日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
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38 巻, 7 号
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  • 堤 ちはる, 森内 幸子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 547-552
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    ニワトリ胚を用いて, 骨ならびに血清BGP含有量に及ぼすT4投与の影響を, 骨代謝と関連させながら観察した.
    T4を10日目胚 (1μg/chick), ならびに14日目胚 (1あるいは2μg/chick) に投与したが, 10日目胚に投与した場合だけ, T4投与による骨のBGP含有量の減少ならびに血清BGP含有量の増加が観察された。また, 骨ならびに血清カルシウム含有量の減少傾向, 血清Al-P活性の増加傾向も, T4投与により観察された.
    以上の結果から, ニワトリ胚の孵卵10日目にT4を投与することにより血清BGPレベルが増加し, 骨BGPレベルが減少したのは, 骨吸収が促進されたためであろうと推察された.さらにT4の投与時期が重要であることが明らかにされた.
  • とくに抽出条件を異にするペクチン質の理化学的性質について
    澤山 茂, 永島 伸浩, 川端 晶子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 553-558
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    新鮮なニンジンおよびカブの食物繊維, とくにペクチン質について異なるpHの抽出条件で調製して検討した結果は次のようであった.
    1) ニンジンの総遊離糖含有量は, 新鮮物中3.66~4.16%であり, そのうちシュークロースが約80%を占めていた.カブでは, 新鮮物中0.89%であり, そのうちフラクトースが83%, グルコースが36%であった.
    2) ニンジンの食物繊維含有量は, 新鮮物中2.32~2.43%であり, リグニン : ヘミセルロース : セルロース=1 : 1 : 1.5の比率であるのに対し, カブでは, 新鮮物中1.40%であり, 比率は1 : 5 : 2でヘミセルロースの割合が最も高かった.
    3) 異なったpHでペクチン質を調製した結果, ニンジン, ヵブの両試料ともpHが低い条件でAGA含有量が多く, 分子量も大で, メトキシル基含有量も高かった.また, 中性糖は, いずれの試料も, マンノース含有量が高く, 続いてキシロース, アラビノース, フラクトースの順に多かった.
  • 川染 節江, 山野 善正
    1987 年 38 巻 7 号 p. 559-566
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    卵200g, 砂糖100g, 薄力粉100g, ベーキングパウダー0.5g, 融解バター80gのバタースポンジケーキのバッター攪拌時間を10~120秒までとする6種類の試料を用い製品のテクスチャーに及ぼす影響を検討し, 次のような知見が得られた.
    1) バッターの比重と見かけの粘度は, 攪拌時間が長くなるほど増大し, 正の相関性が強かった.この見かけの粘度はバッター20gが10秒間に8mmのセルの孔から流動する量で表した.
    2) ケーキの比容積は, 30秒の試料が最大でバッター攪拌時間が長いほど小さくなり, バッターの消泡作用が生じたことが明らかである.その変化は30~45秒および90~120秒の間で著しかった.
    3) ケーキの硬さ, ガム性およびそしゃく性の3物性値は, バッター攪拌時間が長いほど増大し, 比容積との間にそれぞれ有意な負の相関性が得られた.
    4) 官能評価の「口あたり」の評点と攪拌時間との間には負の相関性が得られた (r=-0.913, α=0.05).また, 「口あたり」と比容積の間には正の相関が得られ, 「口あたり」と硬さ, ガム性およびそしゃく性との間に負の相関性が強かった.
    5) 攪拌時間の短い30, 45, 60秒の3試料の「好ましさ」は, クレーマー検定により30秒が有意に好まれ, 45秒と60秒には差がなかった.
    以上の結果から, バタースポンジケーキのテクスチャーと官能性にはバッターの攪拌時間の影響が大であり, 小規模の場合, 30秒前後の攪拌が口あたりのよい製品を得るために適当であると判断された.また, 今回新たに考案した, バッターの流動量の測定法は見かけの粘度の指標になりうると考えられる.
