農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
88 巻, 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 松岡 宗太郎, 平山 周作
    2020 年 88 巻 5 号 p. 361-364,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    わが国では,目指すべき未来社会の姿として「Society 5.0」と名付けた超スマート社会を提唱している。農村におけるSociety 5.0の実現に向けては,スマート農業の社会実装に必要な環境整備の一環として,総務省が進める光ファイバの整備と連携しながら,無線局等を整備することでスマート農業に適した情報ネットワーク環境が構築できるよう検討することとしている。本報では,農村での利用が期待される無線(LPWA,BWA,5G)や,農村で先進的にICTを活用している自治体(岩見沢市,塩尻市,伊那市),令和2年度から行う新規調査事業「土地改良施設情報基盤整備推進調査」の検討概要等を紹介する。

  • 関 勝寿
    2020 年 88 巻 5 号 p. 365-368,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    Society 5.0(超スマート社会)は,技術の進歩によってどういう社会を実現しようとしているのであろうか。その疑問に答えるため,ケヴィン・ケリーが提唱している,1980年代にインターネットが始まってから現在まで,そしてこれからも続いていく「12の技術の力」を紹介する。これから社会が大きく変わるための核となる技術はすでに芽生えている。農業農村においてすでに普及している技術,これから普及する技術,研究開発が進められている技術を紹介し,将来的に実現すると期待される技術を考察して,12の技術の力によって引き起こされる農業農村の今後の変化を大きな流れとして展望する。

  • 北村 浩二
    2020 年 88 巻 5 号 p. 369-372,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    Society 5.0の実現に向け,2019年6月に策定された「農業新技術の現場実装推進プログラム」において,ICT自動給水栓などの自動水管理システムを,2019年までに市販化し2025年までに普及するとしている。このような新技術の農家への普及を加速化させるため,農業農村工学分野の技術者や研究者には,これまでのような主にエンジニアとしてのハード面の技術開発だけではなく,経済学としての経済効果分析,社会心理学の中に位置づけられる「イノベーションの普及学」,経営学の中のマーケティングの視点からのアプローチも求められる。

  • 友正 達美, 中矢 哲郎, 藤山 宗, 武馬 夏希
    2020 年 88 巻 5 号 p. 373-376,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    本報では,水管理へのICT導入による水利秩序への影響要素を抽出し,実際の灌漑地区を対象としたICT導入の構想立案において,水利秩序への影響を検討した一事例について紹介する。農業水利システムへのICT導入は,水利用の合理化,省力化を実現する有効な手段となりうるが,その技術的な性格から現状における配水の問題点をも“見える化”し,利水者間の紛争を顕在化させるリスクを持つことに留意する必要がある。

  • 坂田 賢, 友正 達美
    2020 年 88 巻 5 号 p. 377-380,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    通信可能な圃場給水機(以下,「ICT型給水機」という)の利用が社会実装の段階を迎えている。将来的に多数のICT型給水機を用いて広域の減水深推定に利用されることを想定し,15機のICT型給水機を用いて減水深推定を実施した。結果,圃場内の水位と給水栓開度のみが得られるICT型給水機では,降雨データを付加して推定した減水深と比較して過大に推定された。また,減水深推定の計算期間が短いほど,値の分散が大きくなる傾向を示した。このため,推定には閾値を設けることが望ましいが合理的な決定は難しい。したがって,広く減水深推定値を利用するためには誤差や分析期間の閾値などに関する統一的な基準を設定することが望まれる。

  • 成岡 道男
    2020 年 88 巻 5 号 p. 381-384,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    本報では,スマート捕獲の「人がスマートフォンなどを見ながら檻を操作する」工程の中の「捕獲する野生動物の選別」機能を開発する目的で,AIによる画像認識を活用した野生動物の判別について検討した。その結果,5種類の野生動物の判別の正解率が94%であった。判別の精度は,学習するデータ量に影響されることが推測された。AIによる画像の判別の判断根拠をGrad-CAMで可視化したところ,野生動物の判別に際して,顔が重要な判断根拠であること,顔以外の判断根拠になる部分が動物ごとに異なる場合があることなどが判明した。

  • 齋藤 晴美, 橋本 晃
    2020 年 88 巻 5 号 p. 387-392,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    東南アジア諸国の中で,めざましい経済発展を遂げているタイで,近年農村の労働力不足や農業の機械化に対応するために,2015年に新農地整備法が制定され,圃場整備事業を推進するための組織が整備され,圃場整備事業が実施されている。東南アジアの今後の技術協力に資することを目的として,本誌第88巻第3号でタイにおける新農地整備法の制定経緯と概要について報告した。さらに本報では,同法に基づく圃場整備事業の実施手続きを整理し,同法の特徴を日本の土地改良法と比較しつつ考察する。

  • 李 相潤, 小嶋 創, 竹村 武士, 吉迫 宏
    2020 年 88 巻 5 号 p. 393-396,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    本報では,簡便な目視調査から小規模ため池の堤体の草刈り状況を推定した。推定は夏季・冬季2回の調査で,ともに堤体を確認できたため池を対象に,それらの堤頂部・法面部の各植生状態データをもとにして行った。その結果,草刈り無しと推定されたため池割合は既往研究における管理無しため池の割合とほぼ同様の値を示した。また,冬季調査のみによる推定結果は,2回の調査による結果とほぼ一致し,夏季調査の追加による推定の効果は限定的で,推定に当たっては冬季調査がより重要であることが示唆された。また,非調査者を対象とした簡易アンケートは,ここに用いた推定手続きが調査者の主観を一定程度排除できたことを示唆した。

  • 伊藤 健吾, 沓名 稔
    2020 年 88 巻 5 号 p. 397-400,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    全国の多くのため池において堤体補強工事が検討ないし施工されているが,施工時は長期間にわたる落水が行われるため,ため池の水生生物や周辺環境に及ぼす影響が大きいと考えられる。しかし,これまで十分な対応がなされていなかった。そこで,ため池の長期落水時の生物保護を目的に,ため池の敷地内に生物の退避水域を設けた。その結果,水生生物の種数については維持することができた。一方,生物のモニタリング方法,施工方法およびため池の周辺整備に関して,配慮すべきいくつかの課題が明らかになった。

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