農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
88 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 西尾 利哉, 田中 祐輔
    2020 年 88 巻 2 号 p. 99-102,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    平成23年3月11日に発生した東日本大震災は,最大震度が7(仙台東地区では6強)と,巨大地震であったことに加え,地震に伴う大津波により,死者・行方不明者が18,000人を超える未曾有の大災害となった。仙台市においても,名取川と七北田川に挟まれる伊達藩政以来の穀倉地帯は,灌漑排水施設を含め壊滅状態となった。震災後,多くの困難を乗り越えながら進めてきた仙台東地区の復旧・復興に向けた取組みが,8年半が経過し,ようやく総仕上げの時期を迎えていることから,本報では,改めて東日本大震災発生後の事業経緯および今後の課題などについて報告する。

  • 利根 基文, 中山 睦人, 吉田 貴司
    2020 年 88 巻 2 号 p. 103-106,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により,東北農政局管内の国営造成農業用ダムである羽鳥ダム(堤高37.1m,中心遮水ゾーン型アースダム),西郷ダム(堤高32.5m,中心遮水ゾーン型アースダム)および大柿ダム(堤高84.5m,中心遮水ゾーン型ロックフィルダム)において堤体や付帯構造物などに変状が確認された。特にこれら3ダムにおける堤体の共通する被災状況として,堤体天端のダム軸方向の縦断クラックがあげられる。これらの被災は,限定的なものにとどまっていたため,ダム機能を損なうものではなかった。これら3ダムの被災状況,復旧設計および復旧状況について,事例紹介する。

  • 久保田 富次郎, 申 文浩, 宮津 進, 錦織 達啓
    2020 年 88 巻 2 号 p. 107-110,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    2011年3月11日に発生した東日本大震災に起因する東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質汚染の発生から9年が経過しようとしている。これまで,農研機構では原発事故に関連して,事故直後の緊急的な対応から営農再開に向けた研究まで,他の研究機関や大学,行政機関等との連携を含めて数多くの研究に携わってきた。本報では,原発事故対応において農研機構の農業農村工学分野が関わったプロジェクト研究を中心として,事故後の除染技術の開発や農業水利施設における放射性セシウムの動態解明,水稲作における用水の安全性に関する実証研究と営農再開への動きなど,事故後の営農再開に向けた研究の過程について紹介する。

  • 登尾 浩助, 伊東 雄樹, 本所 靖博, 小沢 聖, 小清水 正美, 竹迫 紘, 菅野 宗夫
    2020 年 88 巻 2 号 p. 111-114,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    2017年3月末に飯館村の放射性物質汚染による避難指示が解除されたが,中・青年層の帰村者が少ない。この原因には,農業などの産業再生と除染後の水田・牧草地の地力回復にめどが立たないことが考えられ,農業形態そのものの変更を迫られている。明治大学農学部では,2014年に農業復興を支援するために黒川農場で開発した養液土耕栽培支援システムを飯舘村の農家に導入し,除染後の土壌を使って生産された野菜類の放射性物質濃度は基準値以下であることが確認できた。飯舘村に適した生産技術と生産野菜を使ったピクルスやディップの製造と,これら農産物販売戦略を確立して飯舘村の早期農業再生のための支援を実施している明治大学の取組みを紹介する。

  • 申 文浩
    2020 年 88 巻 2 号 p. 115-118,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農地面積が全国で7番目,森林面積が4番目に広い有数の農業県で,かつ林業県である福島県において,巨大地震と原子力災害による深刻なダメージからの復興の取組みが進んでいる。その中で,地域からの要請を重く受け止め,平成25年の段階から5年間の準備を終え,従来からの学群・学類制のもとで,福島大学が開学70周年を迎え,改元を目前に控えた平成31年4月,1学年の学生100名程度,専任教員38名の規模で,福島大学農学群食農学類が発足した。その設置の背景と理念,構成,実践型教育を重視した教育プログラムの特色などを紹介する。また,震災から8年が経過した福島県が抱えている今後の地域課題を整理し,福島大学食農学類の役割について報告する。

  • 神宮字 寛, 金子 是久, 朱宮 丈晴, 亀山 章
    2020 年 88 巻 2 号 p. 119-122,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    東日本大震災に伴う大津波のあとに,岩手県,宮城県,福島県の沿岸部には希少な植物種を含む湿生植物群落が再生した。筆者らは,農地・道路の復旧事業により消失する恐れのあった宮城県南三陸町の湿生植物群落の土壌シードバンクを耕作放棄地に移植する保全対策を行った。その結果,ミズアオイ,ミズオオバコ,シャジクモといった絶滅危惧種を再生させることができた。耕作放棄地を利用して一年生草本の生育場として維持していくためには,代かきという撹乱を継続することが必要であることが示唆された。今後,湿地環境として維持するための水管理も必要となる。これらを湿生植物の生育場として維持していくためには,代かきや水管理を行う担い手に対して,人的・財政的負担が必要である。

  • 有田 博之, 橋本 禅, 内川 義行
    2020 年 88 巻 2 号 p. 125-128,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    災害復旧業務は原則的に市町村が行うが,近年は農業農村整備分野の技術職員不在の地区も多く,災害復旧事業,特に大規模災害時の対応力は乏しい。東日本大震災では,ほとんどの市町村は対応策を構想できず,「県に示してほしい」という状態であった。そこで,市町村の復旧業務に県の積極的介入が行われ,多様な支援が行われた。支援内容は①復旧業務の代行,②県職員の派遣,③災害復旧方針の設計・対応,④情報収集・意思決定の支援,⑤県独自の復旧方策の実施,など多岐である。支援の必要度は今後高まるものと予測されるため,新潟県中越大震災および東日本大震災における被災県の調査経験をもとに,今後の都道府県の役割について提案する。

  • 松岡 宗太郎, 川口 清美, 小野 尚二, 武下 和幸
    2020 年 88 巻 2 号 p. 129-134,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    平成30年9月に発生した北海道胆振東部地震は,道内では観測史上初の震度7を記録し,厚真町,安平町,むかわ町を中心に甚大な被害を発生させた。当該地域は,稲作を中心とした道内でも主要な農業地域であり,国営土地改良事業などで造成された農業水利施設が多数存在しているが,震源に近い厚真ダムや瑞穂ダム,パイプライン構造の厚幌導水路,その他頭首工や開水路などの主要な施設が大規模な震動と,これに伴う多数の斜面崩壊により被害を受けた。本報では,発災直後から北海道開発局および寒地土木研究所が行ってきた農業水利施設の被災状況調査の結果について報告する。

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