  • 貝沼 やす子, 江間 章子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 567-575
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 飯の糊化度は炊飯直後には加水比 (重量比) の多少にかかわらず95%前後を示したが, 炊飯24時間後には加水比の少ない飯ほど低い糊化度を示した.加水比の多少により, 糊化に伴う分子の分散の状態に違いがあり, その差が老化の進み方を左右したと考えられる.
    2) 沸騰開始期の残存液量測定の結果, 加水比1.2倍以下では水の対流を伴う事実上の沸騰期はないと考えられる.また, 飯洗浄液中の糖の分解率は, 残存液中の糖の分解率より高く, 飯粒のまわりには, ある程度分解の進んだものが付着していると推察される.
    3) 飯のテクスチャーは, 加水比1.3倍以上と1.2倍以下の飯では性状を異にしていることがわかった.加水比の少ない飯ほど鍋の部位による差が著しく, 水の対流を伴う沸騰期のないことによる影響が大きいと考える.また加水比の少ない飯ほど炊飯24時間後のテクスチャーの変化が著しく, 糊化度の低下に見合った変化を示した.
    4) 飯の水分含有量は加水比の増加に伴い多くなる.鍋の部位間に多少の差がみられ, 鍋中心底部の加水比1.4倍, 1.5倍での増加は著しい.この部位の飯は脱水速度が大きく, 飯粒表面付近の動きやすい水分の増加と思われる.
    5) 飯粒の大きさは加水比を増すに伴い大きい飯粒が増加する.鍋の部位間による差は加水比の少ない飯に顕著であり, 飯のテクスチャーと同様の傾向である.
    6) 飯の色は加水比の増加に伴い黄色味が減少した.
    7) 官能検査結果では, 加水比1.3~1.4倍が総合的に高い評価をうけた.しかし, 飯として好まれる性状をもたらす加水比の範囲には, かなり幅があり, 飯を評価する場合のむずかしさを再認識した.
  • 山本 純子, 加藤 雪枝, 椙山 藤子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 577-584
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    Representation of color of a garment and the correlation between the color and illuminations are discussed in this paper.
    For this study, skirts of four designs were made of four polyester fabrics of different colors. Three kinds of fluorescent lamps were used. A high-speed tele-spectral color analyzer was used for the measurement of spectral reflectance at 45-55 selected points on the surface of each skirt.
    The results are as follows :
    1) The difference between the highest reflectance and the lowest one on spectral reflectance curves for a skirt relates to the design. The difference was the largest in the case of flare skirts.
    2) Distribution of color of a garment in wear can be estimated from the ordinary color measurment of the cloth.
    3) According to the principal component analysis, spectral reflectance was found to consist of three elements. The nature of a color or its complementary color is characterized by the second factor curve.
    4) The spectral reflectance curve of color of a garment under a fluorescent lamp is resulted from the combined effect of the color of the cloth with spectral energy distribution of the lamp.
  • 丸山 康子, 田村 照子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 585-592
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    The human body is a senser in wearing test. In this paper, the body and skin temperatures on the same subject were measured repeatedly (28 times) under the same thermal condition, and the intra-inter individual differences were examined in order to clarify the reproducibility of the sensor. Subjects were three healthy female students. They, wearing of overall type clothes of 1.21 clo, were exposed for 1 hr at 20°C in room temperature, and they almost felt comfortable under this condition. The results were as follows :
    1) Skin temperature distributions obtained in this study (20°C, 1.21 clo) were much lower in head and slightly higher in trunk and extremities than the results obtained in previous study (28°C, 0 clo). But there was no difference of mean skin temperature, 33°C, between two studies.
    2) Rectal and mean body temperature showed the least intra-individual differences, and mean skin temperature followed them.
    3) Among the local skin temperatures, intra-individual differences were small in epigastrium, thigh, leg and back, and were large in toe, foot, cheek and finger.
    4) Inter-individual differences were large in back, epigastrium, forearm, mean skin and finger and were small in foot, cheek and upperarm.
