本報では,国営土地改良事業等により造成された農業用ダムを対象に,造成標高,堤高および堤頂長という諸元に着目し造成経緯を俯瞰した。終戦直後から高度経済成長期にかけては,社会復興と食料増産を目的とし,堅固な基礎地盤の上に大規模なダムが造成された。1970年代以降,コメ重視の政策から畜産,果樹,野菜等へ重点を移す総合的な農政が推進されたことに伴い,ダムは新たな農業用水需要に対応するため,堤高を高め,高い標高にも広がっていくものがみられるなど,農業・農政の変化に密接に関連して諸元が変遷していることが明らかになった。