農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
77 巻, 9 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
 
  • 小倉 健一郎
    2009 年 77 巻 9 号 p. 701-704,a1
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    近年,途上国の人口増加と経済発展,地球規模での気候変動の影響,バイオ燃料仕向作物の需要拡大等の要因によって,中長期的には世界の食料需給はひっ迫すると見通されている。また,わが国のカロリーベースの食料自給率は主要先進国の中でも最低水準の40%であり,将来的に食料を安定的に確保していくためには,国内生産を基本とし輸入と備蓄を適切に組み合わせていくことが重要である。国内生産を充実させるためには,農地・農業用水,農業者,技術といった食料自給力を構成する個々の要素につき,現状を分析し,実効ある対策を講じ,その結果食料自給率の向上が図られることが大切である。本報においては,食料自給率向上に係る農林水産省の取組みについて報告する。

  • 若杉 晃介, 藤森 新作
    2009 年 77 巻 9 号 p. 705-708,a1
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    食料自給率の向上へ向け,水田農業においては,担い手農家への一層の農地集積を図り,経営規模拡大と大区画化,省力的栽培技術の普及,田畑輪換による麦や大豆,飼料作物等の増産を図ることが緊急課題となっている。こうした課題への対応技術として,近年開発された,地下水位制御システムFOEAS(フォアス)は暗渠排水機能と地下灌漑機能を併せ持ち,湿害と干ばつ害を回避するとともに,転作作物に最適な地下水位を維持でき,高品位安定多収を可能とする。本報では,FOEASの概要を説明するとともに,実際にFOEASを導入した現地圃場における転作時,および水稲栽培時の営農へ与える効果についてまとめた。

  • 松村 修
    2009 年 77 巻 9 号 p. 709-712,a2
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    現在,19を超える多収水稲品種が飼料用等に利用可能として育成されている。これらの品種は700kg/10a以上の粗玄米収量を得る能力を有し,中には800~900kg/10aを示すものもある。低コスト栽培に必要な直播適性を備えているものも多く,これらは直播条件下でも移植栽培と遜色ない収量を示す。飼料用稲を栽培するに当たっては,多肥栽培で多収を得ることと,直播栽培などの低コスト栽培で生産費を低減することが重要である。直播栽培では収量性の向による単位重量当たり生産費をの低減が課題である。耕作放棄水田や休耕水田に飼料用稲を導入するには,①導入作目,②導入品種,③水管理,④団地化,⑤省力・省作業の限度,⑥食用稲への配慮,⑦輸送コスト,について考慮する必要がある。佐渡市休耕田での導入実証試験で,寒冷地の条件不利地でもある程度の多収と直播栽培が可能であることが示された。

  • 松野 良一
    2009 年 77 巻 9 号 p. 713-717,a2
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    農林水産省が主催する「食料自給率向上に向けた国民運動推進事業」(「FOOD ACTION NIPPON)において,2008年度に行った「新聞ブログ」を使ったキャンペーンに関する報告。「新聞ブログ」は,ブログに記事と写真を入力するとWeb上に新聞風のレイアウトで表示されるもので,印刷すれば新聞として配布できる。同キャンペーンには,全国の14都道府県15小学校の562人の児童が参加。自らの町から「地域の食」をWeb上で発信した。さらに「新聞ブログ」を体験した児童の代表ら21人が,食料自給率向上のための提言書をまとめ農水大臣と官房長官に手渡した。最後に企画の基礎となった「コミュニケーション・デザイン」「シビックプライド」の概念について解説した。

  • 向井田 善朗, 倉島 栄一, 東 淳樹, 渡邉 富雄, 佐藤 泰英
    2009 年 77 巻 9 号 p. 719-722,a2
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    岩手県奥州市胆沢区に点在するため池の多くは灌漑施設としての役割を終えたが,生態系保全の観点から,従前の状態をとどめた保存がはかられた。朴の木ため池もその一つであり,ため池の築堤部直下の休耕田には高層湿原が形成され,ハッチョウトンボの繁殖が確認された。ため池の浸出水と湿原との関係を明らかにするため降水量,ため池水位,堤防付近の地下水位,体積含水率を観測した。その結果,短期的にも長期的にも,地下水位はため池水位と連動して変化し,体積含水率は期間をとおして高く,ため池からの浸透によって湿原が形成されたものと判断された.また,類似条件下のため池にでは,同様な生物の生息環境を形成しうることが示唆された。

  • 川島 秀樹, 浅野 孝
    2009 年 77 巻 9 号 p. 723-728,a2
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    カリフォルニア農業におおきな恩恵を与えてきた農業用水は,深刻な渇水問題や環境問題をはじめとして,現在,さまざまな課題に直面している状況にある。また,州内人口が急速に増加している中,慢性的な水不足や農地の塩害の問題は,長年の間根本的解決には至っていないのが実情である。それらの課題が州内農業の持続的な発展における重大な脅威となっているため,灌漑の持続性を失いかねないこれらの事態の回避・軽減を図りつつ,農業用水の持続的な使用を目指すことが必要となっている。本誌2009年8月号(米国カリフォルニア州における農業の概要と灌漑技術の発達)の続編である本報においては,都市用水や環境用水との競合等を含めたカリフォルニア州における農業用水を巡る現在のさまざまな課題とそれに対する政府の施策,将来的な動向等について,その概要を報告する。

  • 加藤 修一
    2009 年 77 巻 9 号 p. 729-732,a2
    発行日: 2009年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    一級河川利根川水系神流川を水源とする国営かんがい排水事業神流川沿岸地区では,前歴事業によって整備された神流川頭首工は建設後50年以上,用水路については30年以上が経過し,老朽化による機能低下が著しいため改修工事を行っている。工事における野鳥保全対策として,①頭首工地点におけるバン,②羽根倉調整池におけるバン,③幹線用水路の改修・新設工事におけるオオタカを保全対象に選定し,頭首工地点においては植生の移植復元,羽根倉調整池は代償措置である人工浮島の設置,幹線用水路は工事による影響低減などの対策を実施し,モニタリング調査と保全対策の効果について考察を行った。

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