  • 藤原 康晴
    1987 年 38 巻 7 号 p. 593-598
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    心理的な快適さを与える被服についての知見を得るために, 理想的自己概念, 現実的自己概念と好きな被服, 嫌いな被服のイメージとの類似性を検討した.自己概念および被服のイメージの双方を評定できる形容詞対30項目を用いて測定した結果を因子分析し, 一般的望ましさと個性の二つの因子を抽出した.各被験者の因子得点の平均値をそれぞれ概念別に第1因子と第2因子で構成される意味空間にプロットしたところ, 理想的自己, 好きな被服, 現実的自己, 嫌いな被服の順にほぼ直線上に布置された.好きな被服のイメージは, 距離的には現実的自己概念に近いけれども, 理想的自己概念の方向に位置しており, それとは逆の方向に嫌いな被服のイメージが位置づけられた.
    さらに, 理想的自己概念と好きな被服のイメージとの関連性を検討するために, 別々に因子分析を行い, いずれも一般的望ましさ, 個性, 情緒性の3因子を抽出した.これらの因子間の相関を求めた結果, 一般的望ましさを理想的な自己と考えている者は, 一般的望ましさを与えてくれる被服を好む傾向があり, 個性的であることあるいは情緒的であることを理想としている者は, それぞれ個性的あるいは情緒的なイメージの被服を好んでおり, 心理的な快適さを与える被服として理想的自己のイメージを投影する被服があることがわかった.
  • その意識に関して
    町田 玲子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 599-606
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本稿では, 明治時代の文献において家事労働空間がどのように考えられているか, またそれはどのような意識に支えられたものなのかについて, その特徴を明らかにしようとした.
    その結果, 明治時代は四期に大別でき, それぞれ次のような意識面での特徴がみられた.
    1) 明治10年代までは住宅選択条件の一つとして, 家事労働空間のあり方がとりあげられたが, それは命を守るためのすまいとして衛生面を重視する意識によって支えられていたといえるだろう.
    2) 明治20年代は, 英米の家庭経営に関する知識をわが国の生活に対応させようとする試みがなされ, 文献記述にもそれがうかがえる.つまり, 家庭経営に不可欠な労力・時間・金銭という資源が家事労働空間のあり方を考えるさいにも効率的であるべき, とする意識がみられた.
    3) 明治30年代に入り, 住宅改良に関する考え方がひろくあらわれてくる.それに伴い家事労働空間の改良の提案もされて, 誰のために, 何のために, という具体的な改良意図が意識されはじめる.
    4) 明治30年代末ごろには女中難が一つの契機となり, 主婦に対する負担の少ない家事労働のあり方が問題にされて主婦の移動の能率性が意識され始める.これは当時用語としては用いられていなかったが, 「動線」についての素朴な考え方の端緒となるべきものであったといえる.
    本稿では主として文献にあらわれた家事労働空間の意識の特徴をみたが, それが実際の住生活とどのように関わるかについて考察することも合わせて行わなければならない.本稿によって家事労働空間に対する意識が, 明治前期のころはやや漠然としていたが, 後期に入ってしだいに具体的, かつ意図的になっていったことが傾向として把握できた.この結果をふまえて, すまい方と関連させた考察を今後行っていきたい.
  • 着衣部の表面温度の決定方法
    尹 貞淑, 中根 芳一, 上林 博雄
    1987 年 38 巻 7 号 p. 607-610
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    In order to calculate exactly and quantitatively the radiant heat exchange between the human body and indoor space in low temperature radiant heating system, it is pursued to determine the clothing surface temperature.
    In this paper, first of all, the clothed body's heat resistance in the literature which have great influence on radiant heat exchange was investigated, and pursued about the applicable formula.
    And, for the sake of making it easy to calculate the applicable formula, a diagram has been designed to make it easy to find the value of the clothing surface temperature and the clothing heat resistance.
    Thus, this study may be used as a basic resource for not only quantitatively radiant heat exchange of clothed body and unclothed body in low temperature radiant heating system, but also designing the thermal environment in a room.
