日本家政学会誌
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49 巻, 3 号
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  • 谷口 彩子, 亀高 京子
    1998 年 49 巻 3 号 p. 223-234
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    『経済小学家政要旨』は, 明治初期に最も普及した翻訳家政書である.本研究の目的は, その原典ハスケル夫人『主婦百科』とビーチャーの家政書3冊との比較を通して, わが国の科学としての家政学の出発点ともいうべき『主婦百科』の特質を解明することにある.ハスケル夫人『主婦百科』は, ビーチャーの家政書の二つの系統の中間の性質を有している.両者はともに, 家政学の体系化と科学化の二つの傾向がみられる.しかし『主婦百科』は, ビーチャーに比べて, 家政のあらゆる領域を貫く原理的な考え方が希薄である.わが国の家政学の領域構成は, わが国で受容可能な家政理念や内容を選択・訳出した翻訳者永峯秀樹によるところが大きい.産業革命期のアメリカにおける生活変化に対応するために, 主婦を対象として刊行されたハスケル夫人『主婦百科』の家政理念は, やがてわが国でも出現する中流階級の主婦の育成に備えるという時代の先取り的な役割を果たしたと考えられる.
  • 高橋 節子, 海老原 昌絵, 貝沼 圭二
    1998 年 49 巻 3 号 p. 235-241
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    新形質米の米粉および澱粉の性質を知る目的で, バスマテー型香り米のサリークイーン, 低アミロース米の道北43号, 多収米のオオチカラ, 巨大粒米のハバタキ, インディカ系高アミロース米のホシユタカの5種を日本晴と比較した.測定は膨潤力・溶解度, フォトペーストグラフィー, ビスコグラフィー, ゲルのテクスチャーを求め, ゲルの離水率, ハンター白度の測定からは低温貯蔵安定性を検討した.90℃における米澱粉の膨潤力は17~26を示し, 高アミロースのホシユタカが低く巨大粒のオオチカラは大であり低アミロースの道北43号・日本晴は膨潤しにくい.米澱粉の透光度上昇温度は58~64℃を示し, ホシユタカは低く日本晴は高く, 添加物の影響では食塩・ショ糖が顕著であった.粘度測定から香り米のサリークイーンは粘度が高く, ホシユタカはコーンスターチに近似の曲線を描き, 米粉は米澱粉に比べて糊化温度が高く粘度は低い.澱粉ゲルはホシユタカ, 香り米のサリークイーンは硬さがあり日本晴は軟らかく低アミロース米の道北43号はこれらの中間であった.ビスコグラフィーで冷却25℃まで攪拌を継続したゲルは, ゲル化が阻害され硬さが低下し付着性が増大した.低アミロース米の道北43号は離水・白度が低く, ホシユタカは老化しやすく不透明なゲルであった.本報告で用いた新形質米各種は幅広い性質を示し, いろいろな調理や加工に利用できることが明らかとなったことから, 今後は北アフリカ料理のクスクス, 団子やういろうなど伝統的な和菓子や蒸し菓子などの調製について検討を行う予定である.
  • 今井 悦子, 田丸 理恵, 畑江 敬子, 島田 淳子
    1998 年 49 巻 3 号 p. 243-253
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    口腔内で食品粒子を粒子として認識する際の最小粒度および粒子の大きさの識別の程度について官能的に明らかにし, さらにそれらと食品物性との関係を検討した.細砕した9種類の食品材料を約1.2倍の等比間隔にある標準ふるいを用いて水中でふるい分けし, 試料 (水懸濁液) とした.認識最小粒度は, セルロースの34μmが最小で, 最大は1%寒天ゲルの380μmであり, 材料によって著しく異なった.また粒度の識別の程度は, はんぺんとパン以外は, ある粒度以上において平均1.2倍異なる粒伸の識別ができること, また, そのある粒度 (識別最小粒度とする) は材料によって異なることが明らかになった.以上の認識最小粒度および認識最小粒度は, 材料の物性値のうち水分含量, 変形定数および密度等の物性値と関係が深いと考えられた.そこで認識最小粒度と識別最小粒度を, 材料の物性値を用いて数値化することを重回帰分析を用いて試みたところ, それぞれ変形定数などを用いた重回帰式で表すことができた.
