農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
89 巻, 12 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 花田 潤也
    2021 年 89 巻 12 号 p. 913-916,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    本報では,古来の「農業土木」が私たちの国民性の形成過程と深く関わっていることや,近代に誕生した「農業土木学」が時代に応じて発展し,対象分野を拡大して農村地域振興の総合技術である「農業農村工学」となったことを振り返った上で,少子高齢化・人口減少等に係る施策の方向性を示した「新しい農村政策の在り方に関する検討会<中間とりまとめ>」(令和3年6月)を踏まえ,今後,農業農村工学は,農地集積・集約に資するほ場整備事業,地域コミュニティの共同活動を支援して地域運営組織の立ち上げのきっかけとなり得る日本型直接支払制度や,地域づくりをコーディネートできる人材の育成などの分野で果たすべき役割が大きいと考察する。

  • 芦田 敏文, 遠藤 和子
    2021 年 89 巻 12 号 p. 917-921,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    多面的機能支払(以下,「多面払」という)は,新たな土地改良長期計画(2021年3月)で注目されている「農村協働力」の発揮に影響する施策と考えられる。多面払では,農村における社会資本を対象とした共同活動が集積する場が活動範囲として選択され,共同活動の積み重ねの結果,さらに農村協働力を積み重ね,活動が発展すると考えられる。以上の作業仮説をもとに,多面払の実施事例において,多面払の活動が,農村の自治組織である地域自治会および他の地域組織の存在・活動状況とどのような連携関係のもとになりたち,農村協働力の発揮につながっているのかを明らかにした。また,事例から,農業農村工学に求められる役割について考察した。

  • 加藤 亮, 大倉 芙美, 飯田 俊彰, 吉田 修一郎, 髙橋 修
    2021 年 89 巻 12 号 p. 923-926,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    土地改良長期計画において,農業分野への適用が期待されるICTやAIと連動したスマート農業への対応が求められているのと同時に,農業就労人口の減少を背景とする農業の多面的機能の回復が求められている。農業水利の面から考えると,水利用の効率向上と同時に水環境保全が求められており,パイプライン化を通じた,より高度な水配分,水管理と農業の環境負荷を削減する方法論が求められている。本報では,水環境保全を目的とした循環灌漑を導入した印旛沼二期農業水利事業をもとに,土地改良長期計画の今後の方向性に沿う水管理について検討する。

  • 鬼丸 竜治
    2021 年 89 巻 12 号 p. 927-930,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    わが国の河川を水源とする大規模な水田稲作地域では,配水管理は重層的な水利組織が担ってきた。ところが,大規模経営体への農地集積が進み,重層的な組織のままでは「個々の経営判断に基づく融通のきいた水管理は難しい」という意見が聞かれるようになった。そこで本報では,大規模経営体の増加に対応した配水管理の具体化に向けた議論を進めるため,重層的な水利組織による配水管理の持続性に関わる要因等を整理・分析した上で,大規模経営体の増加に対応するための配水管理の課題として,①水利秩序を保つという視点から,配水に関する合意のあり方を示すこと,②配水に関する大規模経営体同士の交渉を促す仕組みを整えること等を示した。

  • 吉川 夏樹, 宮津 進
    2021 年 89 巻 12 号 p. 933-937,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    田んぼダムの取組みの長期的な維持は,適切な排水量調整装置の採用が大きな鍵を握る。普及性に富み,必要時に大きな効果が発揮される装置の設計には,綿密な計算および実験による検討を要するが,水田排水口の孔径縮小によって効果を発揮する田んぼダムは仕組みが単純であることから,多様な装置が開発されている。しかし,開発された装置は導入の容易さに重点が置かれており,取組みの継続性への視点が欠けているものが多い。本報では,排水量調整機構を2分類した上で,筆者らが「適切」と考える装置のあり方を提示するとともに,事例に基づく定量的な検討によって,営農面への影響と排水量調整効果の視点から比較検討する。

  • 山田 敏克, 太田 宏通
    2021 年 89 巻 12 号 p. 939-942,a1
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    市野新田ダムは,柏崎周辺農業水利事業で造成した3つの水源施設のうち最後に建設された堤高26.7m,堤体積16.6万m3の傾斜遮水ゾーン型フィルダムである。本ダムの築堤材料は,コア細粒材を除き外部からの搬入となること,豪雪地域のため盛立可能日数が限られることなどの特徴があったため,小規模ながら幾多の課題に直面したが,これらを短期間で解決し,工事が停滞することなく令和元年9月に完成した。本報では,ダム工事の中心である堤体盛立における課題とその対応として,河床部の湧水対策,軟岩基礎の損傷防止,盛立施工の効率確保およびコア材の品質管理結果について報告する。

  • 鈴木 秀一郎, 渡邊 浩樹, 田中 忠次, 龍岡 文夫, デュッティン アントワン, 三浦 亨
    2021 年 89 巻 12 号 p. 943-948,a2
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    東北地方太平洋沖地震で決壊した藤沼ダムについて,堤体の決壊の原因を明らかにするため,損壊状況調査や被災した堤体の材料試験等を行った上で,耐震性の把握と地震動に伴う堤体決壊のメカニズムについて検討を行った。その結果,決壊の原因は,近代的な施工方法と比較すると締固め状態が低かったこと,上部盛土と中部盛土の非排水せん断強度が低いこと,強い地震動が長時間継続して,堤土の強度が大きく低下し残留すべりを誘発したことにあると判断できた。一方で,堤体の締固め度が近代施工レベルまで高かった場合は決壊に至らなかったと推察され,堤体の土質や施工,安全性照査における技術的課題を示すことができた。

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