  • 交流の実態と交流に影響を与える要因
    田中 幸恵, 黒田 玲子, 菊澤 康子, 戸谷 修
    1987 年 38 巻 7 号 p. 611-622
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    急増しつつある老年世代と, 将来の高齢化社会の担い手である若年世代との, 新しい交流のあり方を探るための基礎調査である.
    大学生を対象に, 別居している祖父母全員1,239人との交流を実態調査したものを報告するとともに, 交流に影響を与える要因を分析した.
    1) 実態調査の結果
    i) 交流方法別にみた場合
    訪問は, 孫から祖父母へ年2~3回する者が多いのに対し, 祖父母から孫へはめったにしない者が多い.
    電話は, 孫から祖父母へはめったにかけない者が多く, 祖父母から孫へも同様である.
    贈物は, 孫から祖父母へはめったに贈らない者が多いのに対し, 祖父母から孫へは年2~3回贈る者が多い.
    手紙は, 孫から祖父母へはめったに出さない者が多く, 祖父母からも同様である.
    ii) 交流の働きかけ別にみた場合
    孫から祖父母べは訪問, 祖父母から孫へは電話, 贈物がよく行われ, 祖父母から孫への交流量が多い.
    2) 交流に影響を与える要因
    i) 交流に大きな影響を与えるのは訪問に要する所要時間である.次いで, 孫の性別, 祖父母の居住形態, 祖父母の生活形態, 祖父母の続柄, 孫の居住地である.
    ii) 所要時間別にみると, 訪問, 電話, 贈物では, 所要時間が短いほど交流が多く, 手紙では, 所要時間が長いほど多い.
    iii) 孫の性別にみると, 電話, 贈物, 手紙では, 女子学生のほうが, 男子学生より交流が多い.
    iv) 祖父母の居住形態別にみると, 訪問, 電話, 贈物では, 別居のほうが, 他の子家族と同居, その他の場合よりも交流が多い.
    v) 祖父母の生活形態別にみると, 訪問, 電話, 贈物では, 1人で暮らしている祖父母のほうが, 他の子家族と同居している場合よりも, 交流が多い.
    vi) 祖父母の続柄 (父方, 母方) 別にみると, 訪問では父方のほうが交流が多く, 電話, 贈物では母方のほうが交流が多い.
    vii) 孫の居住地別にみると, 電話では, 市部に住む孫のほうが, 郡部に住む孫よりも交流が多い.
  • 高等学校衣生活教育に関する考察 (第1報)
    加藤 敏子, 大森 和子, 藤枝 悳子, 金原 ちゑ子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 623-633
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    高等学校における衣生活教育はいかにあるべきかを考えるために, 高校女生徒の家庭の衣生活管理の実態を調査し, 筆者らが昭和44年に実施した調査研究とくらべて, その間の変化と現状を把握しようとした.
    調査結果は, 大要次のとおりである.
    1) 家庭での洗濯方法は, 洗濯機の普及により, ほとんどの家庭が洗濯機と手洗いを併用している.
    2) クリーニング店の利用度については, ワイシャツ, シーツなど洗濯機で洗えるものは, クリーユング店の利用度は減少しているが, 毛のスカート, セーター, ゆかたは利用度が大幅に増加している.今後も生活水準の向上, 有職の母親の増加により, 各種衣類の洗濯にクリーニング店の利用度は増加すると思われる.
    3) 新洗剤や布地などについての情報源は, テレビによるというのが86%と最も多く, 家庭生活におけるテレビの影響力の強さを物語っている.
    4) 衣類をどこで廃品とするかの調査で, 母親は下着類を前回より劣化の度合いの少ない段階で不用としていることが判明し, 衣生活の水準が上昇してきていることが推測される.高校生と母親を比較すると, 年齢の違いによる生活態度の違いがみられたが, その差は前回より減少している.また外出着を型が古いため廃品とする割合は前回より減少している.これは服の型や着方が多様化し, 個性化が進み, 自分の気に入ったものは流行にとらわれず永く着用する傾向の現れと思われる.一方, 上着類の虫害を受けたり, しみがついているため廃品とする割合は増加して, 衣類の手入れ, 保管の行き届かない状態を示している.
