攣縮や血管炎は否定的であった.細菌性髄膜炎に伴う脳梗塞の治療法は確立されていないが,diffuse cerebral intravascular coagulationの病態に対しては抗凝固療法が有効である可能性が示唆された.

  • 浜田 恭輔, 町田 明理, 牧野 隆太郎, 森 拓馬, 山下 ひとみ, 有水 琢朗, 谷口 歩, 濱田 陸三, 神田 直昭
    2024 年 46 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/10/04
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は73歳男性.起床時に左共同偏視,右片麻痺および全失語に気付かれ,救急搬送された.超急性期脳梗塞の診断で,機械的血栓回収療法を施行する際に左ICA無形成が判明した.左後交通動脈(posterior communicating artery: PcomA)の閉塞を認め,同血管を主要な側副血行路として,左大脳半球領域は灌流されていると判断した.左VAを経由して,閉塞していた左PcomAへアプローチし,同血管の再開通を得て,症状の改善が得られた.ICA無形成は稀な破格で0.01%未満の発症頻度とされる.通常は無症候性だが,主要な側副血行路の閉塞により症状が顕在化する.頭部CTによる頚動脈管の有無の確認や,側副血行路の把握が重要である.通常とは異なる経路でのデバイス誘導が必要な場合があり,デバイス選択の配慮,また潜在的な動脈瘤や動脈硬化性病変の存在に注意した慎重な操作が求められる.

  • 矢野 鉄人, 秋山 茂雄, 前田 有貴子, 福嶋 直弥, 日野 修嗣
    2024 年 46 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/10/17
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は54歳男性.脳梗塞発症翌日に失語が出現した.失語は急速に改善し,一過性脳虚血発作と考えた.第5病日に再度失語が出現し,その後すぐに右半身に,けいれん発作がみられた.発作中に施行した脳波検査で,左前頭葉から頭頂葉を中心とした左大脳半球に持続する律動性デルタ波がみられた.症状および脳波異常は,ジアゼパム投与にて改善したことから,脳梗塞後early seizureと診断した.脳卒中後けいれんは,脳梗塞の約10%で生じるとされている.本症例では,失語が繰り返し出現していたことから,抗てんかん薬ラコサミドを導入した.抗てんかん薬導入後は,神経症状の再燃なく経過した.非けいれん症状で発症する脳梗塞後early seizureは,脳虚血発作との鑑別が難しく,脳虚血発作との鑑別を行うためにearly seizureの可能性を考慮し,診療にあたることが大切であると考えられた.

  • 成清 道久, 壷井 祥史, 広川 裕介, 大橋 聡, 松岡 秀典, 長崎 弘和
    2024 年 46 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/10/12
    ジャーナル オープンアクセス

    急性期主幹動脈閉塞に対して,Willis動脈輪を経由した血栓回収療法の症例報告が散見される.今回,慢性左頸部内頸動脈閉塞を罹患した急性期両側中大脳動脈閉塞に対して,右内頸動脈より前交通動脈経由で血栓回収療法を行い,有効な再開通を得た症例を経験したため,論文的考察を加え報告する.症例は83歳女性.慢性左頸部内頸動脈閉塞に以前より罹患しており,突然の意識障害・失語・四肢不全麻痺で当院へ搬送された.神経放射線画像診断で,両側中大脳動脈閉塞による急性期脳梗塞の診断に至り,発症より約5時間で血栓回収療法を行った.右頸部内頸動脈にガイディングカテーテルを留置し,前交通動脈を経由してステントリトリーバーを用いて血栓回収を行い,左中大脳動脈閉塞の有効な再開通を得た.引き続き,右中大脳動脈閉塞も血栓回収を行い,有効な再開通を得た(発症より6時間37分).術後は両側性に散在する梗塞巣を認めたため,転帰は不良であった.

  • 伊藤 陽平, 加藤 貴之, 西脇 崇裕貴, 今井 直哉, 秋 達樹, 白紙 伸一
    2024 年 46 巻 2 号 p. 149-156
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/10/24
    ジャーナル オープンアクセス

    髄膜血管型神経梅毒が疑われた脳卒中の症例報告を行う.症例は56歳男性で,性風俗店利用中に突然の右上肢脱力と頭痛を来し,救急搬送された.CT, MRIにて少量の円蓋部くも膜下出血および左大脳穿通枝領域の脳梗塞を認め,各種画像検査では両側脳主幹動脈の複数領域にわたる狭窄性変化がみられた.入院時の採血で梅毒反応陽性であり,髄液検査を追加したところ,細胞数112/µl,蛋白95.0 mg/dl,TP抗体定量149.6 COI,RPR定量10.6 R.U.と上昇しており,髄膜血管型神経梅毒と診断した.ペニシリン点滴静注とステロイドパルス療法を行い,髄液RPR定量は0.1 COIに陰性化するとともに脳主幹動脈の狭窄性病変は改善し,自宅退院となった.頭蓋内出血を伴う髄膜血管型神経梅毒は稀な病態であるが,梅毒患者増加に伴い同様の症例が増える可能性がある.他疾患との鑑別を慎重に行い,迅速にペニシリン投与を行うことが重要である.