  • 着崩れおよび官能評価に関連して
    三野 たまき, 上田 一夫
    1998 年 49 巻 3 号 p. 255-267
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では, 静立位の浴衣圧・それに対する官能評価・体型・浴衣の着崩れとの関係をSPEARMANの順位相関を用いて検討した.被験者は20~30歳代の成人女子5名であった.浴衣圧 (液圧平衡法を使用) は呼吸運動や動作などの様々な因子によって変化した.浴衣圧は主に腹部に発生していた.最も高い圧が計測されたのは帯の下層の, 浴衣と腰紐との問の水平面であった (静立位では10.7±9.7mmHg (14.6±13.2gf/cm2), 正座位では 18.9±10.8mmHg (25.7±14.7gf/cm2)).トップバストとアンダーバストの差が大きい被験者ほど, 胸元の着崩れ量が多かった.右脇線の着崩れ量は腰紐の締め方に依存した (20mmHg (27g /cm2) を超えないように, 腰紐をしめるべきである).胸元の着崩れ量が多い被験者ほど, 圧感覚 (締め感覚) の大きさは小さかった.
  • 小谷 スミ子, 加藤 征江, 粟津原 宏子
    1998 年 49 巻 3 号 p. 269-276
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    オボアルブミン (OVA) をトリプシンまたはキモトリプシンで消化して得られたペプチドの抗原性と一次構造を調べた.消化ペプチドをトリシン-SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分離し, イムノブロット法で抗原性を検出したところ, トリプシン消化で分子量 5,520以上, キモトリプシン消化で分子量 7,280 以上のバンドはすべて抗OVAウサギIgG抗体と反応した.抗原1生を示すペプチドをゲルから PVDF 膜にプロットしたのち, 気相シークエンサーでN末端アミノ酸配列分析を行い一次構造を推定した.これらのアミノ酸配列のうち, 抗原性を示す領域および抗原性を示さない領域から抗原決定基と考えられる部位は, OVA 253~261 (または 264) に含まれることが示唆された.
  • 麻見 直美, 江澤 郁子
    1998 年 49 巻 3 号 p. 277-282
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    卵殻カルシウムは, 種々の健康食品やカルシウム剤にカルシウム源として広く使われている.しかしながら, 卵殻カルシウムの骨に対する検討は未だ十分に行われていない.そこで, われわれは, これまでに様々な他のカルシウム源の骨に対する効果を検討してきた方法を用いて, 卵殻カルシウムの骨に対する効果を検討した.その結果, 卵殻カルシウム食群の腰椎および脛骨近位部骨密度は, コントロール群に比べ有意な高値を示した.また, 卵殻カルシウム群の脛骨骨幹部骨密度, 骨強度, 灰化重量/乾燥重量が, コントロール群に比べ高値傾向を示した.これらの結果から, 卵殻カルシウムは卵巣摘出による骨量減少を抑制する効果があると考えられ, 骨粗鬆症の予防に有効なカルシウム源である可能性が示唆された.
  • 香西 みどり, 山本 文子, 畑江 敬子, 島田 淳子
    1998 年 49 巻 3 号 p. 283-287
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    ダイコンの硬化現象に及ぼす圧力および温度効果を比較検討した.1cm角のダイコンに室温で400MPa, 2hの高圧処理あるいは60℃, 2hの加熱処理を行った.加熱処理の方が破断荷重, 破断距離のいずれも変化が大きかった.処理後の加熱による軟化の99.5℃における速度定数は加圧処理では未処理の約52%, 加熱処理では約24%に低下した.ペクチンのエステル化度の低下はいずれの処理においてもほぼ同程度であった.いずれの前処理によっても水溶性ペクチンおよび水溶性カルシウムイオンは減少し, ヘキサメタリン酸可溶性ペクチンは増加した.食塩可溶性カルシウムイオンは加圧処理によってわずかに増加しただけであったが, 加熱処理では有意に増加がみられた.
  • 飯盛 和代, 江藤 孝秀
    1998 年 49 巻 3 号 p. 289-294
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    The pigment from dry leaves of perilla was stable when preserved in a paper bag for a year. The color tone was almost the same as that of fresh leaves. The effects of pH and metal ions on the color tone of pigment from dried perilla was studied by the spectrophotometric method, using copper, iron, aluminium, lead and tin as the metal ions. The pigment solution became red under acidic conditions and formed chelated compounds by the reaction with several metal ions. Optical microscopy revealed that the pigment from dried leaves of perilla was black and adhered to the cell wall. This pigment was highly soluble in water and formed a red solution. The color tone of this red solution was same as that of the pigment solution extracted by boiling water from fresh leaves of perilla.
  • 小林 重喜, 山内 和子
    1998 年 49 巻 3 号 p. 295-301
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    In this paper, the conditions for dyeing cellulose in red with anthocyan were suggested.
    Cyanidin and pelargonidin were used as anthocyan. The number of hydroxyl group in the B ring in the chemical structure of anthocyanidin is two in the former and one in the latter.
    The results obtained were as follows :
    Cellulose treated with acidic materials such as tannic acid or thyntan were dyed in red with anthocyan solutions adjusted to pH 2, 3.4 and 4.