    5) まだ着用可能な衣類の処理方法については, 「親類や知人にあげる」家庭は65.9%と最も多く, 次いで「しまっておく」となっている.「衣類以外のものに作りかえて用いる」割合は減少し, 「ごみとして捨てる」が増加している.
    6) 既製服 (ワンピースドレス, ブラウス, スカート) を購入するさいの留意点については, 第1が「デザイン・色」で, 次いで「価格」, 「着具合」, 「材質」, 「仕立て方」の順で, 「取り扱いの難易 (取り扱いの絵表示を見る) 」は重視されていない.
    7) 衣類に関する苦情では, 色落ちが最も多く, 次いで縫いつれ, 縫い代不足など.破損, クリーニング事故, かぶれなどの衣料障害もある.
    また衣類に関する苦情が生じた場合, そのままにして, どこにも苦情を申し出ない者が68.1%と多かった.
    以上のような高校女生徒の家庭の衣生活管理の調査結果からみて, 高校の衣生活教育では, 消費者教育との関連を考え, 次のようなことに注意する必要がある.
    (1) 衣類が容易に入手できる豊かさの中で, 衣類を大切に取り扱う心が欠けてきていると思われる.資源の活用上からも衣類を大切にすることの必要を認識させ, 衣類の洗濯, 手入れ, 保管, またクリーニング店の利用などを合理的に行い, 衣類の使用価値を十分に利用できるようにする.
    (2) 衣類の製作, 補修などできる基礎的技術の習得は資源の有効な活用に必要である.
    (3) 衣類の購入, 衣類をどの程度で不用とするかの決定などについては, 家庭の状況を考え, 適切に判断し, 選択し, 決定することのできる能力を養う.不用衣類 (使用可能なもの) や死蔵衣類の処理方法を各自工夫すると同時に, 社会的な関心を養う.
    (4) 衣類を適切に選択・購入し, 合理的な取り扱いをするとともに, 問題が起こった場合の苦情処理の方法を知り, 解決を図っていく.苦情を申し出ることが企業に良質のものを作らせることになるという, 積極的な姿勢を身につけ, 消費者の権利を社会的に確立していく必要がある.
  • 高等学校衣生活教育に関する考察 (第2報)
    金原 ちゑ子, 藤枝 悳子, 大森 和子, 加藤 敏子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 635-642
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    以上の調査結果と考察をもとに, 高等学校における衣生活教育のあり方を, 消費者教育との関連を考慮して研究した結論として次の6点をあげる.
    1) 高校女生徒は, 身だしなみよく着たり, 自分にあう服装を工夫したりして楽しんでいる者や, TPOに応じて個性的に装うことを望ましいと考えている者が増加している.これらのことは, 学習事項として個性的な服装のととのえ方とその常識を身につけたいと希望する者の多いことによってもわかる.自己にふさわしい被服を適切に着用して個性を表現することが重視され, 衣生活の審美性・快適性の追求および好みや楽しみ志向が強くなっているとみられる.椙山らの著書に, 高度な科学的技術の発達, 生活水準の上昇に伴って生活意識が変化し嗜好性が強まり, 多様化現象を示し, 人間的に豊かな衣生活を望むようになってくる, 現在の衣生活の傾向をみると, 合理化と感覚化の現象が共存しており, さらに多様化, 流動化, 消費化などの現象も考えられるとあるが, こうした傾向は今後いっそう強まることと思われる.また, 清潔で身だしなみよく着るように心がけている者も多く, 健全な衣生活の状態がうかがわれる.
