農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
86 巻, 5 号
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  • 九鬼 康彰, 青木 茜, 武山 絵美
    2018 年 86 巻 5 号 p. 381-384,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本研究ではサルの被害対策で行われる集落ぐるみの追払いを阻害する物理的な要因の検討を行った。三重県伊賀市の13集落に対するヒアリングや住民による1年間のサルの出没および追払いの記録,GPSの追払いログデータを分析して,追払いの実態や追払いをしていないエリアを明らかにした。その結果,サルの出没頻度が上がるほど毎回の追払いが困難なこと,使用道具は威嚇効果の高いものに変化していること,成功した集落では効果が持続していることが分かった。また,集落内や周縁の里山と河川,他獣種対策のフェンス柵などが追払いの阻害要因になっていることが得られた。このことから主な要因の解消には里山の管理,特に林縁部の伐採が重要であることを指摘した。

  • 竹内 正彦, 斎藤 昌幸
    2018 年 86 巻 5 号 p. 385-389,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    島根県大田市において里山に生息するイノシシをGPS追跡し,イノシシの生息地選択と人の土地利用,特に農地利用の時代的変化との関係を検討した。イノシシは放棄竹林と農地を潰廃,転換した人工林を集中利用した。放棄竹林はタケノコなどの餌場に加え,人の出入りがないため休息場として利用されていた。転換された人工林は,下草の管理が行き届かず餌になるクズなどの藪が繁茂し,耕作放棄地と同様,採食と休息に良好な生息地を形成していた。過去に農林用地であった里山では,土地利用の経緯に応じた環境管理を設計し,イノシシに選択された環境の優先的な縮減と,これからの発生を抑制することで,被害防護対策の有効性を高めることが期待できる。

  • 重岡 徹, 嶺田 拓也
    2018 年 86 巻 5 号 p. 391-394,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農地や集落に加害獣の侵入を防ぐためには,地域全体を隙間なく囲む大規模防護柵を設置することが有効であるが,柵の効果的な設置や柵周りの草刈りなどを適切に行うためには,関係集落および住民の理解と参加・協力が必要となる。本報では,猿害防止のための大規模な集落横断型電気柵を複数集落が連携して設置・管理を実施している事例を対象に,圃場整備事業や農地・水環境保全支払向上対策の推進の中で獣害対策への集落・住民の合意が成立してきた過程を観察し,地域ぐるみ鳥獣害対策に対する「集落」の合意形成のあり方について検討を行った。

  • 髙松 利恵子, 岡田 あゆみ, 落合 博之, 長利 洋, 服部 俊宏
    2018 年 86 巻 5 号 p. 395-398,a1
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    青森県におけるシカ被害の未然防止対策に向けた担い手として市町村担当者と猟友会支部代表者を対象に,アンケート調査によりその取組みの実態や危機感,実践力について検討した。これまでの鳥獣害対策・講習会参加の経験と今後実施可能な対策について回答してもらった。市町村のシカ対策の意識に地域差があり,県南地域よりも津軽地域はこれまでのサル対策の経験から積極的かつ実践力があることがわかった。猟友会はシカ被害への危機感が市町村より高く,また実践力も期待できることが示された。担い手として期待される役割が異なることから,県が主体となって市町村間の地域間の連携や県・市町村・猟友会の連携を強めることが期待される。

  • 牧野 祥奈, 服部 俊宏
    2018 年 86 巻 5 号 p. 399-402,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    近年,捕獲事業の担い手である狩猟者は減少と高齢化が進んでいる。新規免許取得者を増やしその定着と技術向上を図ることが必要だが,実際に狩猟を行うためには知識や猟場を共有してくれるベテランや悩み事を相談できる狩猟仲間が必要である。本報では人間関係の構築など狩猟免許取得後の支援制度にはどのようなものがあるのかを明らかにした。その結果,大半の地域では技術向上を目的とした制度のみで人間関係の構築まで視野にいれた制度は少ないが,新規免許取得者と同じ地域のベテランとの交流によりペーパー狩猟者となることを防ぐような制度が導入されていた例があった。制度導入には,行政自らが協力を得られるベテランハンターを探し,新規免許取得者へ仲介する役割を担うことが必要となる。

