農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
84 巻 , 6 号
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  • 溝口 勝
    2016 年 84 巻 6 号 p. 469-473,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    福島第一原子力発電所事故の3カ月後から飯舘村に現地入りし,NPO法人と協働で農民自身でできる農地除染法の開発やイネの栽培試験を重ね,農業再生の道を模索してきた。その結果,試験田で収穫されたコメは2014年に福島県の全袋全量検査に合格するまでになった。しかしながら,福島の農作物には放射性セシウムが含まれるのではないかという一部市民の不安を払拭できないために,地元の方々の必死の努力にもかかわらず「風評被害」という形で地元農業の再生を阻んでいる。本報では,これまで関係組織と協働で実施してきた農地除染法の開発と農業再生の試みをレビューし,筆者の考える農村復興シナリオについて述べる。

  • 中島 正裕, 塩田 光
    2016 年 84 巻 6 号 p. 475-478,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    震災発生から1年が経過した2012年5月より,筆者らはNPOによる復興支援活動を支援するという形態で,仮設住宅団地のコミュニティ形成に関する活動に携わるようになった。本報では,筆者らが4年間携わってきた経験とその成果に基づきながら,震災復興への研究者(農村計画)としての関わり方と現場で直面した課題を述べた。これまでの社会調査の経験を生かして,まずは仮設住宅団地の生活実態調査と,自治会設立支援を現場で参与観察しその手順の可視化を行った。次いで自治会設立支援の手法化を試みた。これらの過程において,成果還元のあり方,継続調査の困難さ,現場での連携体制の重要性など,に関して被災地特有の知見を得ることができた。

  • 加藤 千尋, 坂井 勝, 西脇 淳子, 徳本 家康, 廣住 豊一, 渡辺 晋生, 塩澤 仁行, 溝口 勝
    2016 年 84 巻 6 号 p. 479-482,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    土壌物理研究部会の若手会員を中心としたメンバーは,平成26年より国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のプロジェクト「復興農学による官民学連携協働ネットワークの構築と展開」を実施している。本報では,プロジェクトの一環で行った,放射線教育と関連付けた小学生対象の出前授業実施例を紹介する。出前授業においては,ペットボトルを用いた実験や線量計の演示実験,またイラストを用いた説明によって,児童は興味を持ちながらセシウムに対する土の働きについて理解を深めたようであった。今後,対象地域におけるネットワークの構築により,各教育現場のニーズに合わせた情報提供ができるよう努めていく必要がある。

  • 有田 博之, 友正 達美, 橋本 禅
    2016 年 84 巻 6 号 p. 483-486,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    大規模災害の復旧現場では,担当者たちは不測の事態や制度面での不適合などに遭遇したとき現実的な手段・手続きなどの工夫によって知恵(=現場知)を創出・選択して迅速・適切に対応している。現場知は復旧業務の中で消費されて忘れられているが,これらの記録・継承は今後の大規模災害時の事態の予測や対応のヒントとなり,混乱を抑え,適切な業務遂行に役立つと考えられる。筆者らは現場担当者を対象として東日本大震災の被災地区で現場知の調査を進めているが,予想以上に困難が多い。今後の災害復旧においても現場知の収集・蓄積が農業農村整備分野の経験値を高める上で求められるため,本報では筆者らの取組みと効果的な収集を進める上での課題について述べる。

  • 千葉 克己, 冠 秀昭, 加藤 幸, 郷古 雅春
    2016 年 84 巻 6 号 p. 487-490,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    東日本大震災の大津波によって除塩が必要となった農地では,農地の除塩マニュアルに基づく縦浸透法が行われている。暗渠排水が整備された排水性の高い農地では確実な除塩ができるが,暗渠排水が整備されていない農地やその機能が低下した農地では塩分が残留することがある。また,沿岸部では,地盤沈下の影響により塩分濃度の高い地下水による塩害対策が必要となっている。本報では,残留した塩分によって営農再開後に塩害が発生した農地において新たに本暗渠を整備して行った再除塩の効果を解説した。また,沿岸部の復旧農地における水稲作時と大豆作時の地下水の塩分濃度と水位の動態の特徴を述べ,今後の営農に必要な塩害対策を考察した。

  • 遠藤 明
    2016 年 84 巻 6 号 p. 491-494,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    青森県沿岸部の一部の施設園芸生産者は灌漑用水を井戸水に依存している。この井戸水は不圧地下水であるため,当地域では5m程度の浅井戸を掘削することにより灌漑用水を確保している。しかし,巨大な震災津波による冠水被害を受けた青森県沿岸部低平地帯の浅層地下水は高い電気伝導率で推移し,その傾向は現在も継続している。既往の研究成果においても東日本大震災後における地下水の塩水化の長期化についての指摘がなされている。著者は2011年から現在に至るまで,青森県八戸市,おいらせ町および三沢市内の沿岸部に位置する井戸の水質モニタリングを通じ,施設園芸生産者に対して水質に関する助言を行うことを目的に継続的に調査しており,現在までにある程度の結果が蓄積されたためここに報告する。

