農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
84 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 遠藤 知庸, 吉田 明, 永田 浩章
    2016 年 84 巻 4 号 p. 263-266,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    平成27年9月に茨城県常総市で台風18号関連の豪雨により国の直轄管理河川である鬼怒川が決壊し甚大な洪水被害が発生した。近年,豪雨による災害が頻発しており,統計をみても短時間に強い雨の降る頻度が増加傾向にあり,将来的にも気候変動の影響による豪雨と渇水の極端現象の激化が懸念される中,政府内で近年のICTの著しい発達を背景に超過洪水対策や災害情報の一元化が進められている。本報では,これらの活用による超過降雨を考慮した農村地域の排水対策の取り巻く情勢について報告するものである。

  • 中谷 毅, 木村 彰一, 横田 欣仁, 吉田 淳, 瀧川 紀子, 田中丸 治哉
    2016 年 84 巻 4 号 p. 267-270,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    兵庫県では,これまでの治水対策に流域対策と減災対策を組み合わせた総合治水を推進するため,平成24年4月に総合治水条例が施行された。本報では,この総合治水条例について紹介した後,同条例へ対応する施策の一つであるため池事前放流による雨水貯留の取組みについて述べる。この取組みでは,丹波篠山地区を対象とし,営農への支障を避けるため非灌漑期の9,10月(事前放流期)に限ってため池の水位を下げて台風期の洪水に備え,11月から翌年3月下旬の水位回復期に満水に戻すこととし,水位低下量は水位回復期に期待できる流入量に応じてため池ごとに定める。水位低下量の決定方法とともに,事前放流の普及に向けた取組みについても述べる。

  • 吉川 夏樹, 椿 一雅
    2016 年 84 巻 4 号 p. 271-274,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    田んぼダムの取組みに関心が集まっているが,取組み導入後に実施率が顕著に低下する事例が多い。事業面積約1,200haと大規模に田んぼダムを展開する新潟県見附市では,2010年の田んぼダム導入後5年を経過した現在においても,高い実施率を維持している。これは,多面的機能支払交付金の活用に加えて,農家の取組みへのインセンティブ形成を促す見附市独自の巧妙なスキームによって維持されている。本報では,取組みの可能性を模索する自治体および団体の参考に供することを目的に,見附市の取組みの持続性を支える施策スキームを整理し,報告する。

  • 板垣 直樹, 関矢 稔, 吉川 夏樹
    2016 年 84 巻 4 号 p. 275-278,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    田んぼダムは,耕区単位で各農家が雨水を水田に一時的に貯留し流出量を抑制することで,下流の湛水被害を軽減する取組みである。田んぼダムの実施は,各農家の意向に基づく適切な維持管理が不可欠なため,効果規模の不確実性が課題であった。新潟県が官民協働で開発を進めている「ハイパー田んぼダム」は,圃区あるいは農区を対象に排水調整を一括で行う田んぼダムシステムであり,既存の排水施設の管理者である土地改良区が本システムを用いて排水調整を行う。管理施設の減少と管理者の集約によって,効果の確実性の向上が期待できる。本報では,「ハイパー田んぼダム」の機構を概説するとともに,シミュレーション結果に基づいた効果の発現形態について報告する。

  • 川邉 翔平, 安瀬地 一作, 中田 達
    2016 年 84 巻 4 号 p. 279-282,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    「平成27年9月関東・東北豪雨」によって,洪水や浸水による甚大な被害が生じた。これに対して,農研機構農村工学研究所では被災状況などの現地調査を実施している。本報では,茨城県常総市において実施した農地および農業水利施設に関する現地調査結果を報告する。同市では鬼怒川左岸での溢水および堤防の決壊により広い範囲で浸水などの大きな被害を受け,農地および農業水利施設における被害も大きかった。筆者らは主に,幹線用水路,決壊地点周辺の農地,排水機場などの被災状況について調査を実施した。調査の結果,氾濫水による農地への土砂堆積や水路の横転・移動,浸水による排水機場の電気設備故障などの被害が確認された。

  • 早瀬 吉雄
    2016 年 84 巻 4 号 p. 285-288,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    積雪量の多い白山では,融雪帯が山裾から山頂へ半年かけて移動する。1〜2月の山裾の融雪初期の窒素高濃度融雪水は,ダム湖の低濃度放流水で希釈され,3月以降,山麓・山腹の融雪初期の窒素高濃度融雪水は,ダム湖に貯留され,後に流入する低濃度の融雪水で希釈される。手取川のNO3-N濃度は,毎年3月中旬にピークとなり,7月上旬には半減する。融雪期の河水窒素濃度は,積雪量の多い年ほどピークが高くボトムが低くなる河川窒素濃度の逓減化を解明した。

  • 内川 義行, 田村 孝浩, 松井 正実
    2016 年 84 巻 4 号 p. 289-292,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    畦畔法面の除草作業は負担が大きくかつ事故も多い。そこで多く使用される「草刈機」による事故は農作業機械種別件数のうち最多となっている。圃場整備の実施時ならば,設計基準にある中間および法先小段の設置が可能だが,現時点で多くの作業現場に小段はなく,作業環境の改善が求められる。本報では,この実施を阻害する社会的な構造要因として,多くの農家が個別経営である点から作業環境の改変が行われにくい状況などを指摘した。一方,現在は多面的機能支払交付金などにより環境改善が可能な状況にあることから,導入希望地域の整備状況と小段設置が可能な事業種の関係を整理し提示した。さらに,長野県の異なる工法による改善策(2事例)を紹介した。当該作業の労力軽減と安全性向上の課題に直面する地域への一助となれば幸いである。

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