農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
89 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 伊藤 久司
    2021 年 89 巻 5 号 p. 299-302,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    近年の水害の激甚化等を踏まえ,緊急時において既存ダムの有効貯水容量を洪水調節に最大限活用できるよう,すべての既存ダムを対象に洪水調節機能の強化に向けた検証を行い,一級水系のダムは令和2年の出水期から新たな運用を開始することとされた。これを受け,農林水産省では,灌漑用水の確保または農地防災を目的に設置された「農業用ダム」の洪水調節機能の強化に向けて,ダムの特性,構造や規模,放流設備,管理体制,関係土地改良区の水利用の状況などを考慮した上で,ダムの安全性を確保しつつ新たな運用を開始することとした。本報では,農業用ダムの洪水調節機能の強化に向けた取組みについて,経緯,対応状況等を報告する。

  • 村上 喜昭, 安田 政彦, 田村 俊秋, 大木 洋介
    2021 年 89 巻 5 号 p. 303-306,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    政府は,昨今の水害の激甚化を踏まえ,既存ダムによる洪水調節機能強化の取組みを開始した。これを受け,水資源機構が管理している大島ダム,宇連ダム,牧尾ダムでも,令和2年6月末から7月にかけて8回の事前放流を実施した。本報では,この中でも利水ダムで全国初の治水協定に基づく事前放流を実施した大島ダムとマスコミ等にも注目された牧尾ダムの事前放流の実施状況,ダム管理者の立場からの事前放流の課題について報告する。

  • 溝口 恵美子, 蒲生 誠
    2021 年 89 巻 5 号 p. 307-311,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    近年の水害の激甚化と治水の重要性を踏まえ,すべての既存ダムを対象に洪水調節機能の強化に向けた検証を行うよう一級水系を対象に新しい運用が開始された。本報では農業用ダムとして初めて治水機能を発揮すべく洪水前の事前放流を実施したダムについて事例紹介する。検討対象施設は九州の一級河川に農林水産省が建設したダムで,下流河川の安全確保と灌漑に支障がないことを念頭に実施マニュアルおよび洪水予測システムの作成を行った。令和2年7月豪雨・令和2年台風10号について事前放流を実施したが,洪水調節機能については,迎洪水前から常時満水位より水位低下できなかったダムを除きほとんどのダムで洪水ピーク量に対して放流量は26~82%調節できた。

  • 堀川 直紀
    2021 年 89 巻 5 号 p. 313-316,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    熱帯モンスーン地域にあるミャンマーのイエジン灌漑地区の経年貯留貯水池であるイエジンダムは1970年代に灌漑を目的として建設されたが,社会環境等の変化により都市用水の供給や洪水調節等の役割も求められてきた。計画最大放流量,無害流量および渇水確率を仮定し,乾季灌漑面積決定ルールと洪水調節容量により定まる放流ルールからなる貯水池運用方法を提示した。当該地区においては,乾季初頭の貯水量に応じて乾季灌漑面積を変動させる乾季灌漑面積決定ルールは,乾季灌漑面積を一定とする方法よりも灌漑面積の期待値を増加させること,洪水調節と乾季灌漑はある程度機能の両立が可能であることを示した。

  • 向井 章恵, 島崎 昌彦
    2021 年 89 巻 5 号 p. 317-320,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農業用ダムの洪水調節機能強化に向けた洪水調節容量の検討には,堆砂量が計画堆砂量を上回っていないか,堆砂が有効貯水容量内に入り込んでいないかを長期的に確認することが不可欠である。そのためには,豪雨による流域からの土砂流入を考慮しながら,堆砂量を予測することが重要となる。本報では,統計学的解析手法によって立てられた既存の堆砂量予測式のうち,説明変数に降水量を含むものについて,最新のデータを用いて更新するとともに,精度検証を行った。日本の地体構造のうち,空知-エゾ帯および阿武隈帯に属する農業用ダムについて,更新後の堆砂量予測式を適用すれば,高い精度で堆砂量を予測できることが確認された。

  • 原野 三男, 松谷 達馬, 髙橋 清隆, 嶋田 圭
    2021 年 89 巻 5 号 p. 323-326,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    仙台平野沿岸部における復興関連農地整備事業において,平成25年度に作成されたビジョンが事業の進展に伴い,どの程度達成されたかを評価するため,名取市,岩沼市,亘理町および山元町の事業実施地区を対象に,担い手への意向調査等を行った。その結果,仙台平野沿岸部では,震災後の復興事業により,農地の大区画化と大規模経営体の育成および担い手への農地の利用集積が進展し,経営状況が改善したことにより担い手からは一定の評価を得たと言える。一方で地域コミュニティの状況は,「震災前の水準に回復」以上と「震災前の水準には回復していない」以下の状態が半々であり,地域によりコミュニティの回復に差があることが明らかとなった。

  • 山田 健太郎, 小德 基, 佐藤 透, 中村 健一, 落合 達也, 髙橋 弘, 三宅 良幸
    2021 年 89 巻 5 号 p. 327-330,a2
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    UAV搭載型レーザスキャナ測量を用いた微地形判読等を行い,地すべり調査への適用可能性を検討した。東北地方および九州地方の4地区を対象に,2017~2019年の繁茂期と落葉期に調査を行った。三次元数値標高モデルおよび地形表現図を作成し,現地踏査結果と比較した結果,10cm以上の段差を確認できたほか,植生の繁茂により現地踏査では確認困難だった段差地形も判読可能な箇所があった。植生の種類によっては,繁茂期における地盤抽出率の低下が顕著であった。また,落葉期は100~200点/m2程度,繁茂期は400点/m2以上の照射点密度が必要であった。地すべりの動態確認については,30cm程度の段差があれば検出可能であった。

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