  • 塩沢 昌
    2016 年 84 巻 6 号 p. 495-499,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    セシウム(Cs)は陽イオンで水に溶けやすいが,土粒子とくに粘土粒子に強く固定されやすいことが著しい特徴である。このため,土壌中ではほとんど移動せずに地表面付近にとどまり,土壌から河川や地下水に流出することはなく,農地に大量に存在しても普通は作物にはほとんど吸収されない。しかし,土壌被覆から水系へのCs流出はないといってよいが,市街地のアスファルトなどからの2011年の沈着直後の水系への流出は大きかった。また,ため池やダム湖には湖面に沈着したCsが底質中に存在し,河川敷や流路に沈着して土砂に固定されたCsが豪雨時に河川を移動していると考えられる。ここでは,著者や公的機関が現場測定したデータをもとに,Csの環境中の移動現象の実態を示す。

  • 竹中 一行, 畠中 哲也, 山口 俊夫
    2016 年 84 巻 6 号 p. 501-504,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    東北地方太平洋沖地震に関する被災資料の収集・分析は,今後想定される大規模地震の想定被害,耐震計画および耐震設計に大いに役立つことから,被災した2,619カ所の農業施設(道路,堤防を除く)の情報収集(被災施設,位置,被災状況写真など)と蓄積を行った。このうち,多くが津波被害として整理されている用排水機場について地震動での被害状況の分析結果について報告するものである。その結果は,地震後の点検など今後の施設管理においては,これまでの震度階からSI値に基づく検討・管理が有効であること,後背湿地に建つ機場ではSI値がおおむね50以上を記録した場合,ポンプの稼働に障害が生じるような重大なダメージを被る可能性が高いことなどの分析結果が得られた。

  • 藤川 智紀, 中村 貴彦, 岡澤 宏, 竹内 康, 細野 衛, 宮林 茂幸
    2016 年 84 巻 6 号 p. 505-508,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報では,「東京農業大学・東日本支援プロジェクト」およびその他のプロジェクトにおいて取り組まれた研究活動のうち,農業農村工学に関連する研究について報告するものである。震災直後の現地調査からは津波による堆積物が粒径の大小によって2種類に分けられ,それぞれの粒子の密度や有機物含有量が異なることを明らかにした。続いて,除塩を想定して,海水のみが浸入した水田において畝立ての効果を検討したところ,20cm程度の畝立てで耐塩性のある畑作物の栽培が可能になることが示された。また,車両搭載型レーザー計測装置(MMS)を用いて,被災地の3次元デジタル地図を取得し現場での利用を検討したところ,得られた地図データによって復興計画の合理化が進む可能性が示された。

  • 鈴木 尚登, 中里 裕臣, 田中 良和, 竹村 武士
    2016 年 84 巻 6 号 p. 509-514,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    東日本大震災に対し,災害対策基本法の指定公共機関である農研機構農村工学研究所は,発災直後に「災害対策支援本部」を立ち上げ,災害派遣によって二次災害防止と迅速復旧に向けた技術支援を開始した。本報では,大震災から5年間,農業農村工学分野の研究機関として農村工学研究所が被災地に寄り添った技術支援活動を通じて担ってきた役割や震災復興と防災・減災に関する具体的取組みを紹介するとともに,支援内容の多様化と段階的な拡大を前提とした技術支援の基本的な考え方,防災基本計画の基本理念に基づいた個々の活動の位置づけなどを概観する。

  • 愛宕 徳行, 北谷 康典, 林田 洋一, 峰野 佳厚, 渡部 大輔
    2016 年 84 巻 6 号 p. 517-522,a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農林水産省では,平成24年3月に閣議決定された土地改良長期計画に基づき,国が造成し所管している農業用ダムを対象に,レベル2地震動に対する耐震性能照査を行っている。その過程の中で,要素分割サイズ,解析領域や境界条件の設定など,数値解析における技術的な課題について,全国統一的な観点での取扱いが必要となる事項が明らかとなってきた。このため,農業用ダム全国総合調整評価委員会(委員長:長谷川高士京都大学名誉教授)を設置して検討を行っている。本報では,同委員会での検討をもとに,個々のダムを広範囲に検証するに当たっての実用問題として,解析結果を統一的に評価するため,これら解析条件の違いが解析結果に及ぼす影響について検証を行った結果を報告する。

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