農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
90 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 岡島 賢治, 安瀬地 一作, 左村 公, 岩田 祥子, 遠藤 和子
    2022 年 90 巻 6 号 p. 389-392,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    立梅用水を対象地域とした「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」および「スマート農業加速化実証プロジェクト」では,デジタル機器や自営の光回線などを配置し水路をスマート化(スマート水路)することで,営農に係る維持管理労力の削減とともに洪水緩和機能の強化を目指している。農業水路はほとんどが人工的に開削されたものであるため,自然の小流域を越えて用水や排水を運んでいる。したがって,農業水路の適切な流量(水位)管理を行うソフト対策だけで洪水を緩和し,流域の治水に貢献できる。本報では,中山間地域の農業水路を利用した流域治水と,そのために必要なスマート水路,その際の課題と今後の展開について報告する。

  • 乃田 啓吾, 上野 陽平, 手計 太一, 木口 雅司, 沖 大幹, 鈴木 耕平, 出村 沙代
    2022 年 90 巻 6 号 p. 393-396,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    本報では,神通川流域において取り組んでいる流域治水研究プロジェクトの中から,灌漑排水に関連する取組みとして,田んぼダム,排水路からの洪水導水,流域治水ワークショップの事例を紹介した。田んぼダムは下流に位置する住宅地の浸水対策として約400haの規模で実施されている。排水路からの洪水導水では,圃場を活用した新たな流域治水のメニューとして,高次支川の背水による農地への洪水導水を数値実験により検討した。流域治水ワークショップでは,科学的知見に裏打ちされた流域治水の取組みを社会実装することを目的として実施したワークショップの手法と経過について報告した。

  • 山本 晴彦, 辻本 ひかり, 兼光 直樹
    2022 年 90 巻 6 号 p. 397-400,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    2019年8月の豪雨により牛津川では外水氾濫が発生し,小城市池上地区では甚大な浸水被害に見舞われた。本水害を契機に本地区では遊水地整備が計画されており,地域住民への遊水地整備計画に関するアンケート調査を実施した。住民の遊水地機能に関する理解は高く,遊水地建設に賛成する住民は52%であるが,判断に悩む住民が未回答も含めると35%に上った。特に農家は,地役権補償方式による遊水地整備ではあるが,田畑への土砂の流入,営農への支障・栽培の制限,農業収入の減少等に不安を抱いていることが明らかになった。

  • 田中丸 治哉, 喜田 直也, 多田 明夫
    2022 年 90 巻 6 号 p. 401-404,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    本報では,ため池の洪水軽減効果の簡易推定法を兵庫県・播磨地区に適用し,同法の一般性を確認するとともに,ため池事前放流の洪水軽減効果を表す指標であるピーク低減率の近似式に関して,確率雨量によって地域総合化された近似式を作成し,その有効性を明らかにした。さらに,流域治水を目的として多数のため池から事前放流の実施効果が大きいため池を選定する方法を検討し,ピーク低減率と流域面積の関係図に基づいて,ピーク低減量が大きいため池を抽出する方法を提案した。

  • 藤本 雅一, 従野 友裕, 中村 臨
    2022 年 90 巻 6 号 p. 407-410,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    従来,農業分野において広く使われてきたFRPM管路では,屈曲部でのスラスト対策は主にスラストブロックの打設が用いられてきた。しかし,スラストブロックには課題もあり,局所的な沈下を引き起こすリスクや,工期が長期化することが知られている。本報では,FRPM管路においてスラストブロックに代わる工法として期待される,FRP曲管とFRPM管を一体化させる離脱防止機構について報告する。口径500mmと800mmについて離脱防止力(軸力)の限界性能を測定し,水圧と曲がり角の組合せによる適用範囲の検討を行った。その結果,一部の曲がり角を除き,スラスト力が離脱防止機構の限界値以下になることを確認し,実現場への適用可能性を確認した。

  • 八木 正広
    2022 年 90 巻 6 号 p. 411-414,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    アジアの国々ではほぼ共通して,人口増加,農村人口比率の低下,農家の高齢化,若者の農業離れが進行しており,主食であるコメ生産の維持・拡大をどう図っていくかが重要な課題となっている。この対策として東南アジアのタイ,ベトナム,ミャンマーでは政府が圃場整備事業を推進して農業機械化を図っているが,南西アジアではいまだ本格的な圃場整備を実施した国はない。スリランカでは1800年代以降にイギリス植民地政府が収用した国有地を政府が独自の配分制度を設けて土地なし農家に配分してきたが,南西アジアで唯一圃場整備推進に向けて動き出した国である。本報は,スリランカの国有地配分制度下での圃場整備の取組みについて報告する。

  • 廣内 慎司, 廣瀬 千佳子, 堀野 治彦
    2022 年 90 巻 6 号 p. 415-420,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    アフリカの灌漑地区では,計画された面積に灌漑ができていない事例がある。タンザニア国ローアモシ地区の灌漑ブロックにおける灌漑効率は20~68%であり,ブロック消費水量を減少させることで灌漑可能面積が増加する。ブロックの土水路漏水量を測定した結果43mm/hであった。漏水を減少させることで消費水量は減少する。土水路漏水対策として,水路底を締め固めても漏水低減効果はなかった。このため,土水路全面の漏水を防止する土木工事用ビニールシートの敷設について検討した。この結果,24.8USD/30mで施工が可能であり,これは対策を実施することで追加可能な水田における利潤の8~15%であり,また施工は簡易で農家で実施可能であることから有効な対策である。

  • 山嵜 高洋, 三谷 奈保
    2022 年 90 巻 6 号 p. 421-424,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルスの感染拡大防止対策をきっかけとして,オンライン授業の導入が進められている。農業農村工学分野の講義には,多数の図表や数式が用いられるが,この解説を行うためには複数の資料やスライドを用いて長時間にわたる説明が必要となる。筆者らは,手書きで記入可能なパソコン用デバイスの利用と,解説用の台本を準備してオンデマンド型のオンライン授業を実施した。アンケート調査の結果から,学生の理解度は,対面授業と比較して同等以上と考えられた。本報では,筆者らが実践した短いオンデマンド型の講義動画にて図表や数式の解説を有効に行う方法を説明し,農業農村工学分野の教育における解説方法の一案として提案する。

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