農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
82 巻, 9 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 中村 好男, 髙橋 幸照, 左村 公, 遠藤 和子
    2014 年 82 巻 9 号 p. 703-706,a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報では,三重県多気町勢和地域を灌漑する立梅用水が灌漑用水としての機能に加えて,①防災,②観光・地域活性,③地域教育・福祉,④生活維持,⑤小水力発電,⑥農村環境保全,⑦生態系保全,⑧歴史的遺産保全,⑨農村協働力・自治形成などの多面的機能を有していることを明らかにした。そこで,多面的機能保全に関与する20の組織の関与度を評価した結果,土地改良区,水土里サポート隊,勢和地域資源保全・活用協議会が最も高いポイントを示した。こうした保全活動を通して生まれた農村文化は,豊かな食文化を醸成するとともに6次産業化を誘発し,地域振興に大きく貢献していることを評価した。

  • 広瀬 伸, 内山 五織
    2014 年 82 巻 9 号 p. 707-710,a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    奄美群島・徳之島での“うた”(文化要素)とその基盤(サブシステンス)となる稲作作業を復興した活動を報告する。本活動には,この島独自の田植え唄の演奏を伴う田植え作業から収穫・脱穀に至る一連の農作業に,唄や踊りを伴う稲作由来の伝統行事「むちたぼれ」や自然観察会,食品加工ワークショップなどが組み込まれた。このことにより,主として集落民の紐帯に基づく集落の行事でありながらも,集落に自閉せず集落外からの参加へも開かれた活動が実現した。ここで形成されたのは,いわゆるコミュニティの2類型,「エリア型」と「テーマ型」の中間的・折衷的な形態であり,本活動は“うた”というテーマを投げかけて地縁を舫(もや)う形の新たなコミュニティを形成する試みである。

  • 山下 良平
    2014 年 82 巻 9 号 p. 711-714,a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    新たな局面を迎える都市農村交流事業において,従前の需給バランスの間隙を埋める1つの方略としてインバウンドツーリズム(I.T.)に活路を見出す流れがある。本報では,海外からも顧客を受け入れる農家民宿型グリーン・ツーリズムを実践する事例からI.T.の意義と課題を検討した。大半が団体客であるI.T.の受入れ増加は,提供するサービスに対する評価と,事業収益性の維持を見据えた対象の拡大というマーケティング理論に適合した合理的な戦略であるといえる。ただし,多様な文化圏の来訪者への対応の規格化,自治体や旅行代理店の全面的な斡旋によって成立する不安定な需要発掘など,克服すべき課題を含みながら展開している事業の趨勢には今後も注視する必要がある。

  • 荘林 幹太郎, 岡島 正明
    2014 年 82 巻 9 号 p. 715-719,a1
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    農村の最大の資源である農地の利用調整制度の確立がむらづくりの前提となる必要がある。農地の利用調整は,個別アクター間の経済的利害の調整という側面を有している一方で,農地利用に関わる集合的調整がもたらす公共財の提供という側面も有している。個別アクター間の調整がもっぱらアクター自身の「現在」(あるいは比較的短い時間フレーム)の経済的関心を対象とするのに対して,集合的調整はアクター自身のみならず多数のアクターの「現在」および「将来」の集合的関心事項を対象とする。そして,個別アクター間の現時点での経済的調整が,将来にとっての望ましい集合的調整の結果と一致する保証はない。だからこそ,両観点の調整を可能とする持続的な管理主体が必要となる。本報では,土地所有者を中心とした自主的農地管理組織が持続的な管理主体となりうる可能性を,他の管理手法との比較により明らかにするとともに,それを制度化するための原則を提案した。

  • 木下 貴裕, 北澤 大佑
    2014 年 82 巻 9 号 p. 721-724,a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    農村地域では,自然環境や農地を保全し,振興への取組みを担う次世代の後継者確保が課題となっており,農林水産省においても種々の施策が推進され,他地域からも積極的に意欲的な後継農業者の確保を図っている。しかし,農村環境も含めた維持・保全を勘案すると,日常管理における地域住民の参加が一層重要となり,それを担う次世代を育成するための方策が重要な課題となっている。本報では,農業農村整備事業実施地区をフィールドとして,次世代の後継者となることが期待される小学生児童を対象に総合的な地域環境の学習を実施し,その結果をもとに地域農業や環境保全,次世代育成を内包した学習プログラムの実施に当たる要件を明らかにするものである。

  • 広瀬 慎一
    2014 年 82 巻 9 号 p. 725-728,a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    既設の農業用水路網を利用して粘性土を水田へ客入する流水客土事業が,富山県の5つの扇状地に展開する水田13,648haで1951~77年に実施された。そのうち最後に行われた砺波地区(庄川)は客土面積5,707haと国内最大規模で,灌漑地の勾配も平均1/300と緩く,流下距離も24kmと長いので,採土地には大規模で高レベルの微粒化プラントが設けられた。本論では砺波地区の事例を中心に,採土地での機械掘削と射水による泥水の造成,長距離送泥実験に基づく微粒化プラントの設計,農業用水路を利用した送泥の浮流理論による検証,客入田における流量と濃度による客土量の算定など,客土事業の流れに沿って興味深い技術的観点について解説する。併せて主に北海道で行われたポンプ送泥客土についても紹介する。

  • 植野 栄治, 増岡 宏司, 三谷 和也, 中田 摂子
    2014 年 82 巻 9 号 p. 729-732,a2
    発行日: 2014年
    公開日: 2020/01/10
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    本報では,北海道を除く全国の旧市区町村単位のデータを用いて,農地整備の実施が農地利用集積に与える影響などについて分析を行った。その結果,農地整備は農地利用集積に正の影響を与えていること,50a以上への再整備も農地利用集積を促進していることが確認された。また,農地整備以外の要因として,販売農家率や非農家率が農地利用集積に影響を与えており,販売農家と土地持ち非農家の分化が進む中で,農地利用集積が進んでいる状況が示された。さらに,農地整備の導入に関しても販売農家率が正の影響を与えており,販売農家が農地整備という手段を活用しながら農地利用集積を進めていることが推測される。

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