  • 唐崎 卓也, 成岡 道男, 芦田 敏文
    2018 年 86 巻 5 号 p. 403-406,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報は,ジビエ(野生鳥獣肉)利用に関わる動向や施策を整理するとともに,シカ,イノシシをジビエとして利用している事例の調査・分析をもとに,ジビエ利用の課題と展望を明らかにした。ジビエ利用の事例は,地域連携型,猟友会員主導型,広域連携型,法人経営型の4つのタイプに整理された。ジビエ利用は,鳥獣害対策に基づく捕獲から加工・販売に至るまで地域内で一貫した対応が不可欠であり,そのためには関係者間の利害調整や合意形成,連携の構築が求められる。ジビエ利用には,地域が主体となり,地域住民,農家,狩猟者らの参加による鳥獣害対策からジビエ利用に至る一貫した構想の策定が有効であると考察した。

  • 成岡 道男
    2018 年 86 巻 5 号 p. 407-410,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,シカやイノシシの鳥獣被害対策への活用が期待される都市狩猟者に焦点を当て,筆者の狩猟経験および所属する狩猟グループのメンバーへの聞取りをもとに,その活動や実施に関わる費用などを紹介した。そして,都市狩猟者が鳥獣被害対策に協力するメリットや抱える問題を検討した。この結果,地方自治体が都市狩猟者を持続的に活用するには,都市狩猟者が有する問題の軽減や協力へのインセンティブの付与などの重要性が示唆された。このことから,必要経費などの支払いや機材の貸与,猟犬飼育に対する支援,狩猟グループへの構成員の斡旋などの施策を提案した。

  • 森瀧 亮介
    2018 年 86 巻 5 号 p. 413-416,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    ジンバブエ共和国は2000年からの土地改革と,EU制裁を契機に2008年にハイパーインフレーションに見舞われた。ハイパーインフレーション収束後,ジンバブエ基幹産業である農業再建に向けてドナーが支援を開始し,わが国は灌漑政策全般のマネジメントと新規灌漑開発に向けて,筆者が2012年に専門家として派遣された。同時に,世界銀行が農業省に入って農業再建に向けた調査を開始し,これを踏まえて農業省では農業の現状と課題,対応策を農業関係者全体で共有する全国ワークショップを実施した。本報は,混乱した国の農業再建に向けた世界銀行による調査や全国ワークショップ,農業再建モデルとしてわが国の無償灌漑事業の意義を紹介する。

  • 島本 由麻, 鈴木 哲也
    2018 年 86 巻 5 号 p. 417-420,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    本報では,「もみ殻灰」を混和した緑化基盤材を事例に環境親和型構造材料の要求性能と性能評価方法を検討した結果を報告する。緑化基盤材の空隙構造を考慮した材質評価を実施するとともに,根圏発達状況を指標とすることで,より長期耐久性を考慮した材料選定が可能になると考えられる。その際,LCA分析を組み合わせることにより材料設計の環境親和性の向上に寄与できると推察される。

  • 石神 暁郎, 星野 香織, 工藤 吉弘
    2018 年 86 巻 5 号 p. 421-424,a2
    発行日: 2018年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    北海道内に造成された鋼矢板排水路を対象とした鋼矢板の腐食診断を行い,鋼矢板排水路の構造性能の低下機構について考察するとともに,その性能低下の特徴と機能保全における今後の課題を整理した。鋼矢板の腐食診断では,腐食速度は,干満帯上部>干満帯下部>気中部の順で大きく,また,経過年数以外の要因に影響を受けることが推察された。さらに,鋼矢板排水路の構造性能の低下機構の考察では,積雪寒冷地に特有の性能低下要因を示し,それらが鋼矢板の腐食・断面欠損を加速させること,また,傾倒・倒壊を発生させる直接的な要因になっていることを示した。

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