    以上のことから, 人間と被服との関係および被服の機能を考えて衣生活を設計し, 被服の使用価値を大にする工夫創造の能力を育てるようにする必要がある.この場合, 着用者の体形, 心情, 生活等を理解し, 用と美の両面から考えて被服を選定し, 着装することを重視したい.なお, 下着についてもその機能を理解させ, 適切な着用を習慣づけたいものである.
    2) 不要な被服はもたないようにする, 被服費が少なくてすむようにするなど, 経済面を考えたり, 合理的な衣生活をしようとしたりする者が増加している.しかし, むだな費用を被服に使わないようにしている者が大幅に減少している.物資の豊かな時代においても, 被服の合理的な選択, 購入, 管理の能力を十分に養う必要がある.
    3) 家族の衣生活に協力し, 購入や洗濯などを手伝う者が減少している.このことは現在, 家庭における衣生活に関する仕事が軽減していることや高校生自身の生活の様相にもよろうが, 自分の衣生活のみでなく, 家族の衣生活にも協力する能力と態度を育てるようにしたい.
    4) 既製服を購入して能率よく着用することを望ましい衣生活と考えている者が, 前回より増加している.このことは, 既製品を上手に選ぶ能力を身につけたいと希望する者が最高率を占め, 前回よりも増加しているのと合致している.福島県の調査研究によっても, 「家庭一般」履修者981名のうち95%以上は日常着を既製服に依存しているという.既製服利用は, 被服産業の発達, 有職婦人の増加などとともに今後いっそう伸びる傾向にある.着用者の個性や着用目的や条件のもと, 材質, デザイン, 縫製, 価格等を考えて意思決定するなど, 被服の選択・購入の重点を指導する必要がある.
    なお, 既製服について染色, 縫製, 表示などに関する苦情がある場合には, 業者や消費者センター等に申し出るという消費者としての権利を行使すべきであることを理解させ, 実践するように指導する必要がある.
    5) 基礎的な被服製作の技術を学びたいと希望している者は, 前回よりも大幅に減少している.また, 関心のある衣生活に関する仕事のうち, 製作技術的なものは低率になっている. 4-4) で述べたように, 既製服利用が多くなっていること, 家庭生活における被服製作の必要度および技能が低下したこと, 被服製作に対する興味・関心が低くなったことなどによるものと推測される.被服製作の学習を希望する者が減少しているとはいえ, 被服製作を通して, 衣生活に関する知識と技術を習得させることは重要であると考える.製作という実践的な学習活動によって, 高校生に物を作り生活に活用する喜びを味わわせるとともに, 巧緻性, 計画性, 科学性, 創造性などの資質を養うことができる.また, 消費者として基本的な意思決定の能力を育てることができる.このために, 被服製作の基礎的・基本的な事項を押さえて, 意欲的に学習させるように指導方法を工夫する必要がある.
    6) 被服の洗濯や手入れの仕方の学習を希望し, 管理技術的な仕事に関心を寄せる者が前回より高率になっていることは, 衣生活の保健衛生・整容・安全・経済のうえからも, 被服の有効利用のうえからも望ましいことである.衣料や洗剤, 用具などに関する知識を習得させ, 合理的な被服管理能力を養うとともに, 日常生活に活用し, 習慣化するほか, クリーニング業等の利用についても取り上げる必要がある.
  • 高田 昌子, 野口 駿
    1987 年 38 巻 7 号 p. 643-646
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 大豆油に亜硝酸ナトリウムと酸とを加えると, 不飽和脂肪酸のcis-trans異性化がおこった.
    2) 添加した6種類の酸では, 硝酸を加えたときが異性化の割合が最も高く, ついで塩酸が高かった.酒石酸, クエン酸, 乳酸, 酢酸は硝酸, 塩酸より異性化の割合が低かった.電離度の高い酸が異性化の割合が高い傾向があった.
    3) 反応温度は高いほうが異性化が促進され, マイクロ波加熱による異性化の促進はみられなかった.
    4) 亜硝酸ナトリウムのかわりに硝酸ナトリウムを加えると, 異性化はほとんどおこらず, 添加量を増したとき, わずかに異性化がみられた.
