農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
79 巻, 5 号
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  • 林田 洋一, 増川 晋, 浅野 勇, 田頭 秀和
    2011 年 79 巻 5 号 p. 329-332,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    現在供用されている灌漑用貯水施設には,近代的な設計基準が制定される以前に築造されたものが多数あり,大規模地震時に基礎および堤体において液状化が発生し,堤体が大きく変状する危険性が危惧される。このため,近代的な設計基準に基づき築造されたロックフィルダムに比べ,より詳細な手法による耐震照査が必要になる場合が多いと考えられる。そこで,地震時の液状化に伴うフィルダムの変形挙動を予測するための動的有効応力解析を実施し,堤体のゾーニングや液状化層の材料特性が堤体の変形挙動に及ぼす影響を検証した。あわせて,液状化に伴う堤体の変形量を緩和するための耐震補強対策について,その効果を検証した。

  • 毛利 栄征, 有吉 充, 河端 俊典, 田中 忠次
    2011 年 79 巻 5 号 p. 333-336,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    地中に埋設される大口径のパイプラインは,施工過程の影響を大きく受ける。パイプ周辺の埋戻しやその転圧などによってパイプは大きく変形し,施工完了までの変形挙動がその後の長期的な安定性に大きな影響を及ぼしている。一方,土地改良事業計画設計基準「パイプライン」(農林水産省)では,施工の過程を考慮せず土かぶり荷重に応じた安全性を照査することとしており,実際のパイプラインの挙動を的確に表していない可能性がある。本論では,直径が3,000mmを超えるたわみ性パイプを対象として,地盤の破壊を考慮した弾塑性有限要素解析手法によって,埋戻しや地盤材料の転圧などの施工過程を再現した数値解析を実施し,たわみ性パイプの施工過程での挙動と埋戻し地盤との相互作用を明らかにした。最後に実管路を用いた埋設実験との比較によって数値解析手法の有効性と課題を提示する。

  • 河端 俊典, 澤田 豊, 柏木 歩, 毛利 栄征, 有吉 充
    2011 年 79 巻 5 号 p. 337-340,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    個別要素法によるジオグリッドや埋設管などのモデル化について紹介した。さらに,これらの適用事例として,圧力管スラスト防護工法ならびに浅埋設工法の水平載荷挙動に関する数値解析結果を紹介した。地盤パラメータの決定方法などにおいて若干の課題は残るものの,個別要素法解析は,大変形時における地盤の破壊メカニズムの解明などにおいてきわめて有効な手法であると言える。

  • 正田 大輔, 川本 治
    2011 年 79 巻 5 号 p. 341-344,a1
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    近年の短時間強雨の増加による地すべり・土砂崩壊の発生頻度の増加や,人口減少・高齢化による災害対応力の低下が,農村地域における地すべり防災上の新たな課題となっている。このような中で,地すべりによる被害の最小化を図るための研究の高度化が望まれる。本報では,棚田状農地内の地すべりをモデルとして,極限平衡法により杭工抑止力を作用させて検討を行った。抑止力の作用方法は,すべり面法線方向成分を加味するケースと,現行基準同様水平力のみを与えたケースの2ケースとし,解析諸因子の変動についての検討を行った。結果として,杭の設置位置や地下水位変動によって,スライス間力や作用線位置の非合理解が算出され,設置位置として適さない箇所や地下水位の抑制について検討できるものと示唆された。

  • 珠玖 隆行, 西村 伸一, 村上 章, 藤澤 和謙
    2011 年 79 巻 5 号 p. 345-348,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    国内の社会基盤施設の設計法は,これまで大量の社会資本を供給してきた仕様設計体系から信頼性設計を基本とした性能規定型の設計体系に移行しつつある。その一方で,ため池や堤防などの土構造物に対する信頼性・性能設計は,設計手法・計算モデルの予測精度の低さや地盤パラメータの不確定性に起因する種々の問題を有している。本報では,土構造物に対する信頼性設計の基礎的研究として,近年,工学分野への応用が期待されている粒子フィルタに着目し,その土構造物の性能照査ツールとしての有効性について議論した。軟弱地盤上に建設された土構造物の沈下問題への適用例により,粒子フィルタは明示的・定量的な性能照査にも十分適用可能であり,土構造物の信頼性設計・性能設計において有力な手段となり得ることを示した。

  • 福元 豊, 阪口 秀, 村上 章
    2011 年 79 巻 5 号 p. 349-352,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    個別要素法(以下,DEM)を実務に適用することを念頭に,より少ないパラメータで地盤特性を適切に表現できるシンプルなDEMモデルを提案した。具体的には,地盤材料の破壊基準である粘着力と内部摩擦角を表現するために,通常の円形粒子のDEMで用いられる粒子接触関係に粒子間ボンドモデルと転がり摩擦モデルにそれぞれ修正を加えたものを導入した。両モデルを導入する際に必要とする追加パラメータはそれぞれ1つだけである。これらのモデルを反映させたDEMを用いて一面せん断シミュレーションでのパラメトリックスタディを行い,地盤材料の粘着力と内部摩擦角に対して所望の値を適切に表現するためのモデルとパラメータ決定方法を与えた。

  • 橋本 禅
    2011 年 79 巻 5 号 p. 353-357,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    中・長期的な農業農村の情勢は,社会や経済,産業,貿易,国民意識などの要因下にあり,不確定要素が多い。このような状況下では,これら不確定性を考慮したシナリオが,今後の目標・施策の大枠を検討する上で有効に機能すると考えられる。本報では,①シナリオの基本概念やシナリオと計画の類似点,相違点について整理するとともに,②政策立案への情報提供や環境影響評価を目的として作成されたシナリオを中心に,シナリオの先行事例を整理し,わが国におけるシナリオ作成の動向ならびに特徴を示す。最後に,③EUでの取組みを例に,わが国における農業農村計画分野におけるシナリオの活用の可能性と課題について検討した。農村地域社会の再編・維持,資源管理などの観点から,政策や施策の大枠を検討する際に,シナリオ作成が有益な示唆を与えると考える。

  • 石黒 宗秀, トラン ティ ツ ハ, ファム ビエット ズン, 前田 守弘
    2011 年 79 巻 5 号 p. 359-362,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    ベトナム中部に位置する,フエ県の水田農業の現状についてまとめた。この地域は,南部や北部のデルタ地帯と異なり,中山間地が多く平地が少ないが,稲作が主要な農業である。人口,農林業就労人口,稲作付面積,生産量,単収などの近年の推移を示すとともに,水田灌漑システムの整備進行状況と問題点および土壌の特徴について述べた。また,フエ県の農業農村政策を紹介し,河川水質の調査結果なども用いて,今後の展望を示した。

  • 成岡 道男, 早田 茂一, 森下 賢己, 藤本 直也
    2011 年 79 巻 5 号 p. 363-368,a2
    発行日: 2011年
    公開日: 2019/01/08
    ジャーナル フリー

    本報では,JIRCASがエチオピアの北西部に位置するアムハラ州のタナ湖周辺に分布する低湿地帯で行ってきた調査結果をもとに,現地で行われている稲作の現状を紹介し,その課題および対策について検討した。その結果,調査地域における米の増産を研究・技術協力の面で支援するためには,「土地の生産性を向上する」,「生産力を高める技術を導入する」,「生産者を増やす」,「技術の普及体制を強化する」などが課題であることが判明した。これらの課題に対して,農地や灌漑施設などの基盤整備や営農技術の改善,高収益品種の導入および品質向上による収益向上策,農業普及員養成学校の強化などが求められる。

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