    Then, the important factor to consider when dyeing in red with anthocyan is to ensure that the acidic materials are free from constituents which form chelates with anthocyan, and that the anthocyan molecule does not have the structure to form chelates with metal ions in the mordants.
    Silk was directly dyed in red effectively in an acidic solution of anthocyan.
  • スージャ ムーン
    1998 年 49 巻 3 号 p. 303-306
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    21世紀の家政学の方向性とは, 20世紀の生活システムの分析による細分化・専門化の是正であり, 生活システムを全体的・包括的視点から捉えて総合化・統合化することが求められている.そこで, 公害, 貧困, 高齢者, インフレ, 暴力等現代的生活問題を包括する新しいパラダイムを構築しなければならず, 人間生態学による研究が有効になろう.21世紀の家政学である人間生態学はこれまでの科学・家政学の研究成果とは異なる新しい学問である.それは全体的・包括的視点に基づく研究, さらに基礎学問を含め家政学各分野からの知識を相互関連させ統合化・総合化して生活の質の向上への貢献を行うことであり, それにより家政学が独自性のある研究分野として専門性を与えられることになろう.将来の指導者となる若い世代に, 従来の細分化した視点を捨て, 地球規模で広く見通すことの重要性を教えることが必要である.
  • ピルコヴスキー ミカエルーブルクハルト
    1998 年 49 巻 3 号 p. 307-310
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    持続可能な発展は国内的・国際的環境政策の主要目標であり, 環境関連科学の偉大なパラダイムである.持続可能な発展は, 持続可能な家事労働と消費を必然的に含んでいる.ドイツのような議会制市場経済においては, 世帯員は, 消費者として, 労働者として, 投票者として経済過程の遂行に重要な役割を演じている.より持続可能な発展のための生活様式の選択は単に理論的背景においてではなく, 経験的データの基礎の上で特徴づけられる.本報では, 第1に, 経済システム, 私的家政及びエコシステムの問の内的関連についてのアウトラインが示される.その際, 特別の関心が, 環境を配慮した消費者の行動に向けられる.第2に, 持続可能性の基本パラダイムと, それと関連する持続可能な消費スタイルのタイプがとりあつかわれる.最後に, ドイツにおける消費者行動の各種経験的調査と持続可能な消費スタイルのケーススタディから得られた結果が示される.
  • スー・ジャー ムーン
    1998 年 49 巻 3 号 p. 311-314
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    韓国の家政教育は, 男尊女卑の儒教思想の影響を受けた女子教育として, 家庭内での女役割の教育に端を発している.大学レベルでのフォーマルな教育は1929 年にイーファ女子大学で始まったが, 1948 年の新教育法の成立により, 家政学は初めて学問として認められた. 1960年代には経済発展という国の方針にそって, 家政学は, その科学性が強調され, 実用主義的教育が主流となった.1970 年代には専門性が強調され, 家政学は専門分化し, 家庭や家族領域に焦点をあてるという家政の独自性は失われた.その結果, 1980 年代には家政の名称変更が盛んに行われた.1995 年に提案された政府の大学再編策は, 家政学も例外ではないが, これを好機と捕え, (1) 技術・技能中心から理論への転換, (2) 学校教育だけでなく生涯教育の中での家政学教育の展開, (3) ライフプランニングなどの専門職の開発という3つの新たな方向を指向していきたい.
  • 金子 ひろみ
    1998 年 49 巻 3 号 p. 315-317
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    私は, 1997年4月15日からアトランタオリンピックの女子マラソン試合当日まで, 有森選手の食事サポートを全て行ってきました.その報告とスポーツ栄養の重要性, これからのあり方や管理栄養士の現場での役割についてお伝え致します.
  • 秦 考一
    1998 年 49 巻 3 号 p. 319-320
    発行日: 1998/03/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    親世帯と子世帯の同居は日本の伝統的な住まい方であるが, さまざまな社会状況の変化により, その在り方も変化してきている.
    特に, 昭和40年代の高度経済成長期に急激な人口流入があった大都市及びその近郊地域では, 近年, その子世代が世帯形成期を迎えており, 地価高騰に伴う住宅取得難という事情もあって親世帯所有の土地に二世帯同居型の住宅を建築するケースが増加している.これらは, 「家」制度の元で伝統的に行われてきた親子世帯の同居とは違った新しい価値観での親子同居である.
    旭化成ではこの新しい親子同居の住まいとして, ひとつ屋根の下でも親世帯, 子世帯がお互いの独立性を保ちながら快適に暮らすことのできる「二世帯」を昭和 48 年より提案してきた.
    当研究所は, 二世帯住宅について, 建築学をはじめ, 心理学, 家族社会学など学際的な調査・研究を行い, 二世帯同居家族のより豊かな暮らしの実現に寄与することを目的として 1980 年 (昭和 55年) 5 月に設立された.
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