  • 山田 早苗, 永島 伸浩, 川端 晶子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 647-650
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    熱帯産澱粉の熱的性質について検討した結果を要約すると, 以下のようである.
    1) アミロース含量は, 食用カンナ澱粉が27.1%でもっとも高く, コーン澱粉は25.0%, 馬鈴薯澱粉は23.3%, サゴ澱粉は21.7%, アロールート澱粉は 19.4%, キャッサバ澱粉は18, 3%で低い値であった.平均粒径は, 食用カンナ澱粉が42μmでもっとも大きく, つづいて馬鈴薯, アロールート, サゴ, コーン, キャッサバ澱粉は小さく, それぞれ, 33, 26, 21, 17, 14μmであった.
    2) 標準試料として用いた馬鈴薯澱粉の各濃度におけるDSC曲線で, 低濃度では単一ピークであったものが, 高濃度では二つの明瞭なピークが得られた.低温度側の吸熱ピークは, 濃度に影響されないことがわかった.
    3) 熱帯産澱粉の50%濃度でDSCを行ったときの吸熱ピークパターンは, 食用カンナ澱粉が馬鈴薯澱粉に近いパターンを示し, アロールート澱粉はコーン澱粉に近いパターンを示した.キャッサバおよびサゴ澱粉は食用カンナとアロールート澱粉の中間のパターンを示した.転移熱量は, キャッサバ澱粉がもっとも低く, つづいてコーン, サゴ, 食用カンナ, アロールート, 馬鈴薯澱粉の順に高い値であった.
    4) 各種澱粉のDSC値とフォトペーストグラフィー, アミログラフィーの糊化特性温度を比較した結果, Toはフォトペーストグラムの変化点と比較的近似し, Tpはアミログラムの立ち上がり温度にほぼ近似していた.Tcはアミログラムの最高粘度到達温度より高い値が得られ, 澱粉の糊化過程をより広範囲にとらえられると考えられる.
  • 峯木 真知子, 松本 ヱミ子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 651-656
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本実験では鶏卵素麺を実験的に調製し, その組織構造から, 鶏卵素麺の製法を推考した.
    1) 組織構造の面から, 鶏卵素麺は連続相が太く, 気泡の大きいものがよい.卵黄液に砂糖添加したものでは, 卵黄の凝固が不十分で, 細く切れやすい連続相をもつ組織を作り, 良い製品は得にくい.
    2) 卵黄液は, 攪拌後40分放置させたものが粘度が下がって, 押しだしやすく, 加熱糖液の温度は60%砂糖濃度の沸点が望ましい.また, 60%糖液加熱では卵黄麺からの浸出物が少なく, 糖液の濁度値は低い.
    3) 鶏卵素麺のつやは砂糖液の影響のほか, 卵黄球から滲出した脂肪も関与していると考えられる.
    卵黄の洗い水を添加する効果については本実験からは認められなかった.
  • 表題と要旨との関連において
    岡田 安代, 岡本 順子, 大森 正司, 加藤 みゆき, 長野 宏子, 佐々木 敏雄, 中村 重男
    1987 年 38 巻 7 号 p. 657-661
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 家政学の研究課題では, 「微生物・植物」, 「家庭内での立場による分類」, 「生物の部品・器官」といった要素技術は表題に組み入れられていたが, 反対に実験の手法を具体的に表す「部品・機械」, 「数学」, 「物理」といった要素技術は表題に組み入れられていなかった.
    2) 家政学では, 表題および要旨に付与された要素技術の個数の差が他の分野にくらべて大きく, 2.1倍であった.
    また, 家政学の表題の字数は29.5文字で, 最も長く, 字数の多いわりに要素技術の個数は少なかった.
  • 中村 隆英
    1987 年 38 巻 7 号 p. 663-667
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
  • 平野 貴子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 669-671
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
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  • 田中 真砂子
    1987 年 38 巻 7 号 p. 671-673
    発行日: 1987/07/20
    公開日: 2010/03/10
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