  • 中野 孝宏, 安部 裕子, 濱本 暁子, 米田 明日香, 田中 愛実, 上田 直子, 池田 充, 原 斉
    2024 年 46 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/01
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は,68歳男性.転移性肺癌に対する胸腔鏡下左肺下葉切除術の翌日,意識障害・左片麻痺の状態で倒れているところを発見された.NIHSSは25点であり,頭部MRI検査のDWIでは,右基底核から放線冠に淡い高信号病変を,MRAでは右内頚動脈の閉塞を認め,超急性期脳梗塞と診断した.経皮的脳血栓回収術を施行し,完全再開通を得た.胸部造影CT検査で左下肺静脈の断端部に血栓を認め,塞栓源と考えた.肺静脈断端部の残存血栓については,抗凝固療法を継続しつつ慎重に経過観察を行った.頻回の造影CT検査を避けるため,心臓MRI検査で血栓の経過観察を行い,血栓の消失を確認した.心臓MRI検査は肺静脈断端部血栓の評価および経過観察においても非侵襲的かつ有用な検査方法である.

  • 倉内 麗徳, 恩田 敏之, 高橋 賢, 稲村 茂, 野中 雅, 大坊 雅彦
    2024 年 46 巻 2 号 p. 162-167
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/02
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は70歳男性.意識障害を主訴に当科に救急搬送された.MRIでは左前大脳動脈水平部(A1部)から両側前大脳動脈垂直部(A2部)の閉塞と,両側前大脳動脈領域の急性期脳梗塞を認めた.直ちに血栓回収療法を行い,右A2部は再開通したが,左A2部を再開通させることはできなかった.術中や術直後には頭蓋内出血はみられなかったが,治療2日後に前交通動脈に仮性動脈瘤が出現し,くも膜下出血と水頭症を認めた.脳室ドレナージと左A1部の母血管閉塞を行った.心エコーで大動脈弁に疣腫の付着と血液培養で Enterococcus faecalisが検出され,感染性心内膜炎と診断した.セフトリアキソンやバンコマイシン,ピペラシンによる抗菌薬加療を行い,感染徴候は軽快したが,突然心停止し死亡した.感染性心内膜炎などの感染を背景にした塞栓症では,血栓回収が難しいことや,遅発性に動脈が破裂することがあり,注意が必要である.

  • 金丸 拓也, 木戸 俊輔, 阿部 新, 大久保 誠二, 木村 和美
    2024 年 46 巻 2 号 p. 168-173
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/01
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は73歳男性.ふらつきを主訴に救急搬送された.頭部MRIで大脳半球や小脳半球に散在性梗塞を認めた.各種塞栓源検索では明らかな原因は指摘できなかったが,既往に右上腕骨未分化多形肉腫があり,入院中の体幹部CTにて多発遠隔転移が疑われ,本例は癌関連血栓症(CAT)による脳梗塞と考えられた.ヘパリンカルシウム皮下注射を開始し,再発なく経過していたが,直接作用型経口抗凝固薬に切り替えてから2週間後に塞栓性脳梗塞を再発した.CATは,腺癌に多いとされ,腺癌細胞が分泌するムチンにより形成される微小血小板血栓が関与しているといわれている.しかし,腺癌以外の悪性腫瘍によるCATの報告も散見され,特に,遠隔転移を有する症例において血栓症のリスクが増大することが知られている.遠隔転移を伴う悪性腫瘍患者が塞栓性脳梗塞を起こした際は,腺癌でなくても本症例のように癌関連血栓症の可能性を念頭に検索する必要がある.

  • 西田 恭優, 今井 資, 雄山 隆弘, 川端 哲平, 野田 智之, 槇 英樹
    2024 年 46 巻 2 号 p. 174-179
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/25
    [早期公開] 公開日: 2023/11/08
    ジャーナル オープンアクセス

    COVID-19に合併した内頚動脈解離によるくも膜下出血の報告は,稀である.今回,COVID-19に合併した破裂性内頚動脈解離に対してclipping on wrappingを行い,良好な経過を得た症例を経験した.症例は52歳男性.COVID-19罹患後5日目に意識障害で当院搬送され,頭部CTで水頭症を伴うくも膜下出血を認めたが,明らかな動脈瘤を指摘できず,脳室ドレーンによる頭蓋内圧管理とCOVID-19に対する内科管理を行った.経時的な画像検査で,左内頚動脈C1部に血管拡張と極小型脳動脈瘤を認め,解離性内頚動脈瘤と診断し,第16病日に開頭手術を行い,第77病日にmRS4でリハビリ転院した.COVID-19に合併したくも膜下出血は,解離発症の報告が多いものの内頚動脈解離の報告例は少なく,外科的治療戦略は一定の見解がないが,感染の活動性,動脈瘤の病態など,症例ごとに判